日韓関係の悪化につながりかねない「LINEヤフー問題」(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏ネイバーの海外事業に深刻な打撃
LINEは日本だけでなく、台湾、タイでもナンバーワンのメッセンジャーアプリであることと、ラインユーザをベースにしたさまざまな事業が展開されており、ネイバーがラインの経営権を失うと、複数の事業に大きな影響が出かねない。とくにネイバー海外事業のなかでもウェブトゥーン事業に、どのような影響をおよぼすのかに注目が集まっている。
昨年、同社のウェブトゥーンの世界における売上高は、4,440億ウォンを記録している。とくに、ライン漫画のウェブトゥーンである「入学傭兵」は4億回のページビューを記録した。ネイバーは今年6月に「ネイバーウェブトゥーン」をナスダック市場に上場する計画であった。上場企業の企業価値は30億ドルから40億ドルが予測されている。しかし、ネイバーがラインから手を引くことになったら、米国市場への上場にも何らかの影響が出ると見られている。
ソフトバンク孫会長のビッグピクチャーは
ソフトバンクはビジョンファンドを組成し、投資事業に力を入れていたが、2020年以降はAI事業に舵を切っている。ソフトバンクがネイバーと事業統合したのも、ネイバーのAI事業に可能性を見出したからだ。
ソフトバンクの孫会長は機会があるごとに、AI時代の到来を叫んでいるが、ネイバーとの統合は、そのなかの布石の1つであった。孫会長は先日、10兆円を投資し、AI半導体の開発計画を発表している。それだけでなく、データセンターや電力インフラ事業にも投資するという。
しかし、半導体チップやデータセンターなどのハードウェアがいくら揃っても、肝心のデータがないと、AI事業構想は絵空事になる。孫会長がそれを知らないわけがない。AI時代の競争力は、いかに良質のデータを確保できるかである。良質のデータを学習すればするほど、AIは良い結果を導き出すことができる。そのような状況下で、ラインは非英語圏で、最も多くのデータを確保している企業である。また、日本だけでなく、東南アジアのデータも多量に確保している。そうしたラインを手に入れて、データの主権を確保するとともに、これからAI分野を育成しようとしているのではないだろうか。
日本政府もソフトバンクもそれをよくわかっており、これこそがライン問題の真相と言えるだろう。ソフトバンクはネイバーの生成型AIである「ハイパークローバーX」のかわりにオープンAIと使用契約を締結している。そのようなビッグピクチャーのなかで、今回の問題は発生している。
今後の流れは
今年7月~8月になると、ソフトバンクに対する日本政府の圧力がさらに強くなり、ネイバーは持ち株を売却せざるを得なくなるだろうというのが一般的な見方である。韓国の証券街では、ネイバーは持ち株を売却することになるが、10%程度を売りに出すことになるだろうと観測している。ネイバーの事業が複雑に絡んでおり、持ち株を全部売って関係を整理することは簡単ではないという見解だ。
一方、資本関係の見直しをせず、問題の原因であるセキュリティ問題を完璧に解決し、市場の信頼を獲得するという方法もあるというが、ソフトバンクのビッグピクチャーを考えると、この可能性は低いと思われる。資本関係の議論がどのように決着するかは誰にも分からない。
(了)
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