【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略(6)企業価値向上に不可欠な『人的資本経営』の考え方
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はじめに
第5回まで、企業価値向上について『ROIC経営』の視点からお話をしてきました。今回からは、最近よく耳にする『人的資本経営』という考え方が、企業価値向上にどう結びついているのかについて話を進めます。
『人的資本経営』の意義と注目される背景
経済産業省は、『人的資本経営』を「人材を資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方」と定義しています。ただ、この定義だけですべてを理解することは難しいと思います。ここでのポイントは、人への投資を単に労働の対価という視点だけで捉えるのではなく、“企業価値を生み出すための先行投資”と捉えることにあります。つまり、労働に見合った対価として給料を支払っていればよいと考えるのではなく、個々人のスキルや知識、経験を資産として活用し、業績の向上を図ることが企業の競争力強化につながると考えるのです。
昨今のビジネス環境の激変や働き方の多様化などにより、企業経営はこれまでに経験したことのないスピードで変革を迫られています。今後さらに人口減少が進む日本では、従業員1人ひとりの付加価値を高めていくことが急務となります。それゆえ個々の企業においては、自社のビジョンや経営戦略を踏まえたうえでの人の生かし方を長期的な視点で考えていけるかどうかが持続的な成長の一番の要因と言っても過言ではありません。
「人への投資」の重要性
日本企業は、過去30年もの長い間、デフレ経済下でコストカットを優先して人件費(教育訓練費を含む)を抑制し、非正規社員の割合を高めてきた結果、日本の人的資本投資はOECD加盟国と比べると明らかに低い水準になっています。そして、それが結果として労働生産性や賃金の低迷につながるという悪循環が続いてきました。ただ、ここにきてようやく日本経済にも脱デフレの潮流が見られるようになり、人への投資を拡大させる転機を迎えているといえます。
「人への投資」が、自社の経営戦略に沿った適切な投資となるには、短期的には収益の押し下げ要因となる「人への投資」がどの程度のリターンをもたらすのかを判断する材料が必要になるため、「人への投資」が企業価値の向上につながるストーリーを明確にし、そのストーリーに即したKGI(ゴール目標)、KPI(プロセス指標)を設定することが重要となります。要は、「人への投資」を企業の成長や競争力の向上につながる「未来の収益源」として捉え、中長期的な視点で自社の戦略を考える必要があります。
「人への投資」の実効性確保
「人への投資」の効果を高めるためには、初めに自社が人材に求めるニーズと従業員のスキルの整合性確保が必要になります。近年、企業の人材戦略のなかで、リスキリングへの取り組みが重要性を増しているのも、技術革新やビジネスモデルの変化への対応が求められているからにほかなりません。リスキリングに取り組む企業は、定義の設定から始め、社内への周知やコンテンツの提供を行い、習得したスキルを実務で実践してもらうことで、初めて「人への投資」の実効性が確保されます。
まとめ
今回は、人的資本経営について、とくに「人への投資」の観点からお話をしてきました。次回は、この考え方に沿って、実際に企業が何にどう取り組めば企業価値の向上につながるかを具体的なストーリー展開なども交えてお話する予定です。
<INFORMATION>
(株)コンシャスマネジメント
所在地:福岡市中央区天神1-4-1
西日本新聞会館16階
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TEL:092-736-7528
<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立法人名
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