ビーロットが大型M&A、不動産開発の「上流」補完へ(前)
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(株)ビーロット
取締役社長 望月雅博 氏富裕層や投資家向けに収益不動産の開発・再生や不動産投資、不動産コンサルティングなどを手がけ、2024年12月期は過去最高の通期業績の更新を予想している(株)ビーロットが、11月14日に(株)クマシュー工務店(大阪市天王寺区)を子会社化することを公表した。同じく不動産再生事業を手がける同社のM&Aでは、どのようなシナジーが期待できるのか。M&Aの狙いや、中期経営計画を踏まえた次世代の人材育成などについて、取締役社長・望月雅博氏に話を聞いた。
過去最大規模のM&A 開発・再生でシナジー
──今回のM&Aのきっかけは。
望月 創業来の付き合いがある取引先の金融機関からの紹介を受けて成立したものです。クマシュー工務店との間に取引は過去に1件あったのみで、決してよく知る間柄ではなかったのですが、同社の経営者との面談を経て、社会インフラである不動産再生への事業観が近いことがわかり、一緒にやっていけるのではないかと判断しました。
事業継承に課題がある未上場企業について、金融機関からM&A案件として紹介されることも多くなりました。未上場企業は、上場企業のグループ会社となることで、オーナーがこれまで手がけてきた事業を継続させやすくなりますし、その企業で働いている人にも安心感をもってもらえると思っています。今回のM&Aは、クマシュー工務店を87億8,000万円で取得することを予定としており、当社としては過去最大となりますが、金融機関からこの規模のM&A案件をご紹介いただけたのも、これまでのM&Aへの取り組みが評価されてのことだと自負しています。
当社は事業規模を追うためのM&Aを行うことはなく、これまでもシナジーや企業カルチャーの親和性などを考慮して、是々非々で実施してきました。従業員の方々とも良好な関係を築いており、基本的には一体感をもったグループとして活躍を支援するスタンスです。
──クマシュー工務店の強みをどう評価していますか。また、M&Aで期待するシナジーとは。
望月 当社は主に投資用不動産の開発事業を手がけています。この事業は幅が広く、クマシュー工務店と当社は事業領域が若干異なります。当社には、用地を仕入れてデザイン性が高いオフィスビルや賃貸マンションの開発に強みがありますが、クマシュー工務店は賃貸借契約などオーナーの抱える権利関係の複雑さを解きほぐす、「権利調整」のノウハウ、とくに旧耐震などの築年数が経過した物件の権利調整に実績と強みをもっています。この用地供給に関するノウハウと当社の不動産開発事業は、大きなシナジーを生むと考えています。
不動産開発事業においては、年々競合他社との物件獲得競争が厳しくなっており、価格も上昇しています。クマシュー工務店は、開発のベースとなる土地オーナーにより近い存在です。関西圏、関東圏、中部圏に優良な仕入ネットワークをもっており、不動産の供給において(用地取得という)上流となる物件情報の源流に近づけることで、(用地取得の後に行う)下流の開発機会を増やすことが可能になると考えています。
──御社では不動産開発に加えて、不動産再生事業も手がけています。
望月 既存のオフィスビルなどを取得して、投資利回りを高めて再生する不動産再生事業を展開していますが、バリューアップの余地を残した物件は徐々に枯渇してきています。競合他社は不動産証券化・小口化などで流動性を高めて価格を上げていくことに目を向けるようになっていますが、この手法では小型・築古の物件は対象としにくいことが難点です。
これに対してクマシュー工務店は、建物や土地のオーナーと直接、交渉して築古のマンションやアパートなどを取得し、権利調整を図ったうえでデベロッパーに売却するというビジネスを展開しています。こういった小型・築古の物件に強みがあるクマシュー工務店の仕入れネットワークは、当社の再生事業において新しい領域になっていくものだと考えています。
互いの企業カルチャー 時間かけ相互理解へ
──両社ともに東京、大阪、名古屋に拠点を構えています。
望月 両社は、東京のオフィスも近いところにありますし、名古屋や大阪のオフィスも比較的近いところにありますが、今のところオフィスの統合などは考えておりません。ビーロットグループの従業員数は、クマシュー工務店の50人を加えると約230人規模となります。当社の役員が数名、クマシュー工務店の役員に就任しますが、同社のビジネスを我々が深く理解するということからまずは始めていきます。
──M&Aで、気をつけているポイントとは。
望月 2016年のライフステージ社以降、複数社のM&Aを行ってきました。上場企業として、求められるコンプライアンスを強化するための社内ルール変更は、早い段階で着手しますが、業務フローなども大きく変えることはなく、基本的にはしばらく様子を見るようにしています。どういった会社なのか、数年かけて互いの企業カルチャーを深く理解し、その後、社員の人事交流を少しずつ進め、グループになじませていくというものです。
小規模な会社のM&Aの場合は、規模的に難しかったシステムやメディア対応、会計税務やグループの信用力を生かしたファイナンスなどに取り組むほか、当社のノウハウを提供しバックアップを行ってきました。
(つづく)
【桑島良紀】
<プロフィール>
1972年10月生まれ。銀行系不動産コンサルティング会社を経て、99年にサンフロンティア不動産に入社。不動産再生事業を立ち上げ、中古ビル再生業務の責任者として、マーケット調査、購入バリューアップ企画、販売管理、証券化等を統括。2006年、同社常務取締役アセット本部長に就任し、ジャスダック、東証一部上場に貢献。09年ビーロットに参画し、取締役副社長に就任。2022年から現職。<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:宮内誠
取締役社長 :望月雅博
所在地:東京都港区新橋1-11-7
新橋センタープレイス10F
設 立:2008年10月
資本金:19億9,253万2,283円
TEL:03-6891-2525
URL:https://www.b-lot.co.jp
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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