4年半ぶりの日中韓首脳会談の成果は?
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、6月7日付の記事を紹介する。去る5月27日、韓国ソウルで開催された日中韓首脳会談には世界が注目しました。4年半ぶりで、9回目となる会議でしたが、その最大の成果は「開催に至った」という1点に尽きそうです。
いうまでもなく、国際情勢が流動化し、ウクライナやイスラエルでの終わりの見えない戦争状態がアジアにも飛び火する可能性が取りざたされている状況下において、アジアの主要国が対立の予防や危機回避に向けてどのように協力できるのか、その道筋を見出す機会になったとすれば、大成功に他なりません。
とくに、台湾海峡や朝鮮半島での軍事衝突のリスクが無視できない今日、3カ国の首脳が直に対面で意思疎通を図ることは国際社会の今後を左右する可能性を秘めたものとして大きな期待を呼んだわけでした。
アメリカの同盟国である日本と韓国は、4年半前と違い、相互の理解と妥協路線が進展しており、そうした日韓関係の改善を受け、これから中国とどのような理解と協力への方向を打ち出せるのか、今後の国際情勢を見極めるうえで欠かせないはず。
とはいえ、台湾有事や朝鮮半島での危機的状況を回避するうえで、3カ国が具体的に共同歩調を宣言するには至りませんでした。
今回の首脳会談の再開を機に、未来志向の観点から、今後も定期的な3者協議が継続され、関係閣僚会議も開催されることに合意が得られたことは朗報でしょう。
今回の会議では経済・貿易分野での協力に最大の力点が置かれていました。なぜなら、3カ国はいずれも経済・貿易面で相互依存関係にあるわけですが、日本と韓国の対中貿易黒字が突出しており、3カ国の貿易均衡が成立していないからです。
また、気候変動や健康、防災、人的交流などは合意が得られやすい分野でしたので、共同宣言にも大きく取り上げられていました。
しかし、地域の平和と安定にどこまで貢献できるかは曖昧なままです。
今回の3カ国首脳会議にぶつけるように、北朝鮮は衛星の打ち上げを実施し、会談終了後もミサイル発射を繰り返しています。
北朝鮮によるミサイル発射や核開発の動き、ロシアによる日本海での軍事演習、東シナ海や南シナ海での資源開発をめぐる対立など、アジア地域では不安定要素が山積しているにもかかわらず、こうした安全保障の分野では3カ国の思惑はすれ違ったままです。
実は、その背景にはロッキードやノースロップなど、アメリカを代表する5大軍需産業の思惑が隠されており、アジア方面での危機を煽り、アメリカ製の軍事物資の販路拡大に熱心であるためです。
台湾海峡危機を盛んに宣伝し、「中国による台湾侵攻は時間の問題だ。2027年までに戦争になる」と一方的な主張を繰り返しているのが、アメリカ政府に他なりません。
こうした「戦争ビジネス」に走るアメリカの意図を冷静に分析し、地域の平和と安定を実現するためには、今後も3者協議の枠組みを拡大、進化させ、防衛や経済担当大臣の定期協議やアジアの国々を加えた拡大首脳協議を推進すべきでしょう。
なお、日本と韓国の対中関係の改善の在り方に微妙な違いも感じられました。
日中韓3カ国はエネルギー、環境、人口問題など共通の課題に直面しているのは事実です。そのため、環境に配慮したかたちで、限られた資源の有効活用を図ることは世界のモデルになり得るはず。
しかし、韓国は北朝鮮の脅威に対処するためには中国の関与が欠かせないとの見方に囚われています。そのため、日本とは対中関係においては異なるスタンスを見せ、対中関係の強化に日本以上に踏み込んでいました。
とはいえ、日中間の首相会談では李首相と岸田首相の和やかな雰囲気が伝わり、双方の立場や意見の違いはありましたが、できる分野から関係改善へ舵を切ったという点は高く評価されます。
いずれにしても、この4年半の間に、日中韓の関係は相当変化が見られました。当然ですが、2国間関係においての変化が3カ国関係にも微妙な影響をおよぼしています。
であるならば、そうした違いを理解しながら、継続的な対話と協議の場を重ねることが何よりも肝要ということになるはず。
要は、今回の3カ国首脳会議では「継続が力」となることへの期待をもたらしたことが最大の成果といえそうです。
著者:浜田和幸
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