アメリカの財政赤字は史上最悪:国家破綻もあり得る話
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、8月9日付の記事を紹介する。アメリカでは大統領選挙の真っ最中ですが、民主党のハリス候補も共和党のトランプ候補もお互いの非難合戦に忙しく、国家財政の破綻という深刻な状況には「知らんふり」を決め込んでいるようです。
米中関係が対立の様相を深めるなか、中国の政府も投資家も、このところアメリカの国債を急ピッチで手放し始めています。
米国債に見切りを付け、金(ゴールド)やエネルギー資源に焦点を当てていることは間違いありません。日本政府はいまだにアメリカのドルや米国債を保有し、最大の同盟国への忠誠心をアピールしていますが、危うい限りです。
アメリカの直面する史上最悪の危機から目を反らすことは、日本沈没をもたらしかねません。
何しろ、アメリカの下院予算員会の直近の報告によれば、アメリカの債務は35兆ドルを突破しました。ということは、負債の利払い金額は1日24億ドルに達することになります。
アメリカ人1人あたりが背負わされる借金の額は2032年には4万ドルを超える見通しです。多くの富裕層がアメリカから海外に脱出するのももっともかも知れません。
昨年の連邦政府の利払いは6,580億ドルでした。前年の2022年と比べ、実に38%も増えているわけです。
誰が考えても、これほど深刻な財政危機に陥っているアメリカのドルや債権を買い支えることはリスク以外の何物でもありません。
これまでアメリカは、強力な政治力や軍事力を背景に、国際的な機軸通貨であるドルを外交上の武器として活用してきました。
ところが、アメリカの議会予算局の見通しでは、本年のアメリカの国防予算は8,700億ドルを突破することは確実とのこと。問題は負債の利払い額は8,920億ドルに達するという現実です。
国防予算を上回る金額を借金の利息に当てているというのがアメリカの現実に他なりません。これでは海外での戦争や経済支援など継続できないでしょう。
ウクライナへの軍事支援や経済支援も絵に描いた餅になることは火を見るよりも明らかです。
要は、裏付けのないドルや米国債を保有することに、BRICSをはじめ多くの国々が懐疑的になってきています。そのため、価値が保証されている金に対する重要性が急速に高まるようになったのもうなずけるでしょう。
そのため、日本でもそうですが、国際的に金の市場価格が高騰を続けています。実は、金の購入を加速させているのは、中国に限りません。
非ヨーロッパ諸国の間では、2022年に過去最大となる1,136tの金がシンガポールやインドなどの中央銀行によって、買い増しされているからです。また、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国だけでも、この10年間でほぼ3,000tもの金を購入しています。と同時に、BRICS諸国はそれまで保有していたアメリカの赤字国債を手放し、10年前の10.4%から今日では4.1%にまで60%以上も減らしているのです。
アメリカの財政赤字や国家としての先行きに対する不安感が背景にあることは間違いありません。
このところ中国とロシアの連携プレーが注目を集めるようになってきました。欧米諸国からの経済制裁を受け、ロシアは2022年以降、中国への金の輸出を急拡大しています。
加えて、ポーランドやチェコといった国々の間でも、金の確保に向けて動きが加速しているようです。
世界的な戦争の拡大や経済対立が加速するなかで、金に対する信頼度や依存度は増す一方でしょう。
裏付けのない赤字国債から金という普遍的な価値を有する新たな債権が市場に出回り始めています。
日本も、こうした世界的な「脱ドル化の動き」や「新たな金本位主義的な経済政策」に注目し、早急な対応を進めるべきです。
しかし、残念ながら、日本はアメリカからの圧力に抗えず、裏付けのないドルや赤字国債の購入を余儀なくされています。
日本政府のいうことを鵜呑みにすることなく、真に価値のある資源や不動産に投資する道を模索すべきと思われます。
著者:浜田和幸
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