2024年10月28日( 月 )

人材問題のブルーオーシャンに挑む 物流を基盤とするソリューションカンパニー

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(株)博運社

(株)博運社

 「2024年問題」として人材難が取りざたされるトラック業界。人材確保に苦労しているはずのトラック運送業者でありながら、(株)博運社は同業他社へのドライバー派遣を行っている。そこには物流を基盤に社会の問題解決に挑む同社のポリシーが表れている。自社の貴重なリソースを同業他社へ提供する同社は、どのようなビジネスモデルを描くのか。

九州を代表する運送業者 困りごと解決が請負の原点

 (株)博運社は1957年設立。関西から九州一円にまたがる営業ネットワークを形成し、売上高110億円超、保有トラック台数480台超、保管施設の総床面積は15万1,000m2。とくに医薬品の取り扱いにおいては九州圏内でシェア8割を占める九州を代表するトラック運送業者だ。

 運送業界は今、人材難の渦中にあるものとして認識されているが、同社の眞鍋和弘代表は、だからこそ同業界には大きなチャンスがあると考える。

(株)博運社 眞鍋和弘代表
眞鍋和弘代表

    「運送業とは請負業ですが、請負とは人の困りごとを解決するということです。当社は物流会社ですが、だからといって提供するサービスを物流に限るべきではないと考えています。解決が求められている困りごとに対して、当社のリソースを使って解決できるならば柔軟にサービスの提供を考えていく。そこに新しいビジネスチャンスが生まれると思います」(眞鍋氏、以下同)。

 そこで同社が近年行きついたのが、同業他社に対する人材派遣や物流システムの提供サービスだ。同社の物流は本来、トラックとドライバーをセットにしたサービスだが、同社はそれにこだわらず、トラックドライバーを必要とする顧客にはドライバーを、物流システムを必要とする顧客にはシステムを提供する。同業他社へのリソース提供は通常、自社の営業機会の損失につながるものと考えがちだ。しかし、それが社会全体の問題解決にとって最適解であれば、それは自社が提供すべきサービスであると、眞鍋氏は考える。

 「会社は社会にとって必要な存在でなくてはなりません。そのためには自社が提供したいサービスにとらわれるのではなく、顧客や社会にとって最も価値あるサービスを常に考え、それを提供する会社になることを目指す必要があります。そうであってこそ会社は社会に適応して生き残っていけるのではないでしょうか」。

相対的な最高価値の提供 何が顧客にとって最適か

(株)博運社    運送サービスを請け負う場合、通常は見積もりが不可欠だ。しかし、眞鍋氏は、「まず顧客の指値から始めるべきだ」と言う。物流を利用する顧客にとって運賃は経費にあたり、許容できる経費が予算としてすでに決まっている。経費が予算の範囲に収まらなければ、顧客のビジネスがそもそも成り立たない。よって眞鍋氏は、顧客の予算内で自社が提供できる最高価値のサービスを常に考えるべきだという。

 「請負とは決められたサービスを既製品として売るのではなく、顧客の要望に合わせて柔軟に対応して必要なサービスを提供することです。たとえば、絶対目標として商品破損率0%を達成するのには大変なコストがかかりますが、破損率0%は達成できなくてもコストを抑えることができれば、顧客にとって相対的に最高価値を提供することができます」。

 顧客にとっての相対的な最高価値の提供を考える場合、物流サービスにとどまらないトータルなサービス提供というビジネスモデルが視野に入ってくる。人材派遣やシステム提供をはじめとする同社の試みには、物流を基盤とした総合的なソリューションカンパニーを目指す同社のビジョンが表れている。

国境を越えた物流人材 柔軟な人材戦略に挑む

 同社は2017年、ベトナムのホーチミン市に人材確保の拠点として現地法人「HAKUUNSHA VIETNAM」を設立した。ベトナムには、日本で技術やビジネスを学びたいという向上心の強い若者が多い。また、同年、国内の日本語学校で学ぶ留学生の採用を開始した。意欲のある学生に対して運転免許取得なども支援する。学生たちには学びの場と仕事を提供し、会社は人材を確保する。眞鍋氏は22年から西日本・カンボジア友好協会の会長も務める。日本は人手不足だが、地球規模で見れば食糧危機の地域があり、仕事もなく貧困のなかで生活する人がいる。日本と世界、相互の問題の解決に向けて、同社は物流会社としての可能性を最大限に模索する。

 だが、同社の人材戦略の挑戦は外国人材の受け入れにとどまらない。

 「人材派遣業を拡大していくにあたり、派遣できる最大の人材数は当社の社員数を目標と考えています。必要な場所にすぐ人材を派遣して、派遣先がないときは当社の業務に従事させます。見方を変えれば、当社が職業訓練学校のような役割をはたすということです。これも社会や顧客のニーズに応える当社のサービスになります」。

 トラック業界が直面する人材問題。しかし、解決が難しい問題であるからこそ、その解決策を見つければ儲かるビジネスを生み出すことができる。同社は物流業者として培った信頼と蓄えた実績にとどまることなく、新しい時代に適応する果敢な開拓精神をもって、物流業界の険しくも実りあるブルーオーシャンに挑み続ける。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:眞鍋和弘
所在地:福岡県糟屋郡志免町別府北3-4-1
設 立:1957年1月
資本金:3,000万円
TEL:092-621-8831
URL:https://www.hus.co.jp

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