2024年12月23日( 月 )

斎藤兵庫県知事、立花党首と共犯で公選法違反なら失職の可能性も

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 兵庫県知事選の投開票日である11月17日午後10時半、当確後の挨拶やテレビ取材などを終えた後、囲み取材なしで選挙事務所から立ち去ろうとする斎藤元彦知事(当時は候補)に向かって私は大声を張り上げた。
「斎藤さん、インチキ選挙ではないか。(知事選候補の「NHKから国民を守る会」党首)立花さんが応援して2倍の選挙運動ができたでしょう。インチキ選挙ではないか。インチキ選挙をやって恥ずかしくないか。立花さんの応援で他の候補の2倍の応援(選挙活動)をしたでしょう。公選法違反ではないか。ペテン選挙をやって恥ずかしくないのか」

    しかし、斎藤氏はこちらに視線を一瞬向けただけで一言も答えず、「斎藤!斎藤!」と叫び続ける聴衆のなかに分け入って行った。明らかな公職選挙法違反がまかり通ったのに、それに疑問を抱く支援者は皆無に等しかったようなのだ。

 思考停止状態に近いのは大メディアも同じだった。翌18日、神戸新聞や五大全国紙に目を通したが、自身の当選を目指さずに斎藤氏の支援をした立花孝志候補の公選法違反の疑いを指摘する記事はなかった。今回の県知事選を「ネット選挙(世論)の勝利」などと評する人がいるが、「チェック機能喪失のメディアの敗北」というのが実態だ。

    日刊ゲンダイは11月16日に「『当選目指さない候補』公選法はアリなのか」と銘打って、不公平な選挙戦がまかり通っていることを紹介した。
「斎藤候補に追い風を吹かせているのは、無所属で立つ『NHKから国民を守る会』の立花孝志氏(57)だ。『社会正義を通すため』の立候補で、当選は目指さないと公言。斎藤失速の要因となったパワハラ問題をめぐり『デマだ』と擁護するなど、斎藤支持拡大をアシストしている。
 こうした動きに、有志の会(県内29市長でつくる市長会の有志22人)のある市長はこう疑問を呈した。

「知事選にあたっては300万円の供託金が必要。候補者1人あたりの選挙カーや配布ビラの数なども、公選法で定められている。他候補の当選を後押しするための立候補がOKなら、カネと人を用意できる陣営が有利になる。選挙が歪められてしまうのではないか」

 公選法に抵触するのか、しないのか。県選挙管理委員会の回答はこうだった。

「公選法は、立候補者が当選を目指さないという事態を想定していません」

 公選法が候補者1人あたりの選挙カーや配布ビラの数などを定めているのは、資金力に勝る陣営がビラを大量配布するなどの不公平な選挙戦になることを防ぐためだ。しかし、今回の県知事選では、自身の当選を目指さない立花氏が斎藤氏を支援、“斎藤・立花連合軍”が他陣営の2倍の選挙活動ができるという公選法違反状態と化していた。投開票日に斎藤氏に向かって「立花さんが応援して2倍の選挙運動ができたでしょう。インチキ選挙ではないか」と叫んだのはこのためだ。

 このことについて総務省に確認してネット上で解説したのが、立憲民主党の小西洋之参院議員だ。11月19日のX(旧・ツイッター)で以下のような発信をしたが、ここで候補者Aが斎藤氏、候補者Bが立花氏に置き換えられると、今回の県知事選の無法状態ぶりが良く分かる。

「【総務省への確認】一般論として候補者Bが候補者Aの当選のために街宣車、拡声器、選挙ビラ、政見放送などを使用することは数量制限等に違反し公選法の犯罪となる。当選者AがBと共犯関係にあればAは失職し公民権停止となる。例えばAとBが同じ場所で演説会を連続開催する場合も犯罪は成立し得る。

■公選法抜粋 (自動車、船舶及び拡声機の使用) 第百四十一条 次の各号に掲げる選挙においては、主として選挙運動のために使用される自動車又は拡声機は、公職の候補者一人について当該各号に定めるもののほかは、使用することができない。
一 地方公共団体の長の選挙 自動車一台又は拡声機一そろい 

【解説】 BがAの当選のために自身の街宣車を使用することは「公職の候補者一人について、自動車一台」の制限を破ることになる。また、AがBのこの犯罪と共犯関係にあることが裁判で確定し罰金以上の罪となれば、Aは失職し公民権停止となる。
(中略)
※ 以上と同様の論理で、選挙ビラ、政見放送などもBに犯罪が成立し、Aが共犯であれば共に(Aは失職の上で)公民権停止となる」

 立花氏は政見放送でも斎藤氏を擁護する内容を話しており、“斎藤・立花連合軍”は他候補の2倍の政見放送時間を与えられていたに等しいのだ。

 ボートレースに例えれば、一隻だけエンジンを二台搭載可能の特別扱い。サッカーなら“斎藤・立花連合軍”だけが22人で他チームは11人という不公平状態。少し考えれば、誰でも分かるルール違反がまかり通った戦いだったのだ。

 他陣営の倍の選挙活動ができたのだから斎藤氏の勝利は当たり前。立花氏に公選法違反をしてもらって再選されたと言っても過言ではない。今回の選挙結果は歪められた民意の反映であり、斎藤氏は知事としての正当性を欠くのは明らかだ。

 「こんな不公平な選挙が許されれば、日本の選挙制度、民主主義は破壊される」といった危機感がどこまで広がり、「“インチキ選挙”で再選された斎藤氏は辞職、再び出直しに臨むべきだ」という声が高まっていくのかどうか。そして、「法律違反が横行しても勝てば官軍」という考えにみえる斎藤知事に対して、県議たちが再び不信任決議案を提出するなど反転攻勢に出るのか、それとも沈黙してしまうのかが注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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