小池都知事追及の急先鋒、上田令子都議に聞く 小池百合子の権力欲と都民ファーストの利権追及（後）

ジャーナリスト　横田一 氏

都民ファの実態 利権誘導姿勢が露わに

    上田都議が小池知事と決別した理由はほかにもあった。都民ファの実態が自民党と同じ利権政治を目指していることを目の当たりにしたのも一因なのだという。

　「都民ファ都議時代は、自民党にくっついているさまざまな業界団体の利権を、いかに自民党から引きはがして都民ファにもってくるのかが大命題になっていました。16年の年末には、初めての経験でしたが、業界団体回りをやらされました。名簿を渡されて『今度、都民ファで選挙をやりますのでよろしくお願いします』と頼んで回るのです。私の議員人生のなかで、こんなことをやったのは後にも先にも初めてでした。一言でいえば、『自民党から都民ファへの利権横滑り』です。自民党の利権政治を変えるのではなく、利権を都民ファにもってくることが至上命令になり、キックバックも横行していた。政治資金パーテイィを都民ファが開いていたのはこのためです」。

　都知事選の公開討論会でも、蓮舫候補が「神宮外苑再開発の業者（三井不動産など）にパーティ券を買ってもらっているのか」という質問に対して、小池知事は「適正に処理している」とはぐらかす場面があった。石丸伸二候補が「イエスかノーかで答えるべきだ」と迫ったのはこのためだが、明言を避けたのは自民党と同様、企業のパーティ券購入の見返りに開発事業を推進するという利権政治（ギブ・アンド・テイクの土建政治）を続けている証に違いない。

三期目の小池都政 暴走と爆弾の火種

　三期目の小池都政の問題点についても上田都議は「神宮外苑再開発でどんどん伐採を進めるのではないか」と警告を発した。都知事選が終わったので暴走が加速するのではないかというわけだ。二期目で露呈した自民党的利権政治を堂々と進める恐れがある。「伐採女帝の魔の手から東京の緑を守ろう」と呼び掛けているのはこのためだ。

　「三期目に入って小池都政は自民党的な利益誘導型都政にまい進、さらに暴走していくでしょう。神宮外苑再開発の伐採が始まると思いますし、葛西臨海水族園も日比谷公園も開発が加速する恐れは十分にあります。その一方で、都民の憤りが高まっている。マスメディアは『圧勝』『圧勝』というが、4年前に比べて約70万票も減らしている。石丸候補や蓮舫候補ら主力候補の票を集めると357万票となり、小池知事の票を上回っている。自公支持層に加えて企業団体票や宗教票などの組織票をかき集めて290万票だった。初当選の原動力だった浮動票は二度と小池知事には戻らず、ますます自公依存を強めざるを得ないでしょう」（上田都議）。

　しかし、朗報もある。これまで孤軍奮闘だった上田都議に、強力な助っ人が加わることになった。投開票日が都知事選と同じだった都議補選では、江東選挙区から出馬した元区議のさんのへあや候補を支援、初当選をした。「共に小池都政を追及する同志が増えました。若くて静かで謙虚な方ですが、江東区議会では区長を厳しく追及、妥協はしないし戦闘能力は高い。私も頼りにしています」（上田都議）。

　小池知事は三選をはたしたものの、複数の爆弾を抱えており、追及のネタには事欠かない。

　小池知事直系の大久保ともか区長が誕生した昨年12月の「江東区長選」で、支援した自民党都議が7月16日に辞職した翌日、上田都議はX（旧・ツイッター）で、私が撮影した八丈島での戸別訪問疑惑のショート動画とともに以下のように発信した。

    「【拡散希望‼小池知事個別訪問】 小池知事の元部下大久保ともか江東区長選挙期間中、個別（戸別）訪問投票依頼疑いで書類送検されたことから自民江東区議が昨日（7月16日）辞職表明 親分の悪しき慣習を見習い、区議にやらせたのか？ 今一度小池百合子個別（戸別）訪問事案も再検証すべきです」。

　なお上田都議の拡散もあって、このショート動画は8月24日時点で視聴数146万を記録している。

　小池知事が抱える“火種”はほかにもある。小島氏が刑事告発をした学歴詐称疑惑、小池知事側から頼まれたとの暴露発言が飛び出した都内首長による出馬要請（知事の地位利用）、そして選挙中の都知事会見の質疑応答において、小池都知事が自身の選挙活動に該当する発言を行ったとして郷原信郎弁護士と上脇博之・神戸学院大学教授によって告発された。

　こうした“爆弾”がいつ炸裂して小池知事が辞任に追い込まれるのか否かが注目される。小池都政への追及を強める上田都議から目が離せない。

（了）