2024年07月16日( 火 )

アビスパ、首位町田と真っ向勝負で完封 町田0-0福岡

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イメージ    サッカーJ1リーグアビスパ福岡は22日、アウェイの町田GIONスタジアムでFC町田ゼルビアと第19節の試合を行った。

 クラブにとって初のJ1昇格を果たした町田は、ファウルを恐れない激しい当たりとスピードのあるダイレクトプレーを最大限に活かしてここまで首位を走る。天皇杯ではアマチュアの筑波大学に敗れたものの、リーグ戦では横浜F・マリノスを3-1で下すなど、まだまだ「町田旋風」には終わりが見えない。

 対するアビスパは、前節の九州ダービーでサガン鳥栖に快勝。天皇杯を含めると公式戦4連勝と、上位進出に向けていよいよエンジンがかかってきた格好だ。

 アビスパと町田は、球際の厳しさ、攻守の切り替えの速さなど、似たプレースタイルをもっていると評されることも多い。アビスパの長谷部茂利監督、町田の黒田剛監督はともに事前の準備をしっかり整えたうえで相手の良さを消し、最終的には試合の趨勢を自分たちが握るスタイルが特徴だ。フィールドの選手たちはもちろんのこと、ベンチに座る監督の采配が勝敗を分ける一戦と言えるだろう。
 
 試合は序盤から激しく動く。2分、町田MF下田北斗が直接フリーキック。左足から放たれた精度の高いボールは低い弾道を描いてアビスパゴールを襲うが、ここはGK村上昌謙が見事にセーブ。序盤は町田の攻勢でゲームが進んでいく。アビスパがチャンスを迎えたのは38分。コーナーキックを獲得し、キッカーはMF前寛之。前の精度の高いボールにDF小田逸稀がヘディングで飛び込むが、町田GK谷晃生に阻まれてしまう。前半は町田がシュート7本に対し、アビスパはシュート3本。町田優勢で前半が終了する。

 後半アビスパは、最終ラインを形成するDFドウグラス・グローリ、DF宮大樹がペナルティエリア脇まで進出し、攻撃参加するシーンが増える。57分には右サイドに侵入したDFグローリが上げたクロスにFWウェリントンが頭で合わせるが、これはゴールを捉えられない。61分、長谷部監督はMF重見柾斗、DF亀川諒史を投入。MF重見はクレバーかつ大胆なプレーで町田守備陣を翻弄。DF亀川は鋭いクロスをエリア内に送り、チャンスを演出する。さらに76分にはFWシャハブ・ザヘディ、MF北島祐二がピッチに送り込まれる。

 その直後、FWザヘディにこの試合最大のチャンスが訪れる。MF前寛之が自陣から大きなサイドチェンジを左サイドに送る。このボールを受けたMF岩崎悠人が縦に突進し、切り返してエリア内にグラウンダーのクロスを送るが、これは町田DFがブロック。こぼれ球を競り勝ったMF前が再度MF岩崎にパスを送ると、岩崎はエリア内から逆サイドにふわりしたクロスを供給。ここに完全フリーの状態で飛び込んできたのがFWザヘディ。ザヘディはドンピシャリのタイミングでヘディングシュートを放つが、ボールは枠をとらえられない。

 試合はお互い無得点のままタイムアップ。アビスパは首位町田に対して互角以上に戦い、勝ち点1を分け合う結果となった。

 アビスパにとっては勝ちに等しい引き分け。これは対戦相手が首位の町田だからというわけではない。試合後の記者会見で長谷部監督が「町田さんはいくつもの強みをもったチームですが、町田さんの強みをいくつか消すことができたと思っています」と語ったように、作戦面ではアビスパがやりたいことをやりきれた試合だったと言えるだろう。攻撃の柱であるFW紺野和也を警告累積による出場停止で欠いたこともあり、ゴールこそ奪えなかったものの、DF宮、DFグローリが相手ペナルティエリア近くまで進出し、深い位置からクロスボールを供給するなど、積極的に攻撃参加していくかたちは新たな得点パターンになる可能性を秘めている。

 派手なプレーが連発されたり、大量得点が入ったりするような試合ではなかったものの、質実剛健な両チームが見せた鍔迫り合いは、玄人好みの名勝負だったと言えるだろう。

 この試合でJ1のリーグ戦は全試合の半分を消化。アビスパは7勝4敗8引き分けの8位で折り返し点を迎えた。名古屋グランパスや浦和レッズ、横浜F・マリノスなど、クラブとしての実績や予算規模で上回る名門を抑えてのここまでの結果は、十分評価できると言えるだろう。昨シーズンの7位を超える6位を目標とするアビスパが後半戦どんな戦いを見せるか。天皇杯とともに、さらなる躍進を期待したい。

【深水央】

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