長期資産価格循環 と“日本株持たざるリスク” ~オルカンより日本株が魅力的だ~(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は10月15日発刊の第366号「長期資産価格循環 と“日本株持たざるリスク” ~オルカンより日本株が魅力的だ~」を紹介する。今、資産価格循環、Super Bubble Cycleが
決定的に重要だ国際分散投資における長期資産配分において、今ほど資産価格サイクル(バブルサイクル)が重要なときはない。各国ごとに固有の10~数10年の周期で見た資産価格の上昇下落の循環が観測でき、各国ともに底で買って高値で売ればよい。
幸運なことに、この資産価格サイクルは国によってまったく位相が異なるので、国際分散投資においては、機械的、静態的に数理モデルに基づいて配分するのではなく、この資産価格サイクルにより強弱をつけるべきだ。カントリーアロケーションはこの長期資産価格サイクルに最重点を置いて配分すべきだ。
とくに日本はNISAにより急速に投資ブームが盛り上がっているが、その大半が「オルカン」と称される海外株式投信に流れている。ふつうはホームカントリーバイアスがあり、自国投資偏重となるのであるが、日本は逆に海外投資偏重という奇妙なことが起きている。これは以下に具体的に説明する各国の資産価格サイクルの位相から見て、とても非合理なことである。
主要国の資産価格サイクルを図示すると図表1のようになる。中国はサイクルのピークを過ぎたところにあり、資産投資は抑制し、cash is Kingに徹すべきだ。米国は資産価格が概ねフェフバリューにあるが、金利急騰が起きれば、直ちにバブル化する、黄色信号寸前の状態にある。バランスの取れた資産配分が望ましい。それらに対して日本は、バブル崩壊後の底入れからしばらく経った局面であるが、資産価格は割安水準にある。まさしく日本における投資リスクは日本株持たざるリスク、といえる。今年に入ってからの株価急騰に水を差した「植田ショック」「岸田ショック」の2つの政策ショックは、日本株式のボラテリティーを異常に高め、日本株式の割安さ(=高リスクプレミアム)を一層高めた。日本株式は選挙前の不透明さから、最高値近辺での迷走を続けている。しかし利上げ・緊縮財政という真性デフレ政策を打ち出している立憲民主党政権が成立しない限り(その可能性はない)、選挙後の日本株買いは必至、日経平均株価は年内4.2~4.5万円、2025年前半には5万円に到達するだろう。
米国資産価格はバブル形成に向けモメンタム、
だが要警戒米国の資産価格サイクルは、バブル形成に向けて最もモメンタムを高める場面かもしれない。インフレ懸念は大きく鎮静化し、リセッションの心配もほぼなくなった。しかも利下げの余地が大きいとあっては、リスク資産投資に舵が大きく切られそうな場面である。市場フレンドリーの政策を掲げるトランプ氏が大統領になれば、期待が高まる可能性がある。また「私は資本主義者」と左翼から中道へと軸を大きく旋回させているカマラ・ハリス氏が当選しても、市場の騰勢が水を差されることはないだろう。
ここで米国資産クラスのバブル度を検証してみよう。株式はバブルではないが、割安感は完全になくなり、中期的には警戒も必要な局面に入っている。図表3は手っ取り早い目安としてのFed Modelでの評価であるが、10月11日(金)時点でのSP500益回り4.39%、10年国債利回り4.07%、スプレット(≒株式リスクプレミアム)は0.32%であった。実際の株価(終値)5815に対してフェアバリューは6226とほぼ同じである。2025年には10%の利益成長が見込まれているが、長期金利が5%台に跳ね上がると、2002年5月以来初めてのスプレット(≒株式リスクプレミアム)マイナスとなる。
この旺盛なリスクテイク意欲は図表4に見る米国の自然利子率(≒実質FF金利)の急上昇とも符合している。経済心理がリーマン・ショック後の萎縮から完全に回復し、人々はリスクテイクに重心を置いている。持続的完全雇用成長のためには、相当の高金利(=ブレーキ)が必要な場面に入っている、といえる。
(つづく)
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