現在の日本が置かれた国際的な立ち位置とは(前)
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日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS、中川十郎会長)より赤阪清隆元国連事務次長・元国連大使の世界情勢と日本の立ち位置に関する論考を提供していただいたので共有する。
先日、日本女性の地位向上を後援するグループの集まりで、現在の日本が置かれた国際的な立ち位置、グローバル・リーダーの条件、日本の女性が抱える課題などについて、英語でお話しさせていただく機会がありました(資料添付)。
ご存じの通り、日本の人口が急速に縮小しつあります。6月5日付のニッポンドットコムの関連記事(「〈縮むニッポン〉出生率、過去最低の1.20、東京は0.99」)をご覧ください。なんと、東京都の出生率は、1.0を割り込みました。人口を維持するには、概ね2.07が必要とされていますから、東京都の出生率が0.99というのは衝撃的な数字です。
人口だけではありません。日本の経済力は、現在のところ米、中、独に続いて世界第4位ですが、もうすぐインドに追い抜かれ、2050年までにはインドネシアにも追い抜かれて世界第6位に、さらに2075年までには第12位にまでダウンする見通しです(スライド6)。1人あたりのGDPでは、2023年時点で、世界第34位で、すでに台湾、韓国にも追い抜かれました。シンガポールや米国の約3分の1でしかありません。なんと、3分の1です。
日本の世界競争力ランキングは第35位(2023年)、グローバル人材競争力指標では第26位、グッド・カウントリー指標では第34位、世界幸福ランキングでは第47位です。他方、評判、文化、影響力といったグローバル・ソフトパワー指標(2024年)では、第4位、ないしは第6位の高いランキングに位置しています(スライド8~11)。インバウンド観光客が激増しているのは、このソフトパワーによるところが大きいですね。
こういうランキングの数字をいくら集めてもあまり意味がないのかもしれません。ランキングの取りようによっては、見方が大いに異なるかもしれません。それでも、日本が依然として世界の大国であり、国連常任理事国になるにふさわしい国であると胸を張り続けるのは、そろそろ片腹痛いと言われても仕方がない状況になりつつあります。目を覚まして、このような現実のビッグピクチャーを直視すると、日本は世界のなかで中堅国(ミドルパワー)程度の位置を占める方向に急速に進んでいる(沈んでいる)と観念すべきという気がします。いかがでしょうか、悲観的過ぎるでしょうか?
さて、世界で活躍できるようなリーダーの条件ですが、コロナ禍が貴重な教訓を残してくれました。あの危機に当たって、すばらしいリーダーシップを発揮したのは、困難に立ち向かう強い意志力、総合的戦略をもって迅速に組織を動かす力、そしてコミュニケーション能力に長けた人物です(スライド12)。メルケル独首相ほか、世界の女性リーダーが大活躍しました。不安定で、先行きの見えない、いわゆる「VUCAワールド」(VUCAとは、不安定性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語頭文字)に力量を発揮できるアジア人は、なんといってもインド人で、世界の大企業や国際機関のトップにインド人が多いのもうなずけます。このような不安定な世界に対応能力を欠くとみられているのが、残念ながら我ら日本人です。
中国やインドの若者の大半が、自国には目標としたい優れたリーダーがいると答えているのに対し、日本の若者の多くは、そのような人物は自国にはいないと答えています(スライド15)。以前、このような質問には、緒方貞子さんを挙げる日本の若者が多かったのですが、緒方さんが国連難民高等弁務官を去られてからすでに4半世紀近くになり、周りにロールモデルになるような世界的リーダーが日本には本当に少なくなりましたね。
逆に、ダメな上司というのは大勢いる気がします。自己中心的で、しかもそのことを自覚していない人物です。部下に期待するところを明確に伝えず、えこひいきをし、陰口をたたき、信頼が置けず、人の意見も聞かず、自分勝手な人というのが、典型的なダメ上司と見てよいのでしょう。自分自身を振り返って、冷や汗とともに、反省、自戒することしきりです(スライド17)。
(つづく)
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