長谷部アビスパ、有終の美を飾る 福岡1-0浦和
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サッカーJ1リーグアビスパ福岡は11月30日、ホームのベスト電器スタジアムに浦和レッズを迎えて第37節の試合を行った。今シーズン、ホームで行われる最後の試合である。
アビスパにとっても浦和にとっても、リーグ優勝やACL(アジアチャンピオンズリーグ)出場、J2降格など来シーズンを賭けた試合ではない。サッカーが数字だけのスポーツであれば、消化試合ということもできる一戦だ。
だがこの試合、アビスパに関わる人々とアビスパサポーターにとっては、これまで5シーズンにわたってアビスパを率いてきた長谷部茂利監督と迎える最後のホームゲームである。
試合後の記者会見で、長谷部監督自身が「これまでとは違う雰囲気で、選手たちより私が緊張していました」と語ったように、この日、ベスト電器スタジアムは普段とは違う雰囲気に満ちていた。試合前のウォーミングアップで姿を現した長谷部監督に対し、ゴール裏を埋め尽くしたサポーターたちからは万感の思いを込めたチャントが送られる。それを聞いた長谷部監督は、いつにも増して深々と、何度もお辞儀をして応えていた。
この日の相手である浦和レッズは、昨年のルヴァンカップ決勝で対戦した思い出深いチーム。国立競技場をアビスパサポーターの歓喜が埋め尽くした1年前のあの日さながらに、試合はアビスパのペースで進んだ。
そして勝利につながるゴールを決めたのも、アビスパの躍進をけん引したMF紺野和也だった。38分、相手DFが前方に送ったボールを奪ったMF重見柾斗が、浦和MF渡邊凌磨のスライディングを蹴散らしてドリブル。右サイドから中央に入ってきたMF紺野にボールを送ると、紺野はペナルティエリア外側、中央やや左側から左脚を一閃。強烈なカーブがかかった正確なシュートは、浦和GK牲川歩見の必死のダイビングをすり抜けるようにゴール右隅に吸い込まれた。
ゴールを決めた紺野は、まっすぐにアビスパベンチに駆け寄ると、長谷部監督に抱きついた。前所属のFC東京時代は3年間で33試合出場3ゴールだった紺野だが、アビスパ移籍後は23年に5ゴール、そして今季は6ゴールと大ブレイク。長谷部監督が見出し、ポジションのコンバートを経て才能を開花させた「長谷部チルドレン」の代表格だ。
後半56分には、FWナッシム・ベン・カリファが交代出場。今シーズン期待の新戦力として加入したが、度重なる負傷やコンディション不良のためここまで出場なし。ついにベールを脱いだかたちになるが、ピッチ上では巧みなボールコントロールや切れ味鋭いパス、チャンスを見逃さないシュートなど高い能力を披露。来シーズンに向けて期待が高まった。
試合はこのまま1対0で終了。集中力の高い守備で浦和の攻撃をしのぎ切り、無失点でホーム最終戦を飾った。
試合後には、最終戦セレモニーが行われた。川森敬史代表取締役会長、結城耕造代表取締役社長、選手代表として奈良竜樹キャプテンの挨拶に続き、長谷部監督がマイクの前に立った。
「私は12月9日(アビスパ福岡との契約満了日)から、皆さんと一緒になります。アビスパサポーター、アビスパファンの一員になります。よろしくお願いします。
身体と仕事は違う場所に行きますが、心と気持ちはここに、ベススタに残っています。いつもみんなを見ています」そして「ベススタを満員にして、アビスパの選手たちを後押ししてほしい。それができれば、天皇杯の優勝であったり、ACLへの出場であったり、皆さんが望んでいることがかなうと思います」と、長谷部監督からアビスパの未来へ向けたあたたかい提言も贈られた。
サッカーの世界において出会いと別れは避けられない。どんな監督とも、どんな選手とも、いつか必ず別れの日が来る。だが、これほど心を打つ別れ際が、これまであっただろうか。
来シーズンは、どんな監督に率いられ、そしてどんな選手たちとともに、アビスパは戦うのだろうか。来年30周年を迎えるアビスパの歴史のなかで、長谷部監督と歩んだ5年間は決して消えることがない輝きを放っている。この黄金時代をいつまでも忘れず、そしていつかさらに輝かしい未来に到達することこそ、長谷部監督への最大の恩返しといえるだろう。
長谷部茂利監督、本当にありがとうございました。
【深水央】
法人名
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