福岡市、西鉄との共同事業に不透明な意思決定プロセス(後)
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他市では、総合交通戦略でBRTを議論して決定
福岡市を共同事業者として西鉄が採択された環境省の補助事業では、同時に、神奈川県藤沢市(共同事業者=神奈川中央交通)、近江鉄道(同=滋賀県草津市)が採択されている。いずれも、BRTを導入するものだ。
藤沢市、草津市のBRTの方針決定過程と比べると、福岡市の違いが際立つ。
藤沢市も草津市も、1~2年近く時間をかけて、新交通システムの導入の是非、BRT導入を検討するか否かを議論し、交通マスタープランや交通アクションプラン、総合交通戦略などにBRT導入の検討を明記したうえで、2015年3月の環境省補助事業に応募した。抽象的な「幹線軸」の形成から一足飛びに、BRT導入を方針決定した福岡市の意思決定と比べれば、その透明性は明らかだ。草津市は、都市交通マスタープランと草津市総合交通戦略を策定する協議会で、バスの定時性確保とBRT導入の関係、BRT導入によるまちづくりがいいか否か、BRTとLRTとの比較、バス専用レーンの確保、メリットデメリットなどが議論され、ブラッシュアップされ、明確にBRT導入の検討を盛り込んだ交通戦略が策定されている。
協議会は、12年9月~14年2月まで7回開催され、13年4月には部長会議で中間報告もされ、14年4月に都市交通マスタープラン、総合交通戦略を策定。環境省の補助事業への応募にあたっては、事前に連節バスの走行実験(14年11月)まで経ている。BRTは「マイカー流入を避ける」ため?
BRTと連節バス導入を決めた高島宗一郎市長は2015年4月16日の記者会見で、次のように述べている。
「これから天神ビッグバンによって、たくさんの方が都心の周辺部に集まってきます。そのときに大事になってくるのは、いかにマイカーの流入を避けるか、交通を流していくことが大事になってきます。このたび、BRTという新しい交通システムの導入と、周辺部における駐車場の整備を組み合わせることによって、都心部に床面積が増え、滞留人口が増えていっても、人や物が都心部に集中しても、交通が流れていくようなシステムを西鉄さんと一緒にチャレンジを始めたい」。
この発言も唐突だ。BRTと連節バス導入の方針を決定した公文書(3月17日起案、同30日決裁)には、天神ビッグバンによる交通増加に対するマイカー流入抑制については、ひと言も触れられていない。もしBRTと連節バスの目的がマイカー流入抑制なら、現在の交通量調査と交通量の予測が行われたうえで、BRTや連節バスによる抑制効果が検証されているのが自然だが、そのような公文書は開示されていない。どうなる車両購入補助、「別途継続して協議」
福岡市の財政負担も気になる。表向きは、市は道路など公共空間の整備としており、車両購入補助をしないとしているが、3月30日決裁の方針決定に付いている公文書のなかに、「取扱注意」と印刷された文書があり、そこには、最初に導入する2台の「その後の導入に対する福岡市による車両購入補助については、国庫補助の制度改革や社会情勢等も踏まえ、別途継続して協議を行う」と記されている。西鉄は、最終的に15台にする計画だ。
福岡市は、2016年度から連節バス2台の運行を始める計画で、9月補正予算で盛り込まれた1,500万円をかけて、運行ルートなど「都心循環BRTの形成」について検討を進める。
車両購入への財政負担がないのかどうか、連節バスがバスの定時性確保や道路混雑の緩和に最適なのかどうか、議論を尽くすのは、今しかない。(了)
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