2024年11月18日( 月 )

うきはテロワールと悠久の古代史(2)

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前うきは市長 髙木典雄 氏

 ここで、学術的調査の結果を基にうきは市の大地が、いかに農作物の生産に適した地理的特性を有しているかを、とくに代表的なものとして地形、気温、土壌、風、水、雨、地理について、うきは市の恵まれた7大自然要素としてご紹介いたします。

(1)    地形(複合扇状地)

筑後川と耳納連山 イメージ    うきは市から久留米市にかけて23kmにおよぶ耳納連山が連なっており、耳納連山の山筋、麓にはいくつもの渓流が流れ、それぞれ扇状地を形成して緩やかな地形が広がっています。この扇状地は渓流と渓流の間隔が短く、山麓部の幾筋もの渓流から何度も繰り返し溜まった土砂が重なり合っており、複合扇状地という珍しい地形になっています。これは400万年以上かけてつくり上げられた複合扇状地で、非常に複雑な地層、地質になっていて、結果としてフルーツを生産するのに適した水はけの良さと保水力を有していることが分かりました。国内にはほかに富山湾に面したところに10kmに満たない複合扇状地があるとお聞きしていますが、これだけの規模の複合扇状地はほかにないとのことです。なお、フランスのボルドーやアルザスにおけるワイナリーの分布は山麓部に集中し、山麓には複合扇状地が発達しており、うきは地域の地形条件と非常によく似ています。

(2)    気温

逆転層

 例年、10月から11月にかけて放射冷却現象(晴れて風のない夜間に地表から熱が放出されて大気が冷却される。)が現れる時季になると、耳納連山の麓に逆転層といわれる現象がたびたび出現します。

 逆転層とは、気象学用語の1つですが、普通ならば大気は上空に行くに従って、気温が下がっていくのですが、逆に上空に行くほど温度が上がってしまう、大気のなかにできたそういう層を逆転層と呼んでいます。耳納連山の麓一帯が、白くぽうっとかかる霞の逆転層は、何ともいえない景観をつくり出します。

 この時季は、フルーツ王国うきは市の王様格であるフルーツ「柿」が実り豊かになってくるときであり、逆転層はたわわに実りをつけた柿を霜害の被害から守ってくれます。

低温遭遇時間

 フルーツは収穫を終えると「休眠」と呼ばれる状態に入ります。休眠したフルーツは、一定期間低温に晒されることで、眠りから覚め発芽の準備を始めます。これを「休眠打破」と言います。休眠打破は、秋から冬にかけて一定期間、低温に晒されることが重要なポイントとなります。つまり、寒さにさらされないと、平常な発芽ができないことになります。

 一定の低温遭遇時間が確保できないことにより、発芽不良に陥ってしまうことを「眠り病」と言います。

 発芽不良に陥らないためには、7.2℃以下の低温遭遇時間が、ブドウの場合は600時間、柿・梨の場合は、700時間、桃については1,200時間必要とされます。地球温暖化が進むなか、とっても大きな問題でありますが、幸いうきは市においては、約1,800時間の低温遭遇時間が確保されています。

日較差

 夜に温度が下がると、より多くの糖分を実に送ることができます。つまり朝夕の寒暖差があると、実のしまりと味の深みが増し、とっても甘い果物になると言われています。

 うきは市は、気象庁のデータによると年平均気温が約16℃程度で比較的温暖な中、朝夕の寒暖差つまり日較差は、10.9℃と他地域と比較して多くなっております。そのことからフルーツが引き締まり、味に深みが出て、その甘さやみずみずしさは格別なものになっています。 

(3)    土壌

 耳納連山の麓、山麓部には国内でも珍しい複合扇状地が形成されていることを説明しましたが、平坦地においても、筑後川や周辺の丘陵地から流れる河川の沖積作用により、数々の扇状地が形成されており、長い年月をかけて肥えた土壌に育っています。

 扇状地は、水を通しやすい地層となっており、深部の根まで呼吸が容易なため、農作物の育成に大変適しています。

 広い平野は、先人の偉業や弛まぬ営みにより豊かな水田地帯となっています。

(4)    風

 耳納連山の北側に位置するうきは市は、最大風速が小さく風の影響が少ない日本有数の微風地帯です。

 とくに、午前中は微風が顕著なため、かねてからパラグライダーをはじめとするスカイスポーツが盛んに行われています。耳納連山から飛び立ち、筑後川の河川敷に降りる光景をご覧になられた方も多いのではないかと思います。スカイスポーツは微風地帯であることが必須条件となっていますが、九州においては、うきは市の他は宮崎県都城市にあります金御岳(かねみたける)の2カ所のみが、数少ない適地だとうかがっています。

 気象庁のデータによると、うきは市の平均風速が平年値で1.0m/sと他地域より大変小さくなっています。微風であることはフルーツを育てるうえで、過度な蒸散を防ぎ光合成を促進することで、果実の肥大成長につながります。さらに、風が強いとフルーツの樹木の枝が果実にあたり傷つけることになりますが、その心配も少なくなります。

 また、耳納連山に守られ、台風被害が周辺地域よりも少ないことも立証されており、フルーツ生産に適しているところです。

(つづく)


<プロフィール>
髙木典雄
(たかき・のりお)
1951年8月、福岡県浮羽郡浮羽町(現・うきは市)出身。74年、福岡大学商学部2部を卒業。70年に建設省九州地方建設局(現・国土交通省九州地方整備局)に入省。94年から98年まで、建設省九州地方建設局から浮羽町助役に出向。その後、福岡国道事務所副所長や九州地方整備局調査官、九州地方整備局総括調整官などを歴任後、2012年3月に国土交通省を退職。12年7月にうきは市長に初当選し3期務めた。

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法人名

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