2024年10月07日( 月 )

業績不振から危機説が噂されているサムスン電子(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

先行指数である株価の下落が止まらない

半導体 イメージ    一時期、半導体売上高世界ランク1位を記録したサムスン電子だが、その業績に陰りが見え始めている。最近の半導体業界は、AI半導体とファウンドリ事業が業界を牽引しており、サムスン電子は両分野において存在感を失いつつあるからだ。

 JPモルガンの市況リポートで株価を下げたサムスン電子は、先月マッコーリー社が目標株価を12万5,000ウォンから6万4,000ウォンに下方修正するリポートを発表し、株式市場に波紋が広がっている。同社の株価は韓国株式市場で9月の1カ月間で17.2%も値を下げている。一方ライバルであるSKハイニックスの株価は0.5%上昇し、明暗が分かれた。

 さらに証券業界では、サムスン電子の予想営業利益額を徐々に下方修正している。iM証券では第3四半期の営業利益額を14兆6,000億ウォンから11兆2,000億ウォンに23.3%も下方修正した。新韓証券も営業利益の予想額を13兆2,000億ウォンから10兆2,000億ウォンに22.6%下方修正した。予想値を下方修正した理由としては、予想を下回ったスマホの需要、メモリ需要の鈍化、ファウンドリ事業の累積赤字額の増大、ウォン高などの為替レートの影響などが挙げられている。

 さらに外国人もサムスン電子の株に売り浴びせをしている。9月に入って外国人は17日連続で同社の株式を大量に売り、売却株式の総額は8兆7,592億ウォンに上っている。スマートフォンではアップルに押され、ファウンドリ事業ではTSMCとの差が開くばかりで、そのような状況下で、中国ではバブルがはじけ、中国需要の減少が予想されるなど、サムスン電子の先行きに暗雲が立ち込めている。

ファウンドリ事業ではTSMCと差が開く

 サムスン電子は以前、10ナノ、8ナノ工程では、TSMCとの技術的な差はそれほど大きくなかった。ところが、2017年に極紫外線(EUV)の導入が始まった7ナノから、サムスン電子はTSMCと差が開いた。その後、5ナノでは性能の差があり、4ナノでは品質や歩留まりの差が歴然となり、顧客であったクアルコムもTSMCに奪われるようになっただけでなく、自社のスマホに搭載される半導体も自社のファウンドリに依頼するのを躊躇するほどだった。

 TSMCは毎年50兆ウォン以上の巨額な先行投資を続け、3ナノ以下の最先端半導体分野で、ファウンドリ市場の90%を占めるようになった。ファウンドリ市場でTSMCの快走が続いているなか、ライバルのサムスンやインテルは、顧客の確保が段々難しくなった。市場調査企業トレンドフォースによると、TSMCの第2四半期の売上高は208億2,000億ドルで、前の第1四半期対比で10.5%成長している。市場シェアも62.3%で2位との差をさらに広げている。

 TSMCがこれほど快調になった決定的な要因の1つはIPだという。IPとは、半導体の特定技能を実現する回路ブロックのことを指す。IPを多く保有すればするほどほど、顧客のチップはさらに早く、正確に製造されるようになるという。TSMCがIPを7万個ほど保有している一方、サムスン電子はその10分1しか持っていないという。

(つづく)

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