2024年11月21日( 木 )

日本経済、バブル崩壊からの復活と中国への教訓(1)(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は6月17日発刊の第356号『「日衰・中隆」から「日隆・中衰」への必然性の分析(1)~日本経済、バブル崩壊からの復活と中国への教訓~』を紹介する。

「新しい資本主義」が日本にも米国流株の式資本主義を定着させる

図表3: 米国信用創造は債務信用から株式信用へとシフトした

 予想されるこれからの日本の株高は、米国流の株式資本主義の時代に、日本も向かっていることを示唆する。米国では株価上昇が経済拡大の最大の推進力という、株式資本主義の時代に入っている。図表3は米国の経済の3大推進力、民間信用、公的信用、株式信用(=株式時価総額)の推移であるが、リーマン・ショック(GFC)以降の過去15年間、米国では民間・公的ともに債務の増加は完全にストップした。つまり銀行部門において新規信用創造はまったく起こらなかったのである。それを補完したのが株価の著しい上昇、株価対GDP比率の上昇である。株価/GDP比率(いわゆるバフェット指数)は2009年の69%から2023年末には205%となっている。いわば信用=需要創造の手段が、株式にシフトしたのである。

 他方米国企業は収益のほぼ8割を配当と自社株買いによって株主に還元するという新たなマネーフローが定着した。かつて家計の貯蓄余剰が預金増となって銀行に吸収され、それが銀行融資となってマネーを循環させるというパターンであったものが、まったく変わったのである。この企業による余剰の株式還元?株価上昇と家計における資産所得(値上がり益+配当収入)の増加が家計消費を支える、というものが、今登場した米国の株式資本主義である。日本でもコーポレートガバナンス改革と資本効率が低い企業に対する政府・東証の是正要求が、自社株買いや配当増額を推し進めている。今4割にとどまっている日本の株主還元比率が5~6割へと高まっているだろう。このようにして株価上昇で経済を支えるという株式資本主義の時代に日本も入っていくだろう。

デフレと長期停滞を長引かせた政策の誤り

 ここで日本の停滞を長期化させたあと1つの理由、政策の誤りに触れておく必要がある。その第一は、問題解決の先送りである。バブル崩壊の1990年から1997年まで、政府も企業、金融機関も問題隠蔽、責任転嫁、財政テコ入れによる弥縫策で痛みをともなう本質的解決を図らず、問題を先送りした。1997年の金融機関破綻の危機が発生してようやく痛みをともなう金融構造改革に着手、改革の対価として銀行に公的資本が注入され、不良債権が政府・日銀に肩代わりされた。なお投入された公的資金はSBI新生銀行、地銀2行を除き完済されている。

 2003年以降日本経済は回復に転じたが、ここで第二の誤りが生じた。時期尚早の金融・財政引き締めへの転換である。それに運悪くリーマン・ショックが重なり、日本経済はWボトムに陥った。リーマン・ショックはすべて米国など海外での金融危機であった。しかしその震源地から最も遠かった日本が最も大きな経済的打撃を受け、株価も最も長く低迷した。尚早の政策引き締めが株価と不動産価格を本源的価値以上に押し下げ、付加的なコストを企業に与え、回復に転じていた日本経済と株価をWボトムに陥れた。日本の土地と株式を合計した国富時価総額は、1989年末3,142兆円でピークをつけ2022年末の1,723兆円でいったん底入れし回復に転じたが、リーマン・ショック後さらに下落し2011年末1,512兆円になった(なお2023年末では2,410兆円と顕著に回復している)。この二番底は正しい政策を取っていれば回避できたはずである。それは中国にとって、他山の石になると思われる。

図表4: 世界中で唯一低迷続けた日本住宅価格(2000=100) /図表5: 日本の土地+株式 時価推移、リーマンショック後の2番底が痛みを倍加させた

(つづく)

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