日本経済、バブル崩壊からの復活と中国への教訓(1)(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は6月17日発刊の第356号『「日衰・中隆」から「日隆・中衰」への必然性の分析(1)~日本経済、バブル崩壊からの復活と中国への教訓~』を紹介する。日本経済は戦後の高度成長、バブル崩壊と長期経済停滞を経て、再度長期回復軌道に入りつつある。他方中国は改革開放路線が定まった1990年代以降の30年間空前の大成長を遂げたが、やはり住宅バブル崩壊に直面し、経済困難に陥っている。2024年5月25日に、清華大学経済産業と環境ガバナンス研究センター(CIDEG)の年次学術会議において、「日本経済の復活と中国への教訓」をテーマに基調報告を行ったが、以下は報告をベースに詳細を説明したものである。
以下3つの論点について、展開したい。第一は日本経済が長期回復軌道に入りつつあるということおよび停滞を長期化させた2要因の指摘についてである。日本が経験したバブル崩壊と経済長期停滞の背景には外圧(米国の圧力と円高)と政策の誤りがあり、それが停滞を長引かせた。第二に日本の過去と現在の中国には3つの類似性がある。第三に日本と中国には4つの相違点があることを指摘したい。日中の比較分析をすると両国の第二次世界大戦後の発展と挫折の背景には、共通の事情があることが分かる。そうした理解は今後の日中の政策選択と将来展望を考える際には必須である。
(1)大成長時代入りがほぼたしかになった
日本が長期経済停滞を脱し、大回復時代に入っていることはほぼ明らかである。それは資本主義において経済動向の最も早い先行指標である株価の力強い上昇から確認できる。
日本企業、稼ぐ力の大復活
この回復を主導しているのは、企業収益である。不良債権の償却などの特別損失を差し引いた本当の企業収益は、企業による税務申告所得で計測できるが、企業収益は1990年度の43兆円をピークに急低下し、2000年には2兆円とピーク比20分の1に落ち込んだが、2022年には50兆円、2023年には57.5兆円(武者リサーチによる推定)と急伸している。企業における価値創造が経済を前に進めるエンジンであるが、そのエンジンが堅牢であることが、日本経済の展望を明るくしている。図表1によって5つの指標、を概観すると、株価とともにいち早く企業利益が力強く回復、拡大していること、労働賃金(=雇用者所得)や地価の回復が遅れていることがわかる。好調な企業収益の成果がトリクルダウンすることで、賃金や消費、設備投資の拡大を引き起こしていくだろう。
企業の主体的努力、ビジネスモデルの大転換とコーポレートガバナンス改善
日本企業利益復活を支えているのは、1.日本企業の努力と政府の改革政策など主体的条件、および2.米中対立により日本での供給力強化を望む米国がもたらした超円安、半導体ブームという外部環境の改善、の2つである。日本の企業利益は米国による日本たたきと超円高、日本企業のバブルに胡坐をかいた放漫経営により、地獄に突き落とされたが、そこから顕著に立ち直った。円高に対応し海外に工場をシフトさせた。また強い円を活用して海外企業を買収しグローバルプレーヤーに脱皮した。さらに国内でのコスト削減を、リストラ・機械化、そして人件費の抑制などにより徹底させた。また集中と選択などビジネスモデルを徹底的に改変し再構築した。さらにアベノミクスの一環としてのコーポレートガバナンスの改革が2015年ごろから進展し、企業経営の羅針盤として資本主義的メルクマールである資本コストを凌駕する資本リターンの追求が定着し、財務効率が大きく改善された。
(つづく)
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