2024年12月16日( 月 )

【ライバル比較(5)】由緒ある名門・大神家の歴史

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 近代・福岡の歴史に名をのこす名門として太田家と渡邉家が広く知られているが、大神家も両家に対抗できるほどの存在感があった。

 大神家の歴史は江戸時代にまで遡ることができる。なお、現在も大神家の末裔が、福岡市中央区など、各地で不動産業を営んでいる。福岡市中央区春吉にある大神土地(株)もその1つで、近隣の渡辺通や博多区住吉などに賃貸マンション・ビル物件を所有している。またサニー博多住吉店やロイヤルホスト住吉店などの商業施設も同社が管理しており、いずれも博多や天神からのアクセスが良好な立地だ。

 こうしたことからも大神家が博多区住吉を中心に地盤を固めていたことがわかる。大神家は2001年12月に自己破産を申請した(株)祥雲を率いていた。同社が所有した美野島(住吉の隣)の土地は、結婚式場を経て現在はJR九州の分譲マンション「MJR」が建設中である。

『I・B』No.698(2002年1月14日)
『I・B』No.698(2002年1月14日)

 では、大神家に太田家や渡邉家のような名士がいたのか。直接の関係性は定かではないものの、大正末期から戦後にかけて実業家や政治家を務めた大神善吉氏は、大神家の流れをくむ人物だと考えられる。

 1896年、福岡市中小路(現・博多区上呉服町)に生まれた善吉氏は苦学の末、中央大学を卒業し、品川区会議員などを歴任。兄の死去にともない、当時の筑紫郡春日村(現・春日市)に戻って兄が営んでいた建設業を継承、戦争真っただなかの1944年には春日村長を務めている。47年4月の衆議院議員選挙では福岡県第1区から無所属で出馬して当選、社会革新党(後の日本社会党)に所属し、1期務めた。

 大神家の歴史を紐解いていくと、福岡市南区の桧原にたどり着いた。桧原には大神姓の表札を掲げた大きな邸宅があり、周辺には大神の名がついたビルなどもある。

 桜の名所として知られる桧原桜の近くに、「将軍地蔵尊」(以下、地蔵尊)という小さな神社があり、地蔵尊の碑には「大神家族一同」と記されている。将軍地蔵尊の由来には諸説あるが、中世に火事や雷よけ、子どもの守護を願って建立された地蔵尊だとされ、兜と鎧をまとい、金属の環がついた錫杖と願望成就の宝珠をもっている。

 大神氏は桧原周辺に広大な土地を所有しており、地域のお守りとして建立したものではないかと考えられる。大神家が地域に根を張って暮らしていたという証であろう。

 大神という名の企業や建物が福岡市内各地に多数存在することからも分かるように、大神家は現在に至るまで地域に根差しており、太田・渡邉両家にも劣らぬ家系であることがわかる。

 当シリーズでは、その両家のライバル論を掲載している。両家のルーツは江戸時代にまでさかのぼることができる、博多・福岡の中心部での商売に徹しており、当初、渡邉家は呉服商、太田家は油屋を営んでいた。一方、平成初頭に急速に力を付けた大神家は中心部から外れた場所におり、江戸時代は黒田藩から庄屋を命じられていたという。

 庄屋から事業拡大に成功し、いまや「あごだし」をはじめとした大ヒット商品を連発している企業がある。久原本家だ。基盤は糟屋郡久山町で、黒田藩から3番目に広い領地の管理を委託されて明治時代に醤油醸造業をスタートさせた。なお、伊豆美沙子宗像市長の実家も庄屋として領地の管理を委託され、酒造業を営んでいたという。

 糸島においては、是松家が庄屋を仰せつかっており、本家は明治時代に主力を東京に移している。是松家については年が明けてから掲載する予定だ。乞うご期待!

【青木義彦、近藤将勝】

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