2024年12月22日( 日 )

相次ぐデータセンター建設で電力需要が急増(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

21世紀は電力の時代に

データセンター イメージ    私たちは普段の生活で「常に電気を使っている」と言っても過言ではない。パソコンをはじめ、冷蔵庫や洗濯機、掃除機など、電気なしでは日常生活が成り立たないようになっている。さらに生成AI、ロボットの活用など、デジタル化が本格的に進展することにより、今まで以上に電力需要が急増することが見込まれ、世界各国は電力の安定供給対策に追われている。

 とくに、生成AIを実現するためには膨大なデータを運用するデータセンターが必要なため、データセンターの建設が世界各地で進められている。生成AIはパソコンでデータを検索する際に消費される電力に比べて、1回の作業ごとの電力使用量が10倍以上になるという。韓国の場合、昨年8月に電力の最大需要が100GWを初めて上回った。15年後の2039年には、それより50%増加の150GWとなり、51年にはその約2倍にまで電力需要が増えることが予想されている。

 韓国の国民1人あたりの電力消費量は、世界3位である。韓国は半導体や鉄鋼など、製造業が発達しており、他国に比べて電力需要が旺盛である。サムスン電子はソウルから南に42km離れた龍仁(ヨンイン)に360兆ウォンを投資して半導体クラスターを建設中であるが、その施設だけでも10GWの電力需要が発生するという。これは現在の首都圏の電力需要の4分1に当たる電力量である。それ以外にも、暗号資産のマイニングなど、電力需要は今後大きく伸びていく。

データセンターの急増

 ビッグ・テックは生成AIに莫大な投資をし、AIブームを牽引している。そうした流れを受け、生成AIの導入が加速され、データセンター需要のさらなる拡大が見込まれている。生成AIの開発では、膨大なデータをAIに学習させなければならず、その学習の場となるサーバー設備の確保が不可欠だからだ。そこでビッグ・テックは、データセンターの建設に積極的に乗り出している。

 昨年末時点で、全世界で運用されているデータセンター数は約1万1,000カ所に上り、韓国には147カ所のデータセンターがある。なお、韓国のデータセンター数は、29年には637カ所に増えることが予想されており、637カ所のデータセンターが必要としている電力量は、何と41GWに上るようだ。

 米国のデータセンターは、米国全体の電力消費量の4%を使っているが、AIデータセンターが増えてくると、30年に米国全体消費電力の4分1になる可能性もあると専門家は指摘する。

 データセンターの建設期間と比べ、発電所の建設期間は、どうしても長くなるので、電力不足に陥る可能性が高く、米国政府はその対応に追われている。とくにAI向けのデータセンターの半導体チップは、電力消費の多い最新チップが使われている。

 エヌビディアはそのチップの9割くらいのシェアを占めているが、チップの消費電力が約1,000ワットの製品もある。AI関連企業では、このような高性能チップ100万個を24時間稼働させているので、いかに電力消費が多くなるかは想像できる。メタCEOのマーク・ザッカーバーグは今年の年末までに、そのようなチップを35万個確保したいと言っている。

 このような状況下で、韓国の電力設備企業は業績を大きく伸ばしている。業界筋によると、HD現代エレクトリクス、暁星重工業、LSエレクトリックなど、韓国の電力設備3社の今年第一四半期の受注残高は、合計13兆6,000億ウォンで、前年同期(10兆1,000億ウォン) 比で、34.7%の成長を記録した。米国の老朽化した電力網の買い替え需要、中東のインフラ投資、再生可能エネルギーの投資拡大が要因となっている。

(つづく)

(後)

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