2024年11月21日( 木 )

【異色の芸術家・中島氏(4)】ドバイでの個展を予定、「人生初の大勝負をかける」

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画家・劇団エーテル主宰
中島淳一 氏

 近年はニューヨークでの個展開催や大きな作品に新しく取り組むなど、挑戦を続けている福岡在住の芸術家・中島淳一氏。10月にはアラブ首長国連邦ドバイ現地に視察に行き、現地のギャラリーの常設展への出展、個展開催の準備を進めるという。自身が「最初の大勝負」と位置付けるドバイでの個展開催に向けた想いなどを語ってもらった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)

 中国人の芸術プロデューサーからアラブ首長国連邦ドバイでの個展開催を誘われていて、その視察のため、現地に行くという話を以前からしており、10月13日から21日までに決まりました。ドバイは富裕層のまちであり、文化的なものに対する関心が強いということです。銀座でも福岡でも絵を見にきてもらうのは大変で、まして気に入って所有したいと思ってくれるのはすごく難しいことですが、ドバイには大きなチャンスがあり、勝負したいと思っています。

 ドバイのギャラリーのオーナーは私のアトリエにも作品を見にきてくれて、私の作品に対して好感をもってくれたようです。今年7月に福岡アジア美術館で開催した個展で初めて130号(1,940 mm×1,620㎜)などの大きな作品を描いて展示したのですが、オーナーは「これよりももっと大きくてよい、倍の大きさでもよい。あなたの絵はドバイの広大な空間に合う」と言ってくれました。同館は天井が高く、私も実際に個展を開いてみて、より大きな作品でもよいと感じたこともあり、現在は縦4m、5mという大きな作品の創作に取り組んでいます。

 そのオーナーが10月に新たに非常に大きなギャラリーをオープンします。その一連のセレモニーやパーティーに招待を受け、視察がこの時期に決まりました。世界のすごいセレブの人たちが出席する予定で、ドバイ1という大富豪の家や、世界1の高層ビル「ブルジュハリファ」の隣にある予約困難な高級レストランでパーティーを開くということです。

中島淳一 氏 絵画    ドバイでは絵の取引額のケタも違うという印象を受けました。私の作品の販売価格について、大きな作品なら数百万円からとプロデューサーに言ったところ、作品の完成度が高ければ2,000万円で設定してもよいだろうと言われました。購入するセレブにとっては金額よりも作品のインパクトこそが大事だということです。そうしたセレブと面識ができ、絵を見てもらえるかもしれないまたとない機会になると思っています。私自身、若いころは画商によって絵の価値、つまり評価額が変わるということを以前に実感しました。数百万円の絵を数千万円で売ってくれる画商が現れると意識が変わります。次は1億円で売れても何も驚かないかもしれません。何十億円で売れている画家がいるわけですから。

 そのギャラリーの常設展にまずは作品を置いてもらい、次に個展をということで話が進むと思います。画廊のオーナーが言うには私にはスケールの大きい絵がぴったり合うということで、将来的により高い評価が得られるだろうと見てくれています。このプロデューサーは何度も私のところに足を運んできてくれていることから、信じて挑戦するつもりです。

新作「Venus」 立てるのではなく寝かせて 大きな絵を描くことに挑戦中
新作「Venus」
立てるのではなく寝かせて
大きな絵を描くことに挑戦中

    大きな絵を描くようになったのは、ニューヨークで個展を開いた際に、現地ではギャラリーの天井が高く、現地の画商からもっと大きな絵を描くことを勧められたからです。私はもともと、絵の本質は緻密さにあると考えており、そうした意見には反発をしていたのです。ただ、「10㎝のブルーは1㎝のブルーよりもよりブルーである」という名言があり、「なるほど、そういうことか」と思い、大きな作品を描き始めました。福岡アジア美術館は天井が高いという点でニューヨークなど海外のギャラリーに似ており、個展では120号、130号などの大きな作品を中心に展示しました。来年2月にも再び開催します。

 画家について、統計上でみると実は60代、70代、80代に最高の作品を残しています。もちろんこれは長生きする人の場合であり、早くから良い作品を描いている天才的な画家もいますが、一般的には高齢になって円熟期を迎えています。プロデューサーからも、私の20代から40 代の作品には他からのさまざまな影響が見られるけど、今の絵は私そのものであり、個性があると評価してくれています。ゴッホなども、若いころは他の画家から影響を受けており、これは誰それの絵ではないかと批判されり、最後にようやく自身の絵を描くようになったと評価されたほどです。

 今、自身のやる気、絵のアピール力などがいい方向に変貌してきたのだと思っています。これから、人生初の「大勝負」をかけたいと思っています。私は手法などにおいて、とくに自身の個性を出そうと意識して描いているのではなく、ただ自分が描きたいように描いているにすぎませんが、とにかく「絵を描くことが大事」という思いで取り組みます。

【文・構成:茅野雅弘】


<プロフィール>
中島淳一
(なかしま・じゅんいち)
1952年、佐賀県唐津市出身。内外で多くの賞を受賞。脚本・演出・主演の一人演劇も上演している。ベルサイユ市芸術名誉市民(1998)、モンゴル芸術親善大使(2023)。
URL:https://www.junichi-n.jp

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