【トップインタビュー】ハード&ソフトの両面で進める笑顔いっぱいの「住民第一」のまちづくり
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新宮町長 桐島光昭 氏
福岡県糟屋郡に属し、豊かな自然環境と優れた交通利便性などから、主にベッドタウンとしての発展を遂げてきた新宮町。現在も町内で大規模土地区画整理事業を進めながら、持続的な発展に向けての基盤づくりを行っている。昨年4月の町長選で初当選し、現在1期目の新宮町長・桐島光昭氏に、現在進めている政策などについて聞いた。
JR新駅&駅周辺整備で飛躍的な成長を遂げる
──まずは新宮町の概要についてお聞かせください。
桐島光昭氏(以下、桐島) 新宮町は福岡市に隣接しながらも、町西部に位置する白砂青松の海岸線をもつ新宮海岸や、玄界灘に浮かぶ相島、さらには町東部に位置する立花山といった豊かな自然環境に恵まれています。そうした自然だけでなく、国道3号や国道495号、JR鹿児島本線、西鉄貝塚線といった交通インフラの大動脈が南北に走っていることで交通利便性にも優れており、多くの住宅地が開発されて福岡市のベッドタウンとして発展し、3万2,930人(8月末現在)もの人口を抱える町になっています。ただし、これだけ人口が増えてきたのはここ20年ぐらいのことで、私が役場に入った約30年前は、まだ人口1万2,000人ぐらいだったと記憶しています。
新宮町にとって大きな転換点の1つは、平成の初めごろに福岡市との境に位置する湊坂や桜山手において大規模な住宅地が開発されたことです。このときに1,000戸ほどの新たな住宅が供給され、かなりの人口増となりました。また、2007年4月に西鉄宮地岳線の新宮~津屋崎間が廃止されて西鉄貝塚線となりましたが、このときは新宮町の西鉄新宮駅までは何とか路線を維持していただきました。これは町にとって、非常にありがたいことだったと思います。
そして何よりも大きな転換点は、10年3月にJR新宮中央駅が開業したことと、それにともなって駅前の土地区画整理事業が進んできたことです。新宮中央駅が開業する以前は、現在の福工大前駅が「筑前新宮駅」という名称で、駅名に「新宮」と入ってはいたものの、実際の駅の所在地は福岡市東区であり、町の中心として駅前を開発することはできませんでした。そのため、町内にJRの新駅を設置し、それに合わせて新駅の駅前で大規模な土地区画整理を行うことで新たに町の中心をつくっていけたのが、大きかったと思います。以降、新宮中央駅の駅前にはマンションや商業施設などが建ちならび、近年の急激な発展を象徴する場所となっています。
──画期的だったのは、駅前を“町の顔”として開発する過程で、駅前の一等地の地下に本来なら“忌避施設”である下水処理場を配置するとともに、その地上部分をセントラルパークとして整備していったことです。
桐島 新宮町では01年度に都市計画マスタープランを策定して「新宮町中心市街地整備事業」をスタートさせたのですが、そのときに中心市街地の形成にあたってJR新駅の誘致・整備を行うとともに、下水処理場(浄化センター)を地下埋設してその上にセントラルパークとなる「沖田中央公園」を整備しました。また、JR新駅開業に先駆けて、新駅予定地となるJR線路の東側と西側でそれぞれ「沖田土地区画整理事業」(30.6ha)と「緑ケ浜土地区画整理事業」(8.2ha)という2つの大規模な土地区画整理事業を行い、新宮中央駅と沖田中央公園を核として、周辺で居住環境と商業施設などのまちづくりを進めてきました。おかげさまで、駅周辺エリアでは大規模マンションがいくつも建設されたほか、九州初進出のIKEAやカインズなどの魅力的な商業店舗もできたことで、このエリアに多くの人が移り住むようになり、15年10月に実施された国勢調査では全国1位の人口増加率となったこともあります。ただし、近年は人口の伸びがやや停滞気味にはなってきていますので、そろそろテコ入れを図っていかねばなりません。
──新宮町はIKEAやカインズなど、大手企業の九州初上陸の場所として、選ばれている印象です。
桐島 町から何かしら働きかけているわけではないのですが、ありがたいことに12年4月開業のIKEAを皮切りに、16年3月開業のカインズ、18年4月開業の東京インテリア家具など、九州初進出の場所として新宮町に出店していただいているケースが多いですね。最近でも、九州初進出ではないものの、23年8月に「ロピア福岡新宮店」がオープンしました。こちらは九州2号店ですが、路面店としては九州1号店になります。
思えば私の記憶では、こうした新宮町における九州初進出の最初のケースは、1992年4月の「トイザらス」のオープンだったように思います。その後も、こうして九州初進出の場として当町を選んでいただいているのは、福岡都市圏のなかで周辺の商圏人口を含めた規模感と、広域からの集客も可能な交通アクセス、そして福岡市に隣接しながらもやや割安な土地価格などが、九州での試金石的に進出するのにちょうど良いのではないかと、勝手ながら思っています。
2つの大規模土地区画整理事業と高速スマートICも設置へ
──町内では現在も、2つの大規模な土地区画整理が進んでいますね。
桐島 先ほど人口が停滞気味だとお話ししましたが、町の勢いを停滞させないためにも新たな開発行為は必要不可欠だと思っており、町内で2つの土地区画整理事業を進めているところです。
まず1つ目の「三代土地区画整理事業」は、防災活動拠点(新宮東中学校および新宮ふれあいの丘公園)に隣接した三代エリアにおいて、防災活動拠点を支援するまちづくりを目指して事業に着手したもので、それとともに広域交通が交錯する立地を生かして、産業・住宅・交流などの機能がコンパクトに集積した機能複合型のまちづくりを進めていくものです。施行区域面積は35.2haで、主な土地利用は商業施設や物流・工業施設のほか、住宅を予定しています。また、国道3号の大森交差点から、エリア内を東西に貫く都市計画道路三代・的野線を整備していく計画です。
実は、新宮町は町の南北方向の道路インフラは充実しているのですが、東西方向を1本でつなぐ道路というものがありません。この都市計画道路三代・的野線は、国道3号や県道35号・筑紫野古賀線などの主要な幹線道路とも交差する道路で、町の東部エリア発展にもつながるものだと考えています。
もう1つの「下府土地区画整理事業」は、先ほどの都市計画道路三代・的野線の延長線上であり、町の東西の生活圏構成軸に位置付けられた都市計画道路湊・三代線沿道の下府エリアにおいて、生活利便施設と住宅を中心とした市街地整備を進めていくものです。約9.1haの地区内に敷地の緑化や建物の形態・デザインなどを統一した良好なまちなみが形成された住宅地や都市計画道路沿線に商業施設のほか、医療・福祉施設などの生活利便施設を誘致する計画となっています。
これら2つの土地区画整理事業はいずれも造成工事に着手しており、三代エリアは29年3月まで、下府エリアは27年7月までの事業期間を予定しています。また将来的には、さらに別の場所での土地区画整理事業も検討していきたいと考えております。
──国土交通省が9月6日、新たに「新宮スマートIC(仮称)」の準備段階調査に着手したと発表しました。
桐島 スマートICについては、新宮町が以前よりNEXCO西日本や国土交通省と協議を進めてきたもので、計画地は町の東部の立花口地区です。このエリアでは以前より新たな土地利用を検討しており、スマートIC整備計画に併せて民間開発による大規模流通業務施設なども検討しているところです。スマートICが実現すれば、九州自動車道へのアクセス性向上により、企業誘致が進んで雇用が拡大することも見込めますし、さらには新たな観光ルートの形成などの効果も含めて、新宮町内の産業に大きなインパクトを与えるものだと考えております。
住民が胸を張って誇れる、さらに魅力あるまちへ
──そのほか、現在進めている政策などは。
桐島 先ほどまでのお話は主にハード面のものですが、ソフト面でも「住民第一」を町政運営の中心に据えて、さまざまな取り組みを進めているところです。たとえば高齢者支援では、10月から開始する高齢者向けの移動・お出かけ支援のほか、誰でも安全に楽しめるケアトランポリンなどの健康教室の実施など、高齢者の方々の健康寿命を伸ばすさまざまな取り組みを進めております。また、子育て・教育支援では、妊娠期から出産、その後の子育てまで一貫した伴走型相談支援の充実を図っていこうとしており、10月からは第2子以降の保育料無償化も始めました。また、現在は国などとの調整などが難航しているものの、ゆくゆくは給食無償化も実施していきたいと考えているほか、小中学生の入学時学用品費の補助なども検討しています。
ほかに現在、デジタル社会の実現に向けて、行政手続きのオンライン化や庁舎内における事務のデジタル化などを進める自治体DXの推進などを行っています。とくに自治体DXに関しては、これまで新宮町は他の自治体と比べて遅れ気味だったと感じており、遅ればせながら10月からはSNS(LINE)を活用した住民との双方向の情報発信サービスも開始します。将来的には「書かない、待たない、行かない窓口」を実現する、自治体DXによる行政サービスの充実に注力していきたいと思います。
──最後に、桐島町長が目指されている新宮町の未来についてお聞かせください。
桐島 昨年4月の町長就任時にも提示させていただきましたが、私が町行政を進めるうえでの基本方針は「住民第一」のまちづくりです。新宮町にお住まいの皆さまがたが、笑顔いっぱいで満足しながら日々の生活を送れるよう、さらに魅力あるまちにしていくことが私の願いであり、責務です。そして、新宮町で育った子どもたちが将来巣立っていって出身地を聞かれた際に、胸を張って「福岡県新宮町です」といえるような、そんな誇れる郷土・新宮町にしていきたいと思います。
【坂田憲治】
<プロフィール>
桐島光昭(きりしま・みつあき)
1964年1月、新宮町出身。東福岡高校、福岡大学経済学部を卒業後、89年に新宮町役場に入職。健康福祉課や都市整備課、政策経営課などで課長職を歴任し、町職員として33年間にわたって奉職。前町長の任期満了にともなう町長選挙に出馬して初当選をはたし、2023年4月に新宮町長に就任した。法人名
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