2024年12月22日( 日 )

需要減少で低迷する印刷業界~忍耐か変革か(3)

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 国内印刷業において、“2強”がその売上の大部分を占めるという話はよく知られるところだ。2012年に行われた「経済センサス」(総務省)第1回活動調査によると、印刷・同関連業の売上高は7兆6,759億円。大日本印刷(株)、凸版印刷(株)の両社は売上高約1兆5,000億円規模で、他の追随を許さない圧倒的トップシェアを誇っている。単純計算して両社合計で約3兆円の売上高となり、「経済センサス」の売上高、あるいは「企業活動調査」の売上高をとっても、両社で大部分を占めることは一見してわかる。

 しかし、売上構成には注意が必要だ。
 2015年3月期決算において、両社とも「印刷業界は依然として厳しい経営環境」とし、商業印刷・出版印刷ともに業績を下げている。それでもこの2社が収益力を維持しているのは、印刷技術を利用して、半導体や太陽光電池部材、液晶カラーフィルターなどの新しい分野に参入し、事業を拡大させていったためである。

 それぞれの各セグメントで比較する(いずれも15年3月期決算)。
 凸版印刷においては、出版印刷など主体となる印刷業にあたる「情報コミュニケーション事業分野」が売上高9,324億円(前期比1.4%増)、営業利益は482億円(17.4%増)となった。パッケージや包装材が含まれる「生活環境事業分野」では、売上高2,854億円(0.7%増)、営業利益63億円(43.7%減)。半導体やディスプレイ関連の「マテリアルソリューション事業分野」では、売上高3,500億円(前期比4.7%減)、営業利益115億円(26.1%増)となった。

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 大日本印刷の事業分野も、似た構造をとる。出版印刷・商業印刷が含まれる「情報コミュニケーション部門」は売上高6,989億円(前期比0.2%減)、営業利益75億円(前期比36.7%減)となった。包装資材や産業資材が該当する「生産・産業部門」では売上高4,797億円(前期比2.5%増)、営業利益239億円(前期比10.5%増)。液晶カラーフィルターや半導体製品用フォトマスクなどの「エレクトロニクス部門」では売上高2,303億円(前期比0.7%減)、営業利益244億円(前期比2.7%減)だった。大日本印刷は以上の3部門に加え、「清涼飲料部門」があり、売上高596億円(前期比8.8%増)、営業利益10億円(前期比65.2%増)となっている。

 2社のセグメント別売上構成を見ると、凸版印刷は「情報コミュニケーション」約59%、「生活環境」約18%、「マテリアルソリューション」約22%となっており(調整額除く)、主力の印刷業が6~7割を占めているのに対し、残りの3~4割が半導体など新事業である。大日本印刷は、「情報コミュニケーション」約47%、「生産・産業」約32%、「エレクトロニクス」約15%、「清涼飲料」約4%。凸版印刷よりも、印刷業の占める割合が低く、新事業が売上の半分以上を占めている。

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 低迷する印刷業界において、「新事業の創出」など新たな方向性を模索するのは無論この2社に限ったことではないが、その実現の背景には、トップ企業たる資金力や人材力があることは明白だ。
 では、大企業並みの資本を持たない中小企業の生き残り戦略とは――。

(つづく)

 
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