2024年10月08日( 火 )

【国交省と厚労省】連携で建設人材の確保・育成サポート(後)

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人材育成

国交省の取り組み

 能登半島地震発生を踏まえて、「住宅・建築物防災力緊急促進事業」として300億円の予算を計上。その事業のなかで新規事業として、「暮らし維持のための安定的な住宅生産・維持管理事業」を人材育成策として挙げている。具体的には、災害へのレジリエンスの向上を目的とした、地域の住宅生産事業者などで構成されるグループによる、地域の特色のある質の高い住宅の整備による技能維持・継承を支援。また、地域グループによる担い手の確保・育成等および防災・減災の備えに資するモデル的な取り組みに対する支援も実施するとしている。

 なお、「人材確保」と同様に、人材育成においても「働き方改革等による建設業の魅力向上﹂を挙げている。

厚労省の取り組み

 「中小建設事業主等への支援」の予算に4億9,000万円、「建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練)の実施」の予算に1億3,000万円、「ものづくりマイスター制度による若年技能者への実施指導」の予算に24億円などを盛り込む。

 「中小建設事業主等への支援」では、離転職者、新卒者、学卒未就職者などを対象とした訓練カリキュラムの策定のほか、訓練生募集、職業訓練の実施、就職支援をパッケージで業界団体が行う事業を実施する(建設労働者育成支援事業)。

 また、「建設分野におけるハロートレーニング(職業訓練)の実施」では、建設機械等の運転技能だけでなく、パソコンスキル講習などと組み合わせたハロートレーニングを引き続き実施。そのほか、建設分野の職業訓練受講者に対するリーフレットを活用したCCUS制度の周知を実施していくとしている。「ものづくりマイスター制度による若年技能者への実施指導」では、ものづくりマイスターを中小企業等に派遣。若年技能者への実施指導を実施するとしている。

魅力ある職場づくりの推進

国交省の取り組み

 「人材確保」「人材育成」と同様に、「働き方改革等による建設業の魅力向上」を掲げており、その概要は前述の通り。

厚労省の取り組み

 建設業に特化した支援として、「雇用管理責任社等に対する研修の実施」の予算に8,200万円、「建設業一人親方等の安全衛生対策支援事業」の予算に1億1,000万円、「中小専門工事業者の安全衛生活動支援事業の実施」の予算に9,500万円、「墜落・転落災害など防止対策推進事業」の予算に8,700万円を計上。ほかに、建設業に特化したものではないものの、「働き方改革推進支援助成金による支援」の予算に70億円、「働き方改革推進支援センターによる支援」の予算に30億円、「労災保険特別加入制度の周知広報等事業の実施」の予算に3,000万円を計上している。

 「雇用管理責任者等に対する研修の実施」では建設業の雇用管理責任者に対して、雇用管理に関する基礎的な知識を習得する「基礎講習」を実施。また、熟練労働者と若年労働者が円滑なコミュニケーションを取りながら働くことのできる環境づくりの手法などを学ぶ「コミュニケーションスキル等向上コース」の実施により、若年者の職場定着を高めていくとしている。

 「建設業一人親方等の安全衛生対策支援事業」では、労災保険に特別加入している一人親方等に対する安全衛生教育を行うほか、一人親方等が入場している工事現場への巡回指導を実施する。

 「中小専門工事業者の安全衛生活動支援事業の実施」では、安全衛生管理能力の向上のための集団指導・技術研修会、パトロール、個別指導などを実施する。「墜落・転落災害など防止対策推進事業」では、足場からの墜落・転落災害の防止対策の充実強化のための専門家による診断の実施、診断結果に基づく現場・支援などを実施する。

 「働き方改革推進支援助成金による支援」では、生産性を高めながら労働時間の短縮などに取り組む中小企業・小規模事業者のほか、中小企業で構成され、傘下企業の支援を行う事業主団体に対する助成を実施。また、24年4月から時間外労働の上限規制が適用されている建設業などの業種については、専用のコースを用意しての引き続きの助成も行っていくとしている。

 「働き方改革推進支援センターによる支援」では、47都道府県に「働き方改革推進支援センター」を設置し、労務管理などの専門家による働き方改革全般に関する窓口相談のほか、企業の取り組み事例や労働関係助成金の活用方法などに関するセミナーなどを実施。そのほか、働き方改革全般に関連する周知啓発および総合的な除法発信などの支援を行っていく。

 「労災保険特別加入制度の周知広報など事業の実施」では、関係機関や関係団体を通じた一人親方等への労災保険特別加入制度の周知広報を実施する。

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 国交省および厚労省とも、建設業が引き続き「地域の守り手」として役割をはたしていくために、担い手不足解消に向けての取り組みを連携して進めている。しかし、22年度の建設業への入職者は、02年度と比べて約60%減の約22万人まで減少。また、建設業における新卒入職者の3年目までの離職率は、大卒者で約30%、高卒者で約40~50%と近年横ばいで推移。製造業に比べると、20年度では大卒者で約10%、高卒者で約15%も離職率が高く、若年入職者の確保は最大の課題だ。

 一方で、週休二日制や全雇用者の社会保険加入に取り組むほか、女性専用のトイレや更衣室・休憩所などの女性社員が働きやすい職場づくりの実践に加え、福利厚生面や業界トップクラスの給与待遇など独自の労働環境改善を行い、女性・若年入職者獲得に成功している企業もある。

 令和7年度予算概算要求における過年度からの事業および新規事業の取り組みに加え、来年度以降に施行される担い手3法の実施により、建設業界が魅力のある働きやすい環境となり、女性・若年入職者の増加につながることを期待したい。しかし一方で、各企業それぞれが独自の環境整備と魅力発信などにより、人材確保および人材育成成に努めていくことが、今後より一層求められるだろう。

(了)

【内山義之】

(前)

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