【高島市長講演】就任から15年、世界から選ばれる高付加価値な都市を目指す
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高島宗一郎福岡市長は23日、ホテルニューオータニ博多(福岡市中央区)で市政報告会を開催。1,000人を超える聴衆に対し、「福岡未来設計図~アジアのリーダー都市を目指して」と題する講演を行った。
再開発が地価と市税収入を押し上げる
講演前半は、天神ビッグバンなどの主にハード面の取り組みについて、後半は今後の福岡市の重点施策について講演した。
講演の冒頭で高島市長は「2024年を振り返って一番うれしかったのは、福岡市動物園に象さんがきてくれたことです」と7月に4頭のアジアゾウをミャンマーから受け入れたことに言及した。ゾウがきたことで、翌週の来園者数が、それまでの1.8倍に増加しており、「多くの子どもたちが喜んでいる姿を見ると本当によかったなと思う」と語った。
福岡市の都市としての活力の高さの要因として、市税収入の増加が挙げられる。高島市長は「経済界の皆さまのお力添えのおかげで、税収の伸び率が政令市で一番高く、就任時からみると約1,000億円伸びている」としたうえで、「福岡市は基礎自治体ですが、固定資産税が非常に大きな独自財源になる」「市中心部の再開発が、後押しをしている期待感から福岡市全体の地価も上昇している」と述べた。
再開発プロジェクトの1つ、天神ビッグバンは、26年までに70棟の竣工が予定され、30年代までには106棟の竣工が予定されている。対象は新天町商店街や水鏡天満宮周辺、福岡中央郵便局周辺となる。また、博多コネクティッドについては、28年までに30棟の竣工が予定されている。
高島市長は、福岡市再開発の契機は「05年の福岡西方沖地震であった」として、地震で窓ガラスが破損するなどした旧福岡ビルの写真を示しつつ、「あれから20年が経ち、福ビルの場所には、ONE FUKUOKA BLDGが今月竣工し、来年4月開業を予定している」と解説した。
責任世代としての役割
一方、福岡市の街並みが一変することについては、市民からさまざまな意見がある。それを踏まえ「こうしたハード整備は、あくまでも手段である」と述べ、「目的は、福岡をより大きな夢が描ける街にする」として「より高付加価値なビジネスが集積できる環境を次世代に渡すためにも、責任世代である私たちが行動することが大事だ」と強調した。
ハード面ばかりでなく、ソフト面の企業誘致に関して「九州経済連合会(九経連)の倉富純男会長や池辺和弘社長(九州電力代表取締役)を中心として、産官学組織・TEAM FUKUOKA(チーム福岡)を発足させ、33社の国際金融機能を福岡市に誘致できた」と語った。
そのなかで、熊本へのTSMC(台湾積体電路製造)の進出により、福岡に台湾から台湾銀行などが進出したことも紹介された。こうした状況を後押しするのが、国から「『金融・資産運用特区』の指定を受けていることだ」とも述べた。
ハード面を中心に「福岡市が羽ばたくベースができた」(高島市長)と講演前半を締めくくり、後半は福岡市が世界から選ばれる都市になるための重点施策について語った。
環境への配慮や歴史・文化を活かしたまちづくり
高島市長は重点施策の1つとして「国が進める『脱炭素などを含む』」という前提を述べたうえで「緑」を挙げた。
福岡市のマスタープラン策定においては、各界各層から意見を聴取したなかで、市内の小中高校生や大学生にも意見を求めた。その際に多かったのが「街に緑を取り入れてほしい」との意見だった。
高島市長は、世界的に都市と緑とが調和している先進的な国としてシンガポールを例に挙げつつ、日本国内においても東京・原宿にある東急プラザ原宿「ハラカド」や「アクロス福岡」を先進事例として紹介した。
高島市長は「本気でこれから緑を取り入れていくことに尽力をしたい」と語った。これは高島市長が将来の福岡市を担う子どもたちの声を重視していることの表れだろう。
この他、Park-PFIによる民間活力を生かした都市公園の質の向上についても言及。今後予定される市関連のプロジェクトにも話題がおよび、来年3月28日に福岡市民ホールが開館すること、現在の市民会館が取り壊され、須崎公園は市民会館側に移転するが、水に親しんでもらうため、川に下りる階段も整備することも紹介された。
天神・博多エリアばかりでなく、舞鶴公園・鴻臚館エリアについて、高島市長は「街の歴史、アジアのリーダー都市の原点が鴻臚館・舞鶴公園にある」と語った。観光面においても食文化ばかりでなく、福岡市の歴史・文化遺産を活用した取り組みが求められていたことを踏まえてのものだと思われる。
20日に開かれた福岡商工会議所などからなる「福岡城天守の復元的整備を考える懇談会」の記者会見では、「福岡城に天守閣は存在した」として「地域のシンボルとして福岡城の天守閣の復元は大きな意義がある」との提言がなされた。これに関し高島市長は「谷川浩道顧問(福岡商工会議所会頭)の熱意が本当にすごかった」と述べ、懇談会と連携して復元に向けた取り組みを進めていくとした。
福岡市の課題となっているのが交通インフラの整備だが、「B/C(費用便益比)が悪ければ、行政もなかなか税金を投入することは難しい」としながらも、「民間企業の提案があればステージが上がる」として福岡ソフトバンクホークスが市に提案しているみずほPayPayドームと地下鉄唐人町駅を結ぶ「動く歩道」を紹介した。高島市長は「川の上に動く歩道を通してドームまで歩くことになる」と安全面などの課題はあるとしながらも前向きな姿勢を示した。
高島市長は講演を終えるにあたり、「先人たちも福岡から日本、そしてアジアを見てどう行動すべきか。地の利を生かして貿易や交流の中心となって日本を元気にしてきた」として「少子高齢化などがあるなか、一番生き生きとした福岡がはたすべき役割は、リーダーとなって引っ張っていく役割が各分野にあると思う。2025年、ぜひ皆さんとともに日本全体が元気になるようなプロジェクトを一緒に進めていきたい」と決意を語り、講演を締めくくった。
【近藤将勝】
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