2024年11月19日( 火 )

トランプ大統領の2025年、バブルへGO(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は11月13日発刊の第368号「トランプ大統領の2025年、バブルへGO~米国資本主義は進化し続けている~」を紹介する。

(4)トランプ政権下の米国経済の課題とリスク

 今日の米国の最優先の経済課題は、新規雇用の創造である。新産業革命が生産性の向上と供給力増大をもたらす一方、労働力への需要を減少させるからである。AI革命で企業の利益が増加し貯蓄が蓄積されている(図表6)。企業の内部資金(純利益+減価償却費)は、1960年代から1990年代まで、GDPの10~12%で推移していた。それが、最近では14~16%で推移するようになっている。この企業の増加した余剰資金をどう再分配し新規需要と雇用につなげるか。(1)政府による所得再配分と需要創造、(2)株式市場による所得還流と需要創造、(3)労働分配率の引き上げ、という3つのチャンネルが考えられる。

図表6 潤沢化する米国企業の内部資金(純利益+償却費)対GDP

図表6 潤沢化する米国企業の内部資金(純利益+償却費)対GDP

 そこで展開されているものが、高圧経済政策である。高めの需要圧力を維持しタイトな労働需給を保つことで雇用と賃金を引き上げ、家計所得を確保しなければならない。そのためには拡張的財政政策、株価・住宅価格などの資産価格の上昇、強いドルによる有利な交易条件の維持が必要である。トランプ氏の経済政策は、そのような目的に沿うものとなるだろう。

 リスクは金利の急騰が成長と株高を頓挫させることであろう。経済の過熱はインフレやバブルにつながり、長期金利の高騰という市場の反乱に結び付く。それは利払い費の増加というかたちで、財政の需要創造力を奪う。金融政策運営に慎重さが求められる。

 ただ米国長期金利がなかなか上がらないという、good newsがある。(1)大幅な利上げ、(2)QT(量的引き締め)、(3)財政赤字大幅増、(4)対外収支の大幅な赤字、等のマイナス山積にもかかわらず米国の長期金利は5%という固い天井が破られていない。第一の理由は国内投資家による国債投資が旺盛なことがある。図表7に見るように、これまでの買い手であったFRBと海外勢が売りに回るなかで、国内民間の投資が急増している。企業の貯蓄の増加に加えて、資産価格の大幅な上昇によって潤った資金の一部が高金利となった米国債にシフトしている。第二の理由は、FRBに対する信認、米ドル信認が維持されていることである。パンデミックとその後の利上げを経済後退をほとんど招くことなく乗り切ったFRBの手腕は、市場に安心感をもたらしている。またBRICSの台頭、人民元決済比率の高まりなどにもかかわらず、金融市場においてはドルと米中銀に対する信認は厚い。FRBの失策がない限り、近い将来の米金利急騰は回避できるだろう。図表7米国国債主体別保有比率

(了)

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