2024年12月22日( 日 )

傲慢経営者(1)トヨタ・豊田会長 創業家「幕藩体制」崩壊の足音が聞こえる(前)

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 今年の株主総会で最大の注目は、トヨタ自動車の株主総会であった。トヨタグループの総帥・豊田章男会長の発言は相変わらず「上から目線」のものだったが、総会は、豊田家による経営支配の終焉を予感させた。豊田創業家の「幕藩体制」崩壊が始まったといっても過言ではないだろう。トヨタの「幕藩体制」を今回のテーマに取り上げる。

豊田会長の再任賛成率が急落

トヨタ自動車 イメージ    トヨタ自動車が6月18日に開いた定時株主総会で、豊田章男会長の取締役再任への株主の賛成比率は71.93%で、前年から12.64ポイント低下した。

 トヨタが19日に関東財務局に提出した臨時報告書で明らかになった。豊田氏への賛成比率は取締役10人のなかで最も低く、佐藤恒治社長に対する賛成率は95.44%だった。各メディアは「トヨタによると、同社会長への賛成率としても開示を始めた2010年以降で最も低かった」と報じた。豊田氏の退陣を予感したからだろう。

 トヨタグループでは日野自動車やダイハツ工業、豊田自動織機で相次いで認証不正が明らかになったほか、今月にはトヨタ本体でも不正が発覚した。

 豊田会長の取締役選任をめぐっては、議決権行使助言会社大手2社、グラスルイスとインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、グループ不正の「最終的な責任がある」として、機関投資家向けに反対を推奨した。

 公的年金資金で米国最大のカルフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)や2位の同州教職員退職年金基金(カルスターズ)といった一部大手機関投資家が豊田氏などの選任について反対する意向を示していた。

豊田会長は「院政をやる」と宣言

「モータースポーツに時間を使いすぎているのではないか心配している。モータースポーツが会長の道楽になっているのでは」

 株主総会で株主からこういう厳しい声が出た。豊田章男氏は経営者の傍ら、レーシングドライバーとして活動を続ける。社内にレーシングチームを立ち上げ、「モリゾウ」名でレースに出場している。モータースポーツの熱意で経営に当たれと株主が苦言を呈した。経済メディア東洋経済オンライン(6月24日付)はこう報じた。

 〈名指しされた豊田章男会長は「どう答えたらいいのか」と苦笑いを浮かべた。そして、「トヨタ及びトヨタグループの責任者は私だと思っている」と強調。「私の存在や行動は院政とか道楽とか言われてしまう。しかし、院政は後三条天皇が摂関政治からの脱却を図るために始めたことと書かれている。院政は老害のようなイメージがあるが本来なら新しい時代を切り拓くイメージの言葉だ」と反論した〉

 経営を実行するのは社長以下の執行役員。自分は執行メンバーの相談に乗るだけ。「それを院政というのであれば、院政をやる」と開き直っている。天下のトヨタの役員も、まるで豊田家の「げぼく(使用人)」扱い。傲慢な物言いだ。

東証の要請を受け、トヨタは持ち合い株の解消を表明

 今年の株主総会は、来年から本格化する外資に完全に門戸開放する総会の前哨戦であった。東京証券取引所が、取引先と株式を持ち合う日本独自の企業慣行をやめるよう要請したからだ。

 日本企業は相互に株式を持ち合い安定株主であることで市場の圧力を和らげてきた。投資家、とくに海外の機関投資家からは企業統治の不全を招くとして批判が強かった。

 東証が外国マネーを呼び込むために、やっと重い腰を上げた。「究極の買収防衛策」として悪評の、株式の相互持合いの撤廃を求めた。株式市場は、乗っ取り勝手の主戦場になる。

 早速、動きがあった。2023年11月1日、トヨタは中間決算発表の席上、グループ内での株式持ち合いの解消を進める方針を打ち出した。グループ企業が持ち合っている自動車部品メーカー、デンソー、アイシン、豊田自動織機の株式を売却する。取引先によるトヨタ株の売却要請に備えて、25年4月30日を期限に上限1兆円の自社株買い枠を設定している。

(つづく)

【森村和男】

(後)

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