「国民だまし党」「国民自民党」玉木代表の大嘘と言論封殺体質
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11月1日の榛葉幹事長の会見が終わった直後、私は「国民だまし党と呼ばれるではないか。国民自民党と呼ばれる」と大声を張り上げた。マナー違反とのご指摘もあるが、会見中の「『野田(佳彦代表)さんを総理にする』とは一回も言っていない」との発言に対する疑問呈示であり、総選挙中に「自公過半数割れでも政権交代実現(野田政権誕生)には動かず、石破政権延命に手を貸す」と訴えていないとおかしいとの怒りを込めての声掛け質問だったのだ。
「時の人」となった玉木雄一郎代表を持ち上げるメディアは、有権者をだましたに等しい総選挙前後の豹変ぶりをほとんど無視するので、改めて経過を振り返ることにする。
(1)国民民主党は石破内閣不信任案に立民と維新と共産とともに賛成、(2)総選挙中は「自公過半数割れを目指す」「連立政権入りはしない」と明言していたのに、(3)選挙結果が出た途端、玉木代表は「首班指名の決選投票でも玉木雄一郎と書く」と断言、石破政権延命アシストを宣言したのだ。
しかし玉木代表は「石破政権延命に協力することはない」と反論。決選投票で白票を投じること(玉木雄一郎と書くこと)が、石破政権アシストとなることを否定している。野田政権誕生(政権交代)の機会を真っ先に潰した“A級戦犯”が潔白を主張しているように見えたので、「国民だまし党」「国民自民党」と呼ばれても仕方がないとの思いを伝えたのだ。
「国民だまし」の疑いはほかにもあった。流行語大賞でも取りそうな「103万円の壁」の目玉政策が誤解に基づいている可能性があるのだ。
11月3日の産経新聞は「『103万円超の働き損』は誤解」と銘打って、こう指摘した。
「年収が103万円を超えても払う必要がある所得税はわずかだ。収入増の大半は手元に残るため、実質的に『働き損』は起きない。配偶者に関しても配偶者特別控除で年収150万円までは所得税が増えない仕組み。このため、実際に『働き損』が起きるのは、扶養控除の対象となる学生アルバイトの年収が103万円を超えることで扶養者である父母などの所得控除額が減り、世帯としての税負担が増えるケースのみだ。年収の壁を巡っては、制度が正しく理解されず一部の労働者が『103万円で働き損が起きる』と誤解していることで、労働時間が抑えられている可能性も指摘される。今回の引き上げを巡る議論でこうした誤解が解消され、労働供給の増加につながることは期待できるが、効果は限定的だ」
国民民主党の目玉政策を疑問視した記事への反論を聞こうと思い、5日の玉木代表の会見で次のように聞いてみた。
――「『103万円超の働き損』は誤解」という産経の記事が11月3日に出ている。誤解を基に党勢拡大をした疑いがあるが、この記事に対する反論を聞きたい。
玉木 横田さん、どう思うか。産経新聞の「103万円を超えた働き損になるということは誤解だ」ということはどう思うか。
――(103万円を超えて)所得税が増えるのは微々たるもので、結果的に富裕層が恩恵を受けると。だから税の改正の全体像のなかで、はたして、ここが一番重要なポイントなのかどうか。
玉木 それ(扶養者である父母などの所得控除額が減り、世帯としての税負担が増える)は私説明した。財務省の説明、そのままだ。珍しい。
――産経新聞も書いているので。
玉木 横田さんと産経新聞の意見が一致するのは面白い。
――反論を(聞きたい)。
玉木 この選挙で変わったということだ。私に反論するあまり、財務省と一体化している。面白い現象なのだ。どの立場に立っているかなのですが、さっきの共産党さんとか、れいわとかのほうがむしろ、103万円の壁を上げることに対してすごく反対されているのは、私は、面白いなと思っているし、残念だと思っている。もっと現場の声を聞いたほうが良いと思う。
――(103万超の所得税額、扶養者の税負担増など)数字で示してください。
玉木 今の日本の税率は5%が最低税率ですから、たしかに103万円が104万円になったからと言って増える税額は極めて微小だ。それは仰る通り。だから私も、私たちも税の壁については無視してきた。でも、無視してきたことに対して、「いやいや違う。103万円はいろいろな意味で壁になっていて、働き控えの塀になっている」ということは、もっと現場を取材されたらどうか。
――それは、「誤解に基づいている」と産経新聞が指摘して。
玉木 誤解ではない。私も誤解だと思っていたが、誤解だと思っていることが誤解だった。だからもっと学生の皆さんとか、いろいろな人の声を直接聞かれたほうが良い。ジャーナリストだったら。それはお勧めする。
まったく説得力のない回答だった。産経の記事に対して「103万円の壁」を可視化する具体的データ(数字)を示して反論してくるかと思ったが、「財務省と同じ主張は珍しい」といったレッテル貼りのみだったからだ。
玉木代表がデータベースで正々堂々と議論しようとしないのは、立憲民主党の米山隆一衆院議員に対しても同じだった。米山氏のX(旧・ツイッター)には、「誤解に基づく」と指摘した先の産経と同様の記事や論文が引用され、同氏の解説や主張も加えられている。これに対して玉木代表は、にわかに高まった政治的影響力を背景にして言論封殺をしようとしている。野田代表との党首会談後、次のような注文をつけたのだ。
「立憲民主党側から103万円の壁の見直しについて協力したい旨のお申し出をいただきました。大変ありがたいことですが、盛んに反対の意見を発信されておられる方がいらっしゃるようなので、まず党内でしっかり意見の統一を図っていただけませんかとお願い申し上げました」
これに対して米山氏はすぐさま次のように反論した。
「立憲民主党内でこの件について何らの機関決定はされておりません。論理的整合性がない政策については、党内の議論があれば当然その旨申し上げます。立憲民主党は、そういう手続きを疎かにする政党ではないと信じておりますので。それにしても、他党の意思決定過程に随分な言いようだと思います」
玉木代表の独裁者的な言論封殺体質が浮き彫りになる。データベースで正々堂々と議論を交わすのではなく、キャスティングボートを握っている政治力を背景に立民内の反対意見を封じ込めようとしているのだ。
大半のメディアが玉木代表の主張をほぼ垂れ流すこともあり、現時点の世論調査では玉木代表に賛同する割合が多い。この状況に対して米山氏はXでこんな警告を発していた。
「今人気を博している政策・政治家・政党に迎合すれば時流に乗れ、異を唱えると理不尽に罵倒されるので、多くの人が問題点に目を瞑って曖昧にすり寄っています。私はそういう志の低い在り様は好きではありませんので、機関決定には従いますが、政策について言うべきことはきちんと言わせていただきます」
玉木代表と米山氏の主張のどちらに説得力があるのか。両者の論争から目が離せない。
【ジャーナリスト/横田一】
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