2024年08月06日( 火 )

韓国企業にとっての脅威「RE100」(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

RE100実現が難しい韓国の現実

風力発電 イメージ    全世界が温室ガスの排出削減に向けて再生可能エネルギーの導入を急速に増やしているなか、韓国の再生可能エネルギーの電源比率はかなり低い。

 2022年における韓国の発電のなかで再生可能エネルギー発電が占める割合は9%であった。ブラジルは91%、スウェーデンは86%、デンマークは81%、カナダは76%であった。米国も22%、中国と日本もそれぞれ31%と22%なので、韓国の割合がいかに低いかがわかる。

 21年の韓国全体の再生可能エネルギーの発電量は、43.7TWh(テラワットアワー)で、これはサムスン電子、SKハイニックス、現代製鉄など主要5社の全体消費電力量(47.7TWh)にも満たない発電量である。

 このうち3社はすでに「RE100」に参加を宣言しているが、3社だけでも、年間34.4TWhの再生可能エネルギーが必要となる。こうした現実からもわかるように、再生可能エネルギーを導入したくても、再生可能エネルギーそのものが不足している。

 しかし、韓国政府の政策は、時代を逆行している。再生可能エネルギーの比率を30年までにエネルギー全体の30.2%にすると設定していたが、今回の第10次電力需給基本計画で、韓国政府はその比率を21.6%に下げることを発表している。また、再生可能エネルギー支援予算も、42%削減している。その結果、再生可能エネルギーの購入コストが高くなり、エネルギーコストで企業の価格競争力も失われるのではないかと懸念されている。

 2つ目に、韓国の再生可能エネルギーの価格は、他の国に比べて高いことが挙げられる。太陽光や海上風力の価格は、米国の2倍以上である。たとえば、太陽光の場合、設備は発電費用の6割くらいを占めており、設備価格によって価格が安くなったり高くなったりするが、韓国の太陽光の設備費用は、他の国より10%ほど高いようだ。主要資材、設置、施工費用は、他国より18%くらい安い反面、金融費用、許認可費用、マージンなどの間接費用が68%も高いという。

 最後に送電線の問題が挙げられる。発電をしても、送電することができないので、発電をしても電気を捨てるか、発電所が稼働中止に追い込まれるケースが多いのである。

 韓国では原発の発電費用が最も安いため、よほどのことがない限り、原発が優先され、原発を中止することはあまりない。しかし、太陽光や風力となると、電源がもともと不安定で、コストも高いため、最初に出力制御されることとなる。

 韓国の東海岸に建設された火力発電所は、最近発電量を減らしたり、稼働中止を余儀なくされたりしている。原発や既存の発電量で送電線は満杯になり、新設の火力発電所の電気は、送電できないからだ。

 再生可能エネルギーの場合、発電所の許認可をする際、このようなリスクを許諾したところだけに条件付で許可を出している。太陽光などの発電事業の許可が下りても、発電した電気が送電できないので、電気を売ることも、電気を使うこともできないのが、韓国の電力事情である。

 はたしてこのような状況で、再生可能エネルギーの割合を増やすことができるだろうかと専門家は懸念している。このような問題を解決するため、工場を海外に移転する企業も現れている。電気の安いマレーシアやスペインなどに工場を移転して、電力問題の解決を図っているのだ。

 環境問題の対応を間違えると、韓国の製造業の競争力を失いかねないと警鐘が鳴らされているものの、政府はまだ危機意識に欠けているようだ。気候問題が環境問題にとどまらず、輸出の参入障壁になる時代が到来しつつある。電力に対する国家的な戦略が求められていると言えるだろう。

(了)

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