2025年01月05日( 日 )

2025年、日本株は米株独り勝ちの代替たり得るか(3)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は12月20日発刊の第369号「2025年、日本株は米株独り勝ちの代替たり得るか~米国とともに株式資本主義の道を歩む~」を紹介する。

日本株持たざるリスク

 すべての投資主体が日本株をもたざるリスクを真剣に考えざるを得なくなっている。まず最大の買い主体の外国人投資家であるが、外国人は昨年来、世界主要市場で最も値上がりした日本株の比率を高めるどころかほぼすべてを売ってしまい、再度日本株がアンダーウエートになっている。今後は再び買い増す動きが強まると予想される。

図表6 外国人投資家の日本株累積投資ポジション(2023年初以降)

 消極的だった国内投資家は、大幅に日本株を買い増す必要に迫られている。個人投資家はNISA改革が始まり2024年1~6月で10.1兆円が買い付けられた。年間では20兆円、前年比4倍増のペースである。今のところこの大半が海外投信だが、日本株へのシフトが起きるだろう。企業は、PBR1倍以下の是正を求める金融庁、東証の要求に押されて自社株買いに走っている、年間20兆円、前年比倍増ペースが続いている。更に年金など機関投資家はインフレ定着、金利上昇の下でこれまで最大の投資項目であった日本国債投資比率の引き下げを迫られており、株式シフトを余儀なくされている、政府は株式投資で大成功をおさめたGPIFの運用方針を、国公共済(KKR)など公的年金運用の分野を広げていくことを公言し始めた。このようにこれまで鳴りを潜めていた日本株の国内投資家が、数十兆のペースで日本株を買う趨勢となっている。植田ショック、石破ショック後の株価の急回復は、そうした投資家の買い出動が牽引した。国内投資家層に厚みが出てきたことにより、外国人の短期筋に翻弄された市場が安定性を高めていくだろう。

図表7 投資主体別日本株式累積投資額(2010年以降)

日本にM&Aブーム勃発、株水準訂正の推進力に

 1988年のKKRによるRJRナビスコ買収に象徴される米国の買収ブームは、2000年のドットコムバブル形成に向かう株高を準備したが、今の日本に同様の動きが起きている。東証・金融庁によるPBR1倍以下の企業の是正要求、日経新聞「私の履歴書」へのKKR創業者ヘンリー・クラビス氏(30年前は米国でも野蛮人と言われていた)の登場など、日本の政策と企業社会のM&A受容姿勢への変化は驚くばかりである。カナダ企業であるアリマンタシォン・クシュタール(ACT)によるセブン&アイの買収提案は、資本の効率性をないがしろにし、低株価を放置してきた日本の株式市場に大きく活を入れるものになるだろう。日産・ホンダの経営統合も台湾メーカーの鴻海による日産買収意向が伏線となっている。日本は米国が進む株式資本主義に急速にシフトしている。それは海外投資家の日本株買い、企業による自社株買いを通して、日本株のバリエーション革命を推進するだろう。

(3) 何故2024年、4万円で足踏みしたのか、
2025年は足かせを解きほぐせるか

 何故2024年に日経平均株価は4万円寸前で足踏みしたのだろうか。第一は景気実態の低迷、第二は不適切な政策への懸念、で上値を刈り取られた、の2つが決定的であろう。

2024年の失速、円安インフレの被害が家計に集中

 株高により期待で始まった2024年は日本経済の失速で終わった。主因は物価上昇による実質賃金の減少により実質個人消費が2023年1~3月をピークに減少に転じたためである。2024年6月からの定額減税により補填されたものの、その額は3兆円と実質消費減少6兆円の半分に過ぎず、消費水準の低迷からは抜け出せなかった。図表8に見るように実質個人消費支出を振り返ると、過去10年間では、2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月の310兆円がピークで、その後一度もそれを上回っていない。直近の2024年7~9月は前年比小幅プラスに浮上したものの、依然として10年前のピークに比べ4%減の水準にある。

 加えて年初の型式認定不正による自動車減産や中国経済不振による輸出の低迷が、円安によるインバウンドの増加、設備投資の増加などのプラス要素を押し消した。日本の工業基盤が衰弱してしまって円安による生産回復に時間がかかっていること、インフレによる実質所得減のリカバリーに時間がかかっていることなどから、円安のプラス効果発現までのタイムラグが長くなっためである。

(つづく)

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