石破首相が就任、中国はどう見るか(後)
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石破首相は、安全保障や台湾問題について、政府の近年の路線を変えることなく、むしろ台湾との関係をさらに強化する可能性が強いと見られるほか、自衛隊の力も一層強化し、4つ目の部隊となる水陸戦闘隊を設ける可能性も排除できない。過去2度にわたり防衛大臣を務めた石破首相がこのような策を講じる主な理由は、台湾と共同で中国に対抗するためではなく、中国と台湾の間で力的なバランスを維持するためであろう。
石破首相は10月4日、衆議院の全体会議で最初の所信表明演説を行った。30分間かけて政治や外交のさまざまな問題を語っている。
このなかで、中国との関係について長文の見解を述べた。全文は次の通りである。
中国に対しては、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、あらゆるレベルでの意思疎通を重ねていく。一方、中国は、東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みを、日々強化している。先月には、幼い日本人の子どもが暴漢に襲われ、尊い命を失うという痛ましい事件が起きた。これは断じて看過しがたいことだ。我が国として主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話を行い、共通の諸課題については協力する、「建設的かつ安定的な関係」を日中双方の努力で構築していく。日中韓の枠組みも前進させる。
この話から、3つの意図が読み取れる。
1つ目は、「戦略的互惠関係」を包括的に推進し、中国とあらゆるレベルでの意思疎通を重ね、「デカップリング」はしない、ということである。このような意思は、「現実的国益主義」を進めるという戦略的アイデアである。石破首相は以前に、「日本と中国はなにしろ隣国である上、経済や軍事などにおける中国の力は日本の数倍にのぼる。中国と意思疎通を重ねることは、誤解を解消し争いを避け、協力を推進することにつながる」と述べている。
2つ目は、東シナ海や南シナ海における中国の行動に対する懸念感である。
今回の演説の言葉は、歴代の政権でも触れられていたが、防衛大臣を2度経験した軍の専門家という立場から、安全保障には非常に敏感になっている。演説のなかで、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と述べていた。こうした事態は避けなければならず、正に石破首相の強調する「中国に単純に対抗せず対話を探る」ことが非常に大切である。
ただし演説では、選挙戦で何度も強調していた「アジア版NATO」の構築については触れなかった。
3つ目は、中国と「建設的かつ安定的な関係」を構築して、さまざまな課題にともに対応していくことである。石破首相は大変理性的な政治家であり、主張の一貫性や問題の現実性の見極め、さらに「何事も道理を重んじる」という考え方にそうした面が表れている。中国と日本にはさまざまな懸案事項があり、その多くは一夜にして解決できるものではない。よって、まずは関係を安定させることであり、いざこざをなくして理性や実務性をアピールすることである。
石破首相が就任した日、中国の習近平国家主席が直ちに祝福のメッセージを送った。また李強総理もASEAN首脳会議のさなかに石破首相との会談実施に即座に応じた。
この会談は大変順調であった。石破首相は言いたいことをすべて話したが、それでも会場の雰囲気は友好ムードだった。そして次回、11月のAPEC首脳会合ではおそらく石破首相と習主席との会談が行われるだろう。習近平が石破首相にマオタイ酒を贈るかは定かでないが、ハイレベル会談により中国の指導者と信頼関係を築くことで、自ずと両国の交流や協力という新たな時代が切り拓いてゆく。
石破首相の就任で、中日両国の関係改善や発展に十分な期待や希望がもてるようになった。
(了)
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