アメリカ経済の行方:トランプ・ショックの可能性
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、11月8日付の記事を紹介する。アメリカではトランプ前大統領が返り咲きを決めました。事前の予測でも、トランプ圧勝が確実視されていたとはいうものの、大手メディアは民主党からの資金提供のせいか、ハリス副大統領を持ち上げるような報道に終始していたものです。
冷静に考えれば、バイデン大統領の下で、アメリカの経済も治安も悪化する一方でした。そんなバイデン路線を継承すると訴えたのがハリス候補です。ハリス候補の口癖は「トランプは独裁者だ。彼は恐怖政治をもたらす。絶対に彼を復活させてはなりません」といった発言でした。
多くの有権者は決してトランプ候補を全面的に支持しているわけではありません。とはいえ、目前の物価高や違法移民による犯罪の増加などの社会不安に対して、効果的な政策を打ち出せなかったバイデン・ハリス政権にはほとほと嫌気がさしていたわけです。
トランプ氏は「アメリカを再び偉大な国にする」と大上段に夢を語っていましたが、過去の言動を見れば、いかにウソと誇張が溢れているかが明白であったはず。それでも、有権者には老いぼれバイデンの片棒を担いできたハリスには信用も期待ももてないとの思いが強かったというわけです。
トランプ候補が経済重視の姿勢を見せた反面、ハリス候補は女性の権利、とくに妊娠中絶の権利を擁護する政策を一丁目一番地として掲げていました。これには男女を問わず、もっと大事なことがあるだろうとの否定的な反応を呼んだだけです。
そもそも、米議会下院予算員会の直近の報告によれば、アメリカの債務は35兆ドルを突破。ということは、負債の利払い金額は1日24億ドルに達することになります。アメリカ人1人あたりが背負わされる借金の額は2032年には4万ドルを超えるはず。そうした危機感から、多くの富裕層がアメリカに見切りをつけ海外に脱出し始めている有り様です。誰が考えても、これほど深刻な財政危機に陥っているアメリカのドルや債権を買い支えることはリスク以外の何物でもありません。
アメリカではこの8月、43万8,000人が正規の職を失いました。52万7,000人の非正規雇用は生まれていますが、雇用の不安定化が加速しています。
実は、94歳の高齢にもかかわらず、頭脳明晰で「天才投資家」という異名で知られるウォーレン・バフェット氏に至っては、最近、これまで所有していたバンク・オブ・アメリカの株式70億ドルを手放しました。加えて、アップルの株もほぼ半分にあたる500億株を売却。個人資産は1,440億ドルを誇る世界有数の大金持ちのバフェット氏ですが、間近に迫るアメリカ経済破綻を回避する手立てを講じようとしているに違いありません。
そもそもすでに分裂国家の様相を呈しているアメリカのため、FBIでは「最悪の事態に備えて、先ずは食料や医薬品の確保。そのうえで銃や銃弾の用意。できれば安全な地下壕に隠れることが望ましい」とまで、深刻な警告を発しています。
日本では想像ができないかも知れませんが、バフェット氏のような先を読み、投資で大儲けを重ねてきた人物の言動には改めて要注意なのです。
トランプ大統領であろうと、ハリス大統領であろうと、こうした危機的状況を乗り越えるのは至難の業と思われます。トランプ圧勝というニュースで株式市場は急騰していますが、過度な期待は禁物です。
著者:浜田和幸
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