2024年07月03日( 水 )

生まれ変わるリバーフロント・清流公園(2)

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東平尾公園・大和リースG、明治公園・東京建物G

 なお福岡市では、清流公園と同時に市内2公園のPark-PFIを活用した公園整備・管理運営事業の公募を行っている。これら2公園の優先交渉権者についてもそれぞれ発表されており、それぞれの提案に基づいてリニューアルが実施される予定だ。

東平尾公園(大谷広場)
東平尾公園(大谷広場)

 まず、「東平尾公園(大谷広場)」(博多区東平尾公園2丁目)では、大和リース(株) 福岡支社を代表とし、(株)エスティ環境設計研究所、木下緑化建設(株)、(株)才田組、(株)コトブキ、タリーズコーヒージャパン(株)で構成されるグループが優先交渉権者となった。

 1976年に開園した東平尾公園は、約86.3haという広大な敷地のなかに、陸上競技場やベスト電器スタジアム(東平尾公園博多の森球技場)、屋内外20面を有するテニス場などの大規模なスポーツ施設を有している総合公園である。これまでに、90年開催の第45回国民体育大会(とびうめ国体)や95年のユニバーシアード福岡大会、ラグビーワールドカップ2019や日本陸上競技選手権大会など、国内外の大規模なスポーツ大会の舞台として利用されてきた。これらの充実したスポーツ施設に加えて、子どもの遊び場として整備されたのが、今回リニューアルが実施される「大谷広場」だ。

 同広場には草スキー場やローラー滑り台、アスレチック遊具など多数の遊具が配備されて子どもに人気のスポットで、休日ともなると多くの家族連れで賑わいを見せている。だが、現在の遊具はユニバーシアード福岡大会が開催された95年に整備を行ったもので、施設の老朽化が進行して早急な更新が必要な状況にある。そこで施設の更新に併せて、広場内の休憩施設の不足やトイレ等のバリアフリー化などの課題に対応すべく、今回Park-PFIを活用した広場の再整備に取り組んでいく方針となっている。

 大和リースグループが行った提案では、基本方針を「Play with~みんなが遊ぶ、みんなで遊ぶ公園~」と提示し、誰もがお互いを理解し、安心して笑顔で、自分らしく遊ぶことのできる「Play with」な公園をつくっていくとしている。また、都心に近い森のなかにある自然地形を生かし、「Fukuoka Green NEXT」を踏まえて、遊びや憩いなどのなかで森と触れ合うことができる仕掛けをふんだんに盛り込んでいく。

 さらに、すべての人に優しい公園を実現するために、エリアごとに難易度や特色の異なった遊び場を設け、その遊びの「わ」が広がっていくイメージで、大谷広場全体に誰もが一緒に(with)楽しめる「Play with」の考え方に基づくインクルーシブな整備・運営を実施。公園周辺の自治会と協働して新たなコミュニティを形成しながら、地域とともに育つ公園を目指していくとしている。

 なお、導入する民間施設は、自然豊かな東平尾公園と調和した、誰もが利用しやすく、自分の居場所としてくつろぐことができる快適な憩いの場となるカフェとしており、店舗前面の公園側に開放されたオープンスペースを整備することで、公園の賑わい創出にも寄与していく方針。リニューアル整備は24年6月から着工しており、25年春からの順次供用開始を予定している。

明治公園
明治公園

 もう1つの「明治公園」(博多区博多駅前3丁目)では、東京建物(株)を代表とし、(株)梓設計 九州支社、(株)ランドスケープむら、(株)旭工務店、木下緑化建設(株)で構成されるグループが優先交渉権者となった。

 明治公園は、1964年12月に都市計画決定され、65年に開園した都市公園。博多駅博多口側に位置し、あまり目立つことなく利用されていた感のある同公園だが、08年からは博多駅周辺地区における浸水対策工事や地下送電管路推進工事、博多駅前広場地下車路建設工事による占用が継続していた。11年からは同公園の再整備に着手。15年に一部区域の供用が開始されたものの、その後も地下鉄七隈線延伸工事における占用が継続されたことで、全面整備が完了していない状況にある。現在はオフィス街の一角に位置する緑のスペースとして、主に近隣に勤める人々の憩いの場としての利用がされているものの、未整備区域が残されているため、その利用は限定的なものとなっている。

 同公園が立地する博多駅周辺エリアにおいては、19年5月より市の再開発誘導プロジェクト「博多コネクティッド」が進行。民間ビルの建替えに合わせた賑わい創出の取り組みが進められるとともに、博多駅前歩行者デッキの延伸(21年4月)や、筑紫口駅前広場のリニューアル(22年8月)、地下鉄七隈線の延伸区間の開業およびはかた駅前通り再整備(23年3月)など、都市機能のアップデートが進んでいる。一方で、22年9月には現役世代を中心とした運動不足を解消するため、自然と楽しく体を動かしたくなる仕組みや仕掛けがあるまちづくりに取り組む「Fitness Cityプロジェクト」が始動しており、博多駅周辺をパイロットエリアとして指定し、明治公園において立ち寄りたくなる公園づくりを進めることとしている。

明治公園完成イメージ
明治公園完成イメージ

 東京建物グループが行った提案では、「THE GATEWAY PARK “HAKATA MEIJI”」として、博多のおもてなしの心・都市のランドマーク・新たなライフスタイルへの“Gateway”となり、次代に受け継ぐべき未来志向の公園をコンセプトとしている。リニューアルの基本方針としては、①「インクルーシブ」・「脱炭素」・「ウェル・ビーイング」の実現、②「新たなPark-PFI公園像」を力強く具現化、③「パークマネジメントの次世代型ロールモデル」として国内外に発信―の3つを提示。九州の陸の玄関口である博多駅前に“新たな顔”を創出するとして、樹木と建築が一体となった新たなランドマークを誕生させていくとしている。

 このランドマークとなることが目されている建物施設は、公園敷地目いっぱいに広がる立体的・複合的な魅力あふれる空間デザインがなされており、世界的な建築家である藤本壮介氏によるもの。建物1階部分には飲食系店舗およびトイレ、喫煙所が、2階部分には飲食系店舗やテラス状通路が配置され、3・4階部分にはジムやランニングステーション、サウナで構成される代表企業直営の健康増進施設が入居。そして施設内に張りめぐらされた「立体回廊」と、屋上部分に配置された「5つの広場」で構成され、上りたくなる屋外階段や、居心地の良いテラス、行ってみたくなる屋上広場など、空間デザイン上の工夫によって新たな体験価値“New Park-Life”を創出していくとしている。

 なお、同エリアで行われている「博多コネクティッド」や「Fitness City」などの都市政策と連動・意識した施設整備を行っていく方針で、積極的な緑化によるグリーンオアシスを創出していく。今後、24年度の工事着工および25年春以降の順次供用開始を予定している。

(つづく)

【坂田憲治】

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