2025年、日本株は米株独り勝ちの代替たり得るか(1)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は12月20日発刊の第369号「2025年、日本株は米株独り勝ちの代替たり得るか~米国とともに株式資本主義の道を歩む~」を紹介する。今我々は空前のAI革命、既存の世界秩序の無能化、と言う2つの歴史的現実に直面している。トランプ・マスク氏はこの閉塞感ある時代に、大変革を打ち出そうと身構えている。その変革の理念とは、筆者流に解釈すれば、「資本主義が正義、資本主義なき民主主義は虚構」と言うものである。2025年とはそのような変革の時代の幕開けの年となるだろう。その下で米国株式はバブルと見られるほどの株高に向けて跳ね上がるだろう。日本株は米国株とともに最も安心感のある投資対象として、世界の注目を集めるだろう。米国株式バブルへGO、日本株長期上昇波継続、日米金利は高止まり、ドル指数強含み、ドル円はレンジの動きとなるだろう。
(1) 明白な米国優位・・・2025年、何故米国でバブル的株価上昇が期待できるのか
トランプ氏勝利の経済政策的意義
AI革命は劇的な生産性の向上により企業部門(特にマグニフィセント7などの巨大ハイテク企業)に著しい超過利潤=過剰貯蓄を与える一方、労働者への分配が滞り、格差を拡大させるという問題を引き起こした。この企業部門に蓄積されている超過利潤をいかに経済システムに還流させ、成長(=新規需要と雇用創造)につなげるかが、米国経済が直面する最重要の課題である。図表1に見るように、企業の内部資金(純利益+減価償却費)は、1960年代から1990年代まで、GDPの10~12%で推移していた。それが、最近では14~16%で推移するようになっている。他方企業の設備投資は長期にわたってGDP比10%程度で推移しており、企業部門の資金余剰が顕著になっている。この企業余剰をどう再分配し新規需要と雇用につなげるのか。
その経路としては、(1)政府による企業・富裕者増税と社会的弱者に対する財政支援、(2)株式・資本市場を通した企業の利益還元、(3)強制的賃金引き上げ、労働分配率引き上げ、の3つが考えられ、(1)、(3)は政府による介入、(2)は市場経済を通した再配分と整理できる。先の米国大統領選挙での明確な論点は、ハリス・民主党の「大きな政府・弱者優遇論による増税路線」と、トランプ・共和党の「小さな政府・アントレプレーナー支援論に基づく減税路線」の対立であり、まさにこの核心を巡っての国民選択を問うものであった。そしてトランプ・共和党の勝利により米国の方向性は定まった。
図表1に見るように、これまでのところ企業による配当の増加、企業による自社株買いなどの株主還元が著しく高まり、潤沢な企業貯蓄は経済システムに還流してきた。この株主に対する還元の高さが米国の株高を支えてきたが、トランプ政策はそれを一段と強めるものとなる。規制緩和の中心が金融部門に集中しており、トランプトレードの中心が金融株であったことは、それを如実に物語る。またトランプ氏はイーロン・マスク氏を政府効率化省DOGE(Department of Government Efficiency)トップに指名し行政の効率化と予算削減を行うが、それも小さな政府路線の帰結と言える。
トランプ・マスク氏が始める「資本主義再建」革命
格差・分断と言う現実はほかの国では容易に反資本主義・反市場経済、社会主義礼賛につながるが、米国ではむしろ市場と資本主義を強化する路線に収斂したことは、注目に値する。このように整理すると、トランプ・マスク氏の経済革命は左右両極が非難する新自由主義どころか、もっと激しい究極の自由主義(=リバタリアニズム)であり、大きな思想革命をともなっていることに気づかされる。それは市場と資本主義に対する強い信頼に起因している。AI革命はコストの透明性を大きく高め、市場機能を効率化した。いわば「神の見えざる手」を著しく強化した。それがトランプ・マスク流の究極のリバタリアニズムを可能にしている。
2025年米国はバブルへGO
株式市場に目を転ずると、現在は1995年に多くの点で類似している。1995年は1996年12月の根拠なき熱狂(グリーンスパン議長)を経て、2000年のITバブルに向かう上昇相場の起点であった。類似点とは、(1) 利上げ終了後に高い実質金利が維持されたこと、(2) 長期金利も抑制されイールドカーブフラット化が長期化したこと、(3) ドル高が続いたこと、(4) 技術革新(当時はインターネット革命、今はAI革命)の進行が旺盛な投資をけん引したこと、などである。
現在米国株式はPER23倍、益回りは4.3%と10年国債利回りとほぼ同水準になっており、決して割安とは言えない。またFRBはインフレと株式のバブル化を警戒し、2025年の利下げ幅を抑えようとしている。この姿勢はかえって長期金利の頭を抑えるので、1995年以降と同様に、イールドカーブのフラット化が長期化することになる。そうした環境の下で、AI革命とトランプ・マスク氏のリバタリアン革命により、人々の強気度は高まっていく。米国株式はバブル色を帯びつつ、騰勢を強めていくと予想される。
(つづく)
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