2024年12月26日( 木 )

中国の自動車メーカー台頭で世界の自動車業界に激震(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

業績が悪化する欧米の自動車メーカー

 電気自動車(EV)は走行時に二酸化炭素を排出しない。脱炭素社会実現のためガソリン車からEVへのシフトが進み、自動車業界に変動の大波が押し寄せている。そのような状況下、EV市場において中国勢が台頭する一方で、かつて好調だった欧米の自動車メーカーは、販売不振に陥るなど困難な時期を迎えている。

 一時期、世界最大の自動車メーカーであったドイツのフォルクスワーゲンは、ドイツ国内にある6つの自動車関連工場と4つの部品工場のうち、国内の工場3つを閉鎖、さらに賃金10%カットを従業員に提示した。フォルクスワーゲンの業績不振の原因は、中国市場での業績悪化に起因しているようだ。フォルクスワーゲンの今年上半期の中国市場での販売台数は134万台で、3年前に比べると25%以上減少している。一昨年前まで中国で最も売れている自動車はフォルクスワーゲンだったが、首位の座を中国メーカーであるBYDに明け渡している。

 中国市場で販売が減少している海外メーカーはフォルクスワーゲンだけではない。米国の代表的な自動車メーカーの1つであるフォードも、EV部門で大きな損失を計上し、第3四半期の純利益が9億ドルとなり、前年同期の12億ドルに比べて25%も減少したことが明らかになった。

 欧米の自動車メーカーは、中国の不動産バブルがはじけることによって、世界最大の自動車市場である中国市場の需要が落ち込み、業績が悪化している。また、EV市場での中国企業の低価格攻勢に押されて、市場のシェアを落としつつある。さらに高金利による自動車価格の高騰で市場環境が悪化するなど、欧米の自動車メーカーは試練の時期を迎えつつある。

EVシフトで中国自動車メーカーが急浮上

 欧米の自動車メーカーは2000年代初め頃からの約20年間、中国自動車市場の成長の恩恵を受けてきた。ところが、19年にテスラが中国でEV生産を開始したことと、その後のコロナ禍で、中国の自動車市場が激変した。ガソリン車で欧米や日本のメーカーにかなわなかった中国は、EV市場の主導権を握ることを目指して、国を挙げてEVの開発と普及を推し進めてきた。コロナウイルスの感染拡大を受けた中国政府のロックダウン政策で、日欧米の自動車メーカー幹部は中国現地を訪問することが難しくなった。その時期に中国のEVメーカーは技術、生産スピード、サプライチェーン管理など、すべてにおいてイノベーションを起こし、まずは自国市場を占めるようになった。

 現在、中国の自動車メーカーは自国での成功に満足せず、世界市場に目を向けている。その結果、中国の自動車の輸出台数は、前年比で約60%伸び、500万台弱となるなど、急成長している。BYDは世界で302万台の自動車を販売し、前年比で62%の成長を遂げている。国際エネルギー機関(IEA)によると、4年前には中国国内のEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数は110万台に過ぎなかったが、今年は販売台数が1,000万台を上回り、自動車販売全体のほぼ半分を占めるまでになった。

(つづく)

(後)

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