2024年07月16日( 火 )

【BIS論壇No.447】音楽脳

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は6月1日の記事を紹介する。

 さる5月30日、日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)33周年記念第186回情報研究会を第2衆議院議員会館会議室で開催した。BIS会員を中心に、会場およびZOOMで約80人が視聴した。「音楽の脳に与える影響」のメインスピーカーは、世界的に有名な脳科学者のノルウエー・ベルゲン大学・生物心理学、音楽心理学教授のステファン・ケルシュ教授。ケルシユ教授は独ベルリン大学、米ハーバード大学などで最先端の脳科学、音楽療法を研究し、世界をリードしている認知神経科学の権威者である。

    同教授を紹介いただいたのは、ドイツを拠点にバイオリンの演奏活動を続け、音楽を科学的に研究し、『音楽は脳を育む』(斎藤アンジェ玉藻・塚田 稔共著、Oroko Planning2021年)などの著書もある斎藤アンジェ玉藻さんとその母親で音楽マネジヤー・ピアニストの斎藤恵美子さんである。BISを代表し、心からお礼を申し上げたい。

  近年、とくに日本は「世界最高齢社会」に突入。65歳以上のアルツハイマー患者は650万人に達する見込みで、さらに増加しつつある。このような環境下での今回の脳科学研究会は極めて有益で、視聴者から多大な反響があった。

 ケルシュ博士は著書『最高の体調をつくる音楽の活用法』(YAMAHA, 2022)も出版されている。「音楽は心身を大きく変える」「音楽は従来医療を補完する可能性がある」「音楽は私たちの健康や若さを保ち、言語能力の獲得を後押しする。総卒中や慢性疾患、認知症を患う人の助けにもなるし、植物状態の患者に奇跡のような効果をもたらすこともある。音やメロディが心身へ与える効果はますます多くの注目を集め、音楽はさまざまなかたちで病気の予防と治療に活用されるようになった」と強調しておられる。さらに「音楽は人間が持つ特殊な技能の結果だ」「バッハは音楽は心に活気をよみがえらせるといった」と力説。

     斎藤アンジェ玉藻さんは、バッハの絶品と称され仏教とも解釈上つながりがあるといわれる「シャコンヌ」を演奏。最後に参加者全員で、「浜辺の歌」を合唱し、盛会裡に終了した。
  
  近年では、日本舞踊も健康上見直されつつある。また禅も欧米で脚光を浴びつつある。
パネル討論では、柳田祥三・大阪大学名誉教授がご専門の太陽光と遠赤外線のミトコンドリアと健康への影響、野口哲英・日本医療研究所理事長が禅の健康への影響と日本医学会の問題点などを討議。声楽家の松木貴子マリアさんは発声と健康について、かねての研究成果を発表された。日本で脳科学者として脳覚醉下手術で有名な篠浦伸禎・都立駒込病院前脳神経外科部長は、「ミュージシャンは右脳が発達しており、音楽は脳のバランスを保ち、幸福感を高め、脳の自然治癒力を高める」と発言された。皆さん、健康で長生きするため、さらに音楽を楽しみましょう。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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