地域に根差した国際派代議士・緒方林太郎氏に聞く(後)
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衆院選では福岡県内11選挙区のうち7選挙区で自民党が勝利したが、大都市圏である北九州市の選挙区(9区・10区)では、野党系の現職が勝利。福岡9区(八幡西区など)では緒方林太郎氏が4期目の当選をはたした。前編では、元外務省職員である緒方氏に、国際情勢を踏まえて日本の進むべき道についてうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)組織型でないからこそ得た地域の信頼
──今回、自民も立憲も公認がいないなかで圧勝しましたが、その要因はどのあたりにあるとお考えでしょうか。
緒方林太郎氏(以下、緒方) 今回、有権者の皆さまから10万2,885票をいただくことができました。ただ、初当選(2009年)の得票数は12万2,815票でしたので、票数では初当選のほうが多かったのです。当時は選挙区内の人口が現在よりもっと多く、投票率も高かったことがあります。正直に申し上げて、今回、10万を超える票をいただけるとは予想していませんでしたが、3期までの取り組みに対する「通知表」であると受け止めております。
選挙についての捉え方は毎回ごとにあるのですが、6回の選挙を戦って思うのは、「地元(福岡9区)から、地域の代表として国政に行ってこい」という信頼感を得たものだと思います。前回(2021年)は、団体からいただいた推薦状は1枚だけでした。こちらから推薦依頼状を出したものではなく、ある業界団体の事務局長をされている方から「推薦決定書を送ったから、関係先を回るといいよ」とご厚意でいただいたものでした。
前回に比べると、今回、こちらから推薦をお願いした団体はありましたが、いただいた推薦決定書は、5、6枚です。組織型の選挙ではありませんでしたが、組織依存でないからこそ地域の信頼をいただいたというのが私の実感です。
──八幡西・東区と若松区が選挙区ですが、10万という票はどこから得られたものと思いますか。
緒方 地域での認知度は、選挙ごとに上がったように思います。組織型の選挙ではないと申し上げましたが、連合福岡傘下のいくつかの組織からはご推薦をいただきました。この3年間、地元活動ばかりでなく国会で政策課題に取り組み、与党ではありませんので、問題点を指摘して物事を変えさせることができたという自負心をもっております。
国会会期中は月曜の夜に上京しますが、最終便に近い便で向かいます。火曜から金曜まで国会で、金曜の夕方にまた地元に戻り、土日月は地元活動という日常となります。
少数与党の弊害と求められる政界再編
──選挙後、他党からの誘いはあったのでしょうか。
緒方 10月の選挙で自公が少数与党となり、国会の状況が一変しました。具体名は出しませんが、いろいろなところから電話がかかってきました。現在、私は、大分の吉良州司議員らと「有志の会」という会派で活動していますが、一本釣りするような動きがあったため、会派4人で行動を共にすると決めているので、窓口を一本化してほしいとアプローチしてこられた方々に申し上げました。
──自民党のなかで右派、保守派ともいわれる議員はどのくらいいるのでしょうか。
緒方 自民党内で、2割から3割くらいはいるように思います。それは安倍晋三元首相が保守的な傾向が強く、党内でそうした立場を取ったほうが有利との考えがあるように思います。
一方で、保守とされる界隈で少しでもそこから外れた動きをすると、激しいバッシングを受けます。保守議員として知られる稲田朋美さんは、歴史認識などで保守色の強い発言をしていました。しかし、防衛大臣の際に、PKO派遣部隊の日報不開示問題などで大臣を辞任したことなどがあり、正気に返ったのか、夫婦別姓に賛成したことで保守界隈から攻撃を受けています。
自民党総裁選に立候補した小林鷹之さんは、比較的保守的なポジション取りをしているようにみえますが、100%思想を信じているのかどうか、小林さんから反論をいただくかもしれませんが懐疑的にみています。
──今後の政局、政治動向はどのように動いていくとみていますか。
緒方 立憲民主党は野田佳彦氏が代表ですが、野田さんを中心とする中道保守グループといわゆる左派とされる人たちは水と油で、相容れるところがありません。自民党はどうなのかというと、石破茂首相よりもリベラルな位置にいるのは、岩屋毅外務大臣などだと思います。自民でも、リベラル系と右派の人たちは、別の政党といってよいほど考え方に隔たりがあります。
立憲の中道から左派の人たちと、それ以外の左寄りの人たち、中道的な人たち、自民党の保守的な人たちがいます。そういう構図をもう一度再編すべきではないかと主張しているのが、橋下徹さんです。今、政界は「こういう動きをしたら、こうなる」という展開について、視界不良な状況にあります。やはり、橋下さんが言うように、政界の構図をもう一度整理する必要があるように思います。
おそらく臨時国会でも年明けの通常国会でも、与党は野党から揺さぶられると思います。少数与党での政治は不安定で、長期化させてはいけないと私は思います。それは自民党に助け舟を出すということではなく、ふらふらと政治が安定しないことは、国の弱体化につながりますし、外交・防衛において他国から揺さぶられることにもなります。外国から足元を見られたら、まともな外交はできません。世界的にみると、フランスは少数与党が政権を運営しています。日本も、一党政権ではなく連立政権が常態化していくことを受け入れる必要があります。
問題は、内外から足元を見られて、結果として醜悪なものが出てくることです。強くない与党で編成する予算が出てくることは、来年度の当初予算まではやむをえませんが、それ以降は絶対にやめさせたいと思います。
(了)
【近藤将勝】
企業調査会社(株)データ・マックスが手がける経営情報誌『I・B』やニュースサイト「NetIB-News」は、信頼性の高い情報ソースとして多くの経営者にご活用いただいています。メディアとしてさまざまな情報を取り扱っており、国内外や地元福岡の政治動向に関する情報は経営者以外にも自治体組長や国会議員、地方議員などに幅広く読まれています。
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