現在の日本が置かれた国際的な立ち位置とは(後)
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日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS、中川十郎会長)より赤阪清隆元国連事務次長・元国連大使の世界情勢と日本の立ち位置に関する論考を提供していただいたので共有する。
日本の企業の多くは、グローバル事業で活躍する人材に、文化や価値観などが異なる外国社会でも柔軟な対応ができること、既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ち続けること、英語など外国語でのコミュニケーション能力を有することなどを求めています。新卒採用に当たって重視している要素としては、コミュニケーション能力、主体性、協調性、チャレンジ精神などが挙がっています(スライド18、19)。
さて、それでは、女性のリーダーシップですが、ハーバード・ビジネス・レビューが、多くの面で女性の方が男性よりも能力が断然高いとの調査結果を示しています。たとえば、イニシアチブをとること、部下を鼓舞すること、人間関係を築くこと、コミュニケーション能力、チームワーク、決断力、問題解決能力、多様性の尊重などの点です。男性が女性よりも優れているのは、唯一、技術的あるいは専門的な知識だけと指摘しています。リスクをとることにおいても、女性の方が若干男性よりも優れているというから驚きです(スライド21)。
このように能力の優れた女性陣ですが、日本国内では長い間冷遇され続けてきました。「世界経済フォーラム」が最近6月12日に公表した2024年のジェンダーギャップ指標によれば、日本の男女間の平等指数は、なんと146カ国中第118位です。女性閣僚が若干増えたので、昨年の第125位から少しだけランクを上げました。しかし、労働参加率や賃金格差などを反映して経済分野は第120位、政治分野は第113位、教育分野は第72位にとどまりました。下図の通り、日本の場合、政治参画、経済参画のランクは世界平均に比べて非常に低く評価されています。確かに女性の国会議員や閣僚の比率は、世界各国に比べて相当低い数字が続いています(スライド23、24)。最新のデータは、ニッポンドットコムの記事(「ジェンダーギャップ指数、日本は146カ国118位」)をご覧ください。
日本の民間企業でも、女性が部長、課長、係長といった幹部に就く割合は近年増加しつつあります。しかし、それでも上位の役職になるほど割合は低く、民間企業の部長級の比率はたかだか8.3%にしかすぎません。女性の役員比率についても、10%強まで伸びてきましたが、日本を除いたG7諸国の平均値(約39%)に比べればまだまだ低い水準です。
また、最近とみに話題になっているのが、夫婦別姓の問題です。6月10日、経団連は、夫婦別姓を認めない現行制度は、女性の活躍が広がるなかで企業のビジネス上のリスクになり得るとして、政府に対して、「選択的夫婦別姓」を認める法改正を早急に求める提言を行いました。現行の夫婦同姓制度のもとでは、95%の女性が夫の姓を選んでおり、事実上女性に不利な制度になっています。社会的な同調圧力があるのですね。このため、結婚をためらう若い女性も多いと言われます。経団連の提言は、この問題に重要な一石を投じたものといえます。
最後に、日本の女性が置かれた現況をまとめますと、
(1)女性の民間企業における地位は近年改善を見せているものの、他の先進諸国に比べるとまだまだ低い。
(2)ということは、日本では、女性の地位向上の伸びしろが、他の先進国に比して大きく残っている。
(3)とくに伸びしろの大きい分野は、政治参画と経済参画であり、これらの分野で、特別な政策(たとえば、クオータ制度の導入など)の検討が急がれる。このようなまとめになるでしょうか?日本の国際的な地位がだんだんと縮小していくなかで、これからの日本を元気にしてくれるのは、大きな野心を秘めた日本女性の活躍でしかないという気がします。公務員の世界では、すでに女性の活躍が目立ってきており、女性の大使、総領事の数も増えつつあります。民間企業でも今後ますます女性の地位が向上するでしょう。最後のスライドが示すように、女性の役員比率が高い企業の方が、女性役員がいない企業よりも高収益を上げているとの調査結果もあります。日本の女性陣に、まだまだご苦労はあるでしょうが、前途に希望をもって引き続き頑張っていただきたいと、エールを送ります。
(了)
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