先端ロボット技術による「ユニバーサル未来社会」の実現!(後)
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千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田 貴之 氏
グーグルが建築業界をイノベーション?
古田 このことから、グーグルは、ロボット技術を社会インフラとか街とかあらゆる分野に実装し、組み換え可能な建物、住居、都市までつくろうとしていることがわかります。レゴ化することによって、「映画館を止めて飲食店にしよう、飲食店を止めてエステにしよう、エステをやめて図書館にしよう」とか、異業種間のオフィス切り替えも容易に可能になるわけです。その都市には、自動操縦のグーグルカーが走り、街中には各種サービスロボットが溢れています。
言い方を変えると、グーグルは建築業界をイノベーションしようとしているのではないかとも思えます。ゼネコン、建築業界では、大きなお金が動きますので、その点に狙いをつけているのかもしれません。
ディズニーとロボットに関するニュースの件ですが、これはそんなに驚くべきことではありません。ロボット屋をしていると、日本だけでなく世界のテーマパークからさまざまなお話をいただきます。人間にとっては、テーマパークのようなエンターテインメントビジネスは重労働ですし、人手不足もあり、ロボット化しようと考えるのは当然の流れだからです。
ただし、今まではロボット技術が、十分に人間の代わりをするレベルに至っていなかったのですが、現在ではAIの発達もあり、そのレベルに到達し、人間型ロボットも技術的に安定してきました。費用対効果においても、満足のいく環境が整ってきたことが大きな原因だと思います。人間とロボットの関係は「共存」とは言わない
――これからは、二足歩行ロボットに関わらず、さまざまな種類のロボットと人間が共存していくことになると言われております。それはどのような社会なのでしょうか。
古田 最近は、新聞や雑誌等で「ロボットと共存」という言葉をよく見かけます。しかし、私はこの言葉は好きではありません。人間とロボットの関係は「共存」とは言いません。ロボットは、人間にとって、ただの「ツール」に過ぎません。洗濯機や冷蔵庫や車と人間が「共存」するとは、誰も言わないでしょう。それと同じことです。
したがって、「人間がロボットをどう使いこなすことができるか」がとても重要です。使い方によっては、兵器にもなりますし、また悪いことに使おうとすればそれも可能になります。すべては人間の考え方次第なのです。
私は技術者ですが、技術者が「技術、技術…」と言っているうちは本当にダメです。どんなにすごい機能の携帯電話を手にしても、話したい人がいなければ意味がありません。どんなに性能の良い車が手に入ったとしても、行きたい場所がなければ意味がありません。
技術者はよく目的と手段を逆にしてしまう傾向があります。あくまでも、目的があって、手段(技術)が生きてきます。ロボット技術を使って「何をしたいのか」
――最後になりました。読者にメッセージをいただけますか。
古田 私はロボットの定義を「感じて考えて動く賢い機械」としています。そして、今、私たちはロボット技術を使えば、さまざまことが実現可能になる時代に生きています。私は、先に申し上げましたように、日本が世界に先駆けて迎える「少子高齢化社会」を、このロボット技術でどう乗り切っていくべきかを考えています。読者の皆さんもこのロボット技術を使って「何をしたいのか」を、技術者に適切な表現で伝えてほしいと思います。
「ロボットと共存する未来社会とはどういうものだろう?」と考えることは正しくありません。未来社会をつくるのは技術者ではなく、読者1人ひとりだからです。
私はよく笑い話として申し上げるのですが、高齢化社会の話には必ず「介護」という言葉がついてきます。そして、次には、本人にできるだけ負担のかからないように、「自動でご飯を食べさせる方法を考えましょう」「自動で運動ができる方法を考えましょう」などという話が続きます。これはチャップリンのモダンタイムズの焼き直しの「介護工場」をつくるようなもので、技術者が絶対にやってはいけないことと私は思っています。人は人と触れ合い、コミュニケーションをとって幸せを感じるものです。その実現のために支援は大切なことですが、「介護」される方が受け身になっては絶対にいけません。
今は、2020年の東京オリンピック・パラリンオリンピックという1つの目標があります。日本国内の人はもちろんのこと、海外から来日される方々が、活き活きと日本を体験できる「ユニバーサル未来社会」をロボット技術で実現していくことに、尽力していきたいと思っております。――大きな期待をしております。本日はありがとうございました。
(了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
古田 貴之(ふるた・たかゆき)
工学博士。1968年、東京都生まれ。96年、青山学院大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士後期課程中途退学後、同大学理工学部機械工学科助手。2000年、博士(工学)取得。同年、(独)科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーとしてヒューマノイドロボットの開発に従事。03年6月より千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長。著書「不可能は、可能になる」(PHP研究所)ほか。関連記事
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