2024年12月22日( 日 )

何故、日米で選挙後の株高が見込まれるのか~財政政策の本格始動~(前)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は10月31日発刊の第367号「何故、日米で選挙後の株高が見込まれるのか~財政政策の本格始動~」を紹介する。

(1)明らかな民意
・・・減税、デフレ脱却で家計の所得を増やすこと

 衆議院総選挙で、与党の自民党(247→191議席)と公明党(32→24議席)が大敗し、両党計で215議席と64議席を失い、過半数(233)を下回った。他方野党は、立憲民主党(98→148)、国民民主党(7→28)、れいわ新選組(3→9)、新興保守2党(参政党・日本保守党)(1→6)と、とくに立民の躍進が目立った。一見保守からリベラルへ、支持が旋回したと見えるが、それはまったく違う。

図表1: 党派別得票数の前回比増減(比例代表区)

 より正確に民意を表すとみられる比例代表での政党別得票数を比較すると、自民が1,991万票から1,458万票へと533万票減らしたのに対して、立民は1,149万票から1,156万票へと7万票しか増やしていない。自民の喪失分のほぼすべては国民民主(259万票→617万票)358万票増、保守系新興2党(0→301万票)301万票増へと流れた。自民と国民民主、新興保守2党との政策的違いは減税に対する態度である。国民が103万円の壁撤廃という大幅な所得減税を唱えているのを始め、保守系野党のすべては消費税減税を主張している。

 増税(または中立)政党から減税政党へ、票の大移動が起きているのはリベラル政党でも同じである。大企業増税を主張する共産党が80万票の大幅減少(416→336万票)、社民党が8万票減(101→93万票)になった一方、減税に徹するれいわは(221→381万票)、160万票の大幅増となった。このように見ると、民意は保守においてもリベラル政党であっても増税バイアスのある政党から減税推進による、家計可処分所得の増加にあったことは明らかである。

 会田卓司クレディ・アグリコル証券チーフエコノミストは「比例代表の投票先で、50代以上でみると、古い政党が新しい政党を上回る。しかし、40代から20代までをみると、新しい政党が古い政党を上回っていることが分かった。若年層は、積極財政によって日本経済の潜在力を高めることを支持し、これまでの財政健全化を重視してセルフ経済制裁のように経済低迷を招いた財政運営に疑問をもっていると考えられる。」と述べている。これほどまでに明確に民意が政策要求を示したことは、かつてなかったのではないか。

 今後自民党は野党を巻き込んでの多数派工作を進めていくが、その軸が減税政策になることは明らかである。野党の減税要求に対して、「財源を語らぬ大盤振る舞いは無責任だ」(日経新聞10月15日社説)との批判の嵐がメディアなどから発せられてきた。曰く「金利のある世界が現実になり、今後は元利払いにあてる国債費の増大が必至だ。安易に国債を増発すれば将来に禍根を残す。」との主張だが、それはまったく事実に反する。金利のある世界とはインフレの世界、つまり税収が増加する世界である。金利のある世界で一番潤っているのは財政であり、一番被害にあっているのは家計である。野党の減税主張は「理」「義」「情」においても正当なものである。それを阻害しようとする緊縮派の政治家、官僚、メディアが、民意からノーを突き付けられているのである。

(つづく)

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