2024年12月22日( 日 )

【BIS論壇No.451】SCO(上海協力機構)首脳会議開催

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は7月11日の記事を紹介する。

カザフスタン 首都 イメージ    7月3~4日、中央アジア・カザフスタンの首都アスタナでSCO(上海協力機構)の首脳会議が開催された。

 SCOの前身は1996年、中国、ロシアが主導し、中央アジアのタジキスタン、キルギス、カザフスタンの5カ国で結成、2001年にウズベキスタンが加盟、6カ国となった。会議が上海で開催されたところより、SCO(Shanghai Cooperation Organization=上海協力機構)と命名された。

 その後、地域の大国インド、パキスタン、イランが参加、9カ国となった。本年の首脳会議でベラルーシの加盟が認められたことにより、当初の5カ国から10カ国に増加。中央アジアにおける経済、軍事面での協力が強化されるとみられる。

 この会議にはSCO加盟に関心を示しているトルコのエルドアン大統領も出席した。いずれ、中央アジアの大国トルコもSCOに加盟するものとみられる。そうなるとSCOは中央アジアにおける強力な国際経済協力機構になるものと思われる。

 SCOと並び、近年、力を増しつつあるBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカが主体)の動向とともに、SCOの動向については、注目を浴びつつあるグローバル・サウスの動きとともに、日本としても注目する必要があるだろう。

 SCOをけん引する中国は中央アジアを中心にヨーロッパへの物流、貿易拡大を目指す「一帯一路」を打ち出した2013年以来、中央アジアを中心に鉄道、高速道路、港湾建設など物流面の充実に力を注いでいる。

 ユーラシア大陸を横断し、中国と欧州を結ぶ鉄道網の整備に中国は注力中だ。中国はウズベキスタンなどと新たな鉄道敷設で合意。地政学リスクが高まるロシアや紅海を迂回する代替ルートを建設すべく、中国や欧州は経由国となる中央アジアやコーカサスで大型投資に動き出しつつある。

 中国、ウズベキスタン、キルギスの3か国は6月に鉄道建設に関する政府間協定に調印。10月にも建設に着工するという。これは中国の広域経済圏構想「一帯一路」共同建設の象徴的な事業になると期待されている。全長500km、投資総額50億ドル(約8,000億円)。中央アジア、コーカサスを経由し、中国と欧州をつなぐ「中央回廊」鉄道網の整備が動き出している。
 EUは中央アジアのコーカサス諸国での鉄道や港湾整備に向け、100億ユーロ(約1兆7,300億円)を投資する。韓国は同国の高速鉄道「KTX」の車両42両をウズベキスタンに供給する協定に署名した。(『日本経済新聞』7月8日付)。

 一方、タイの南部経済回廊計画、ランドブリッジ計画にも中国が動き出しているという。中国の「一帯一路」を米国とともに「債務の罠論」で批判している日本はこのままではユーラシア大陸物流網建設から疎外され、将来、悔いを千載に残すのではないかと憂慮される次第だ。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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