2024年11月26日( 火 )

中国の自動車メーカー台頭で世界の自動車業界に激震(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

価格競争力を武器に市場を拡大させる中国車

 中国メーカーの自動車輸出が急増している。アリックスパートナーズの世界自動車市場レポートによると、中国の自動車メーカーの30年の世界市場シェアは、現在の予想値である21%より高い33%になるだろうと予測されている。

 中国の自動車メーカーの市場シェアが増大することによって、シェアを落とすのは欧米の自動車メーカーになると予測されている。中国の自動車メーカーの中国国内におけるEVの販売価格は、米国や欧州企業の半額以下。低価格を武器に中国の自動車メーカーは、世界のEV市場で存在感を高め、中国は世界最大のEV生産国および販売国となっている。中国自動車の低価格は、中国政府による巨額の補助金によって達成されており、公正な競争をゆがめているとして、欧米各国はその対応策を講じ始めている。米国政府は中国EVに対して関税を25%から100%に上げることを検討している。欧米もEV関税率を10%から最大で45%引き上げようとしている。

中国車優位の要因は

 中国はすでに世界最大のEVの生産国として市場での地位を確立している。その要因として、中国政府の後押しに加え、生産のモジュール化などが挙げられる。中国政府のEV補助金は、米国の5倍に上るという。それに中国では新車開発に20カ月しかかからないのに比べ、欧米の自動車メーカーは、その2倍の40カ月かかり、コスト面で中国企業に太刀打ちできなくなっている。欧米企業より30%も低いコストで生産された中国製EVは、品質がよく、安いので、市場でシェアを占めつつある。

 さらに、自動車産業は大きな変化の波に晒されている。以前の自動車はハードウェア中心の製品であったのに対して、将来の自動車はソフトウェアが中心となる。そのため、ソフトウェアの人材確保が自動車会社にとって死活問題となる。新たに自動車業界に参入してくるGoogleなどに比べ、既存の自動車メーカーは決して有利とは言えない。以前は自動車を修理するために整備工場に出向く必要があったのだが、将来は整備工場に出向く必要はなく、ソフトウェアをアップグレードするだけで解決できることが増えてくる。どちらの車をユーザーが選択するかは自明の理である。

 中国企業には新興企業が多く、技術革新にも積極的で、腰の重い欧米企業とは異なる。また、中国企業の低価格攻勢で、欧米の自動車メーカーは危機に瀕している。自動車産業は規模の経済が働く世界だ。現在の販売数量では利益確保も難しい状況であり、中国企業との競争が経営を圧迫する大きな要因となっている。欧米の自動車会社にとっては、「冬の時代」が到来していると言えるだろう。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事