円キャリートレード解消で世界の金融市場に激震(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏キャリートレードとは
「キャリートレード」とは、日本やスイスのように相対的に金利の低い国の資金を借り入れ、その資金を高収益が期待できるメキシコなどの新興国の債権などに投資する投資方法を指す。
「キャリートレード」の資金が向かう先は、外国債券や外国株式、原油などの商品先物、海外不動産、ヘッジファンドなど、借り入れた投資家の運用手法によって多種多様である。「キャリートレード」の主な通貨といえば円である。なぜかというと、米国やヨーロッパがコロナ禍以降、インフレを抑えるため大幅な利上げに踏み切った反面、日本はコロナ禍以降も金融緩和を続けてマイナス金利政策を維持したため、資金調達のコストが低いからだ。
このような状況下、ヘッジファンドなどの投機筋は、金利がゼロに近い円で資金調達をし、それを世界各国の株式と債券、通貨、原材料、ゴールド、暗号資産など高収益の資産に投資し、収益を上げてきた。資金調達した円をドルに換え、米国のハイテク株などに投資することで、金利差による収益と、株価上昇による収益が加わったのである。
しかし、日本銀行が今年3月、17年ぶりに短期金利を引き上げ、マイナス金利を解除した。ドイツ銀行の試算によると、1990年から昨年までの円キャリートレードの推定資金規模は約20兆ドルに上り、日銀がもし利上げを進めた場合、予期せぬリスクが発生する可能性があると警告していた。
「キャリートレード」とは、たとえばドルと円のペアならば、2つの通貨の金利差がメインの収益要因となるので、金利差が開いている時は収益性が良いが、金利差が縮むとキャリートレードの解消要因となってくる。米ドルは5%以上の高い金利をキープしている一方で、日本の円は金利がゼロに近かったので、円キャリートレードはうまみがあった。ところが米国の景気減速懸念で今後、利下げが予定されている反面、日本の円は利上げ方向になっている。それによって、円高と同時に、キャリートレードの巻き戻しがもたらされている。
金融緩和と円安
全世界が金利を上げているなか、日本だけは金融緩和とマイナス金利を維持してきた。「失われた30年」という表現からわかるように、金利を上げられない程、日本の景気はずっと低迷していた。
長きにわたって金融緩和と円安を続けている間に、投機筋を中心に「円キャリートレード」という取り引きが頻繁に行われていた。日本から円を借り、それを売ってドルを購入するので、キャリートレードは円安を加速させた。ところが、最近、日本銀行は利上げに踏み切り、金利がマイナス金利から0.5%になった。しかし、韓国や米国に比べると、日本の金利はまだ低い水準である。
調達コストが低い円はキャリートレードの対象となり、その取引金額は膨張し続けてきた。ところが、膨らんでいた円キャリートレードの膨大な資金が市場環境の変化によって、大きな変動要因となり、金融市場を揺さぶっている。今回の株価暴落によってかなりの円キャリートレードポジションは解消したと判断される一方、一部では円キャリートレードの解消はこれからも続くという主張もある。
(つづく)
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