【BIS論壇No.464】APEC首脳会議
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は11月25日の記事を紹介する。11月はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が南米ペルーの首都リマで、G20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)がブラジル・リオデジャネイロで開催され、世界の主要指導者が南米に集結。活発な首脳外交が行われた。
APEC首脳宣言には「自由で開かれた貿易、投資環境を実現する」と明記。「米国第一」を掲げるトランプ次期政権の発足を25年1月20日に控え、保護主義に対抗する姿勢を強調した。しかしながらトランプ次期政権は、「米国第一主義」を追求。中国との対抗意識を鮮明にし、中国製品に一律60%の高関税をかけ、また日本を含めその他の国の製品にも20%の関税をかけるとしている。そうなるととくに中国は米製品に対し、対抗関税をかけると思われ、貿易戦争が激化し、世界経済は混乱が予想される。このような関税合戦は世界貿易機関(WTO)の立場からも問題であろう。
APEC会議首脳宣言の主なポイントは、「自由で開かれた貿易・投資環境の実現」「ルールに基づく多角的貿易体制の支持」「WTO改革」「女性の経済的地位向上」「食料安全保障のロードマップへの貢献」「多様なエネルギー移行に向けた集中的な取り組み」「次年度以降議長国は、25年韓国、26年中国、27年ベトナム」に決定。3年連続でアジアでAPECが開催されることからアジア、ASEANが脚光を浴びることになる。日本は今回の会合で7年後の2031年のAPEC議長国への立候補を表明したという。
APECは米、日、中、ロなど21の国・地域が参加。GDP合計は世界の約60%を占めるアジア太平洋の有力国の集まりである。
「FTAAP」(アジア太平洋自由貿易圏)構想の実現に向けて新たな作業の実施もうたった。議長声明については「ウクライナと中東情勢を議題にすべきかをめぐり意見の相違があった」と明記されたが、両戦争への対応が声明に盛り込まれなかったことは残念であった。
退任前の最後の国際会議参加となった米バイデン大統領は米国の内向き志向が強まるなか、中国が存在感を強め、26年の議長国となる中国の習近平国家主席は「多国主義と開放型経済を堅持し、安定したサプライチェーン(供給網)の必要性」を説き、存在感を高めた。
中国の広域経済圏構想「一帯一路」の南米への要となるリマ郊外の太平洋側の「チャンカイ港」がAPEC首脳会議を機会に開港され、中国は南米での存在感を強めた。習近平主席はリマの後、ブラジルのリオ・デジャネイロで開催されたG20(主要20カ国・地域首脳会議)にも参加。世界のGDPの85%を占めるG20でグローバルサウスの中国、インドに並ぶ有力国、ブラジルの首都ブラジリアで中国、ブラジル経済、貿易協力について首脳会談を行った。G20については別稿で論じることとしたい。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。関連キーワード
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