『脊振の自然に魅せられて』「ぶらぶらあぶらクラブの子どもたちと脊振山歩き」(前)
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2024年5月3日(金・祝)、山仲間と2人で井原山(982m)〜三瀬峠の縦走路を登ったとき、登山中の親子に出くわした。脊振山系全山縦走を目指している母と小学校6年生の子どもであった。
筆者たちは、エビネの花を見に行くところだった。若い母親は小6の男の子を登山パーティーとして三瀬峠方面(東)に歩いていた。子どもは5月の節句に相応しく、ザックにこいのぼりを差していた。
「どちらまで」とお互い情報交換をした。それによると、この親子は4日間に分けて脊振山系70kmの完全縦走に挑んでいる最中で、父親が登山口まで送迎のサポートをしているとのことだった。
母親が「脊振で写真を撮り続けている人がいるらしいですね?」と言ったので、筆者が「あぁ、それは私です」と答えたところ、親子はびっくりしていた。「脊振のレジェンドに、こんな所で会えるなんて」と、この親子にとって筆者との対面は、感激する出来事だったようだ。
なんでも、山の季刊誌『のぼろ』2015年春号Vol.8の「脊振山系特集」に筆者の活動を紹介する記事が数ページにわたって掲載されているという。それを読み、「子どもの体力がついたら完全縦走しよう」と山好きの夫婦は縦走計画を夢に描いたそうだ。子どもが小6になった今年、ついに計画を実行に移したのである。9年もの間、夢を抱いていたことに驚く。
筆者たちと向かう方向が同じなので、10分ほど行動を共にした。花咲く場所で親子2人を見送った。装備と歩き方で山馴れしていると感じた。母親の後を、男の子が黙って付いて歩いていた。子どもながら歩き方もしっかりしている。
後日、「4日間で完走しました」との連絡があった。大人でも東西70㎞の縦走はきつい。この親子に筆者の写真集『脊振讃歌』を縦走達成記念としてプレゼントした。また、母親は追加出版の『すばらしき脊振の四季』も購入してくれた(この親子についての記事は5月17日『脊振の自然に魅せられて』「花をめぐる山歩きで素敵な親子に遭遇」(前)に掲載済み)。
この親子は、油山市民の森で自然観察を行っている「ぶらぶらあぶらクラブ」で自然観察などをしているという。もちろん親がサポートしているが観察力も素晴らしく「子どもエコクラブ」の年間最優秀賞を受賞しているそうだ。大人顔負けの観察力と発信力である。
今回のジョイント登山で知ることになったが、21年『のぼろ』Vol.33の2ページ目に親子の活動写真が掲載され、同じ号の6、7ページに筆者たちのレスキューポイント設置記事も掲載されている。この時から、この親子たちとは縁があったのである。
この母親は「ぶらぶらあぶらクラブ」リーダーのHさん(福岡市在住)である。「いつか脊振を一緒に歩きましょう」「ぜひお願いします」とお互い磁石で惹きつけられた様に思いが一緒だった。
そのHさんより「10月6日(日)に脊振歩きを開催しましょう」との連絡がきた。そこで筆者は「脊振山頂駐車場で9時に集合しましょう」と返事をした。
航空自衛隊春日基地・脊振山分屯基地のある脊振山頂駐車場へは福岡県、佐賀県、両方から車で来ることができる。この広い駐車場は、基地ゲート横にあり、敷地内に水洗トイレもある。水洗トイレは佐賀県神埼市が管理しており、古いが衛生的である。なお、12月~翌年2月の冬場は凍結のため利用できない。この間は工事用の仮設トイレ2基が設置されている。
山歩きにおいては、まずは天候が重要である。この週の前後は帯状の秋雨前線が日本列島の太平洋側に停滞していた。従って秋とはいえ、天候不順が続いた。幸い10月6日は曇り空で、雨は避けられそうであった。
「ぶらぶらあぶらクラブ」の親子12名、脊振の自然を愛する会のメンバーの男女8名が脊振山駐車場に集合した。
当日の市街地の気温は25度、山頂では22度と幾分涼しかった。朝礼でグループごとに自己紹介し、筆者が当日のスケジュールを案内した。
子どもたちの脚力を考え、脊振山を往復し、歩いて30分の景色の良い日本庭園(筆者が名付けた)までピストンすることにした。今回の山歩きは多少の高低差があるものの、ほとんど水平移動で眺めもよく、山の雰囲気を味わえる最高のルートである。
各自トイレを済まし、ここから歩いて10分の脊振山(1,055m)の山頂へ縦列で向かった。山頂で展望を楽しむのと、風雨にさらされて傷んだ脊振山の道標の文字を修復するのが目的である。
13年に設置した脊振山の道標の文字は、筆者が墨汁を使って毛筆で書き上げたものである。数年前、薄くなった文字を仲間と修復し柿渋で仕上げた。それから数年が経ち、文字がまた薄くなっていた。文字が薄くなっていることは登山アプリの投稿記事で知った。
「道標のメンテナンスも行います」と伝えたら、「手伝わせてください」と連絡があった。そのため子どもたちへの記念として文字の修復も行うことにした。知人の看板業の女性社長に「木製専用塗料は何を使っているか」と尋ね、静岡の塗料会社から取り寄せた。墨汁では耐久性がないと思ったからである。
(つづく)
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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