トランプ大統領の2025年、バブルへGO(中)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は11月13日発刊の第368号「トランプ大統領の2025年、バブルへGO~米国資本主義は進化し続けている~」を紹介する。(3)なぜ高金利が景気を失速させないのか
1995年当時と同様、現在も米国の自然利子率が急上昇していることは明らかである。自然利子率の目安となる実質FF金利の推移を図表3により振り返ると、1995年頃から大きく上昇していることが注目される。この実質FF金利は、1990年から2008年までの228カ月間平均1.5%で推移したが、2009年以降、2024年8月までの188カ月間の平均は-1.25%と大きく低下した。リーマン・ショックを境に実質中立金利のレベルが劇的に変化したのである。リスクテイクに懲りた人々がいくらFF金利を下げても、まったく反応しなくなったと解釈できる。しかし2023年以降状況は劇的に変化し、再び実質FF金利が大きくプラスになっている。
今回もまた1995年当時と同様に、急激な利上げ(2022年以降の1年半で525BP)が、まったく景気減速を招かなかった。利上げが総需要の抑制=景気の減速を通してインフレの鎮静化につながる経路(transmission channel)は、(1)銀行の企業融資抑制、(2)銀行の住宅等個人融資抑制、(3)ファンド・投機家の資金コストの上昇?資産価格の下落、の3つである。しかしながら、(1)は今や企業の銀行借り入れ依存が著しく低下しており機能しなかった。(2)に関しては、住宅需給ひっ迫により家賃と住宅価格が上昇を続けたために、借り入れコストの上昇は一定程度相殺された。最も影響が大きいはずの(3)は、利上げの打撃をほとんど受けなかった。
利上げのマイナスは投資家のアニマルスピリットの高まりで、相殺されたのである。資金コストが上昇しても、人々がより強気になれば、リスクプレミアムを引き下げての投資維持が可能であり、資産価格は上昇し得る。この利上げを打ち消したアニマルスピリットの高まりこそが、利上げの下でも資産価格上昇を維持し、総需要を支え続けた主因であった。
もし利上げをしていなければ、資産価格上昇と景気過熱により、インフレは大きく高進していたはずである。人々が強気化したことは株式リスクプレミアムが急低下した(=バリュエーションが大きく高まった)ことに如実に表れている(図表4参照)。上述の実質FF金利と株式リスクプレミアムの間に密接な相関があることが、うかがわれよう。
ここにきて人々が強気バイアスを強めてきた要因として、(1)AI・ネット産業革命(イノベーションと利益向上)、(2)株式資本主義の好循環、(3)財政による需要創造、(4)グローバル経済の内在化(対外債務による米国経済の強化、ドル高の恩恵)、の4点が指摘される。こうした構造的要因による人々の自信の高まりは、1995年当時と共通している面が大きいと思われる。当時と同様に、米国は潜在成長率を高め長期株価上昇の条件を形成しているようにも見えてくる。
(つづく)
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