2024年12月22日( 日 )

日韓関係の悪化につながりかねない「LINEヤフー問題」(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

問題の根底は

イメージ    「LINEヤフー」の51万件にもおよぶ個人情報流出をめぐり、日本の総務省は同社に7月1日までに主要株主のネイバーとの資本関係など、経営体制の抜本的な見直しを求めた。日本政府は一連のセキュリティ問題の根底にネイバーとの資本関係があると思っているからだ。

 それに対し、韓国側は数十年間育ててきたLINEヤフーの経営権を奪われることに反発。日本政府は行政指導に持ち株の売却という表現はないとしているものの、実際、持ち株の買収圧力をソフトバンクにかけているようだ。

 このような中、ネイバーは今月10日に株式の売却について言及しているし、ソフトバンクの宮川社長も決算説明会で、ネイバーとの株式買収の交渉について触れた。

 韓国政府は日本政府にこの問題に対し、遺憾の意を表明するなど、経済問題が日韓の外交的問題に飛び火する恐れも出てきた。

 LINEは日本で成功した唯一の韓国企業である。韓国を代表するサムスンも現代も、日本市場でそれほど成功をしていないなか、日本人の8割近くが使っているLINEの成功は、韓国人の誇りでもあるからだ。

 また、LINEは日本だけでなく、タイ5,500万人、台湾2,200万人、インドネシア600万人など、東南アジアでも多くの人が使用しており、LINEの経営権を手放すことになると、東南アジア市場にまで影響が出るため、複雑な問題である。一方、日本政府からすれば、全国民に愛されているLINEに外国企業が深く関わっていることは不安だろう。

合併の背景と同問題への日韓の温度差

 韓国ではネイバーがソフトバンクと合併したことに、そもそも問題があったと指摘する専門家もいる。それに持ち株の比率を51:49にせず、50:50にしたのも、甘かったという認識だ。

 ネイバーは当時、ラインの経営に失敗し、ソフトバンクと手を組まざるを得ない状況であった。ラインは決済事業に7,500億ウォンという多額の投資をし、事業の柱に育てようとしたが、結果的には2018年に約500億円の赤字を計上した。

 ネイバーはソフトバンクの決済事業であるペイペイに負けないため、莫大なマーケティング費用をかけた。その結果、財務状況は悪化し、株価は30%も下がった。

 両社はこれ以上「仁義なき競争」を繰り返すより、統合した方が賢明だという判断のもとで経営統合が進められた。しかし、両社が統合し、グローバル企業に対抗していくという目標を掲げたものの、それもうまく行かず、現在のような状況となったわけだ。

 ライン問題をめぐって、日韓の温度差はたしかにある。個人情報流出という問題は、日本ではよく起こっているが、韓国企業ではなく、アメリカ企業でも、日本政府はこのような要求をしてきたのだろうかという疑問が韓国人のなかにはある。

 また、個人情報流出に対する温度差もある。日本人は個人情報の流出に敏感である反面、韓国人は自分が許可した範囲であれば、個人情報の流出は、それほど大きな問題ではないと思っている。

(つづく)

(後)

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