2025年01月09日( 木 )

【唐津市長選挙】浦田ゆきひこ氏 豊富なビジネス経験と市民意識で地方政治に挑戦する

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

26日投開票の唐津市長選挙

 任期満了にともなう佐賀県唐津市の市長選挙が、今月26日の投開票で実施される。現時点で立候補を表明しているのは、3期目を目指す現職・峰達郎氏(64)と、新人で企業コンサルタントの浦田ゆきひこ氏(56)の2人。

 現職の峰氏は1995年の唐津市議初当選以来、佐賀県議、唐津市長を務めた地方政治のベテランだ。

 一方の浦田氏は唐津市出身で、大学卒業後にアメリカの大学院に進学し、その後現地で起業、30年以上にわたりグローバルビジネスの最前線で経験を積んだ。8年前に帰国し、現在は福岡で学生支援を行う公益財団法人の事務局長を務めるほか、地元である唐津市で経営コンサルティング会社の代表としても活動しているという異色の経歴だ。

 まったく政治経験がない浦田氏はなぜ首長選挙に出馬するのか。

【唐津市長選挙】浦田ゆきひこ氏 豊富なビジネス経験と市民意識で地方政治に挑戦する

地方行政における国際的ビジネス感覚の重要さ

 浦田氏が掲げる政策はいくつもあるが、いずれにも共通するのは、旧態依然とした地方政治の論理に吞まれない市民感覚だ。浦田氏の提言からは、長年の国際的なビジネス経験に基づく危機意識がうかがわれる。

 その1つとして、浦田氏が掲げる観光政策の背景を取り上げる。浦田氏は唐津市が早急に取りかかるべき施策として、唐津へのインバウンド誘致のための、より具体的で積極性のある行動の必要性を訴える。

 九州の代表的な玄関口である福岡空港を有する福岡市には多くのインバウンド客が押し寄せている。しかし、唐津市はその福岡空港からJR筑肥線で直通という極めて恵まれた交通インフラと豊富な観光資源がありながら、圧倒的にインバウンド客が少ない。一方、佐賀県の有明海に面し竹崎カニなどで有名な太良町は、多くのインバウンド客が訪れている。

 浦田氏は台湾の旅行代理店を訪問した際に、太良町と唐津市のインバウント誘致に向けた熱意の圧倒的な違いについて指摘されたという。それは積極的に大量の画像を送ってアピールする太良町と、旅行代理店に名刺一枚だけ渡した唐津市の担当者の違いだった。後者の仕事ぶりはまさに、与えられた役割だけを果たせばよいというお役所論理に縛られた役人感覚に他ならない。唐津市には唐津くんちを始めとする文化的観光資源と、海山など豊富な自然環境があるが、それらをつなげてトータルに海外に向けてアピールする観光政策も行動もまったく足りないと、浦田氏は指摘する。

 また、浦田氏は具体的な施策として、唐津の豊富な観光資源の魅力をインバウンド客に認知させ、実際に周遊してもらうためのガイドとして、アプリを利用したDXの必要性を訴える。浦田氏は観光DXの推進を図る(一社)VISITSAGAの専務理事も務めている。観光という特にビジネス感覚が必要な分野で成功するには、「行政にできることと民間の活力とを、それぞれ有効に活用する施策が必要だ」と浦田氏は強調する。

 このような浦田氏の施策の背景にあるのは、おそらく浦田氏ばかりでなく多くの人が感じている危機意識、すなわち、これだけ国際化している現代の社会経済のなかで地方行政がいかにガラパゴス化し、イノベーションの阻害要因になっているかという大きな危機意識に他ならない。

健全な民主主義のために必要なこと

 浦田氏が訴えるのは、市政としての施策ばかりではない。選挙以前の問題として、民主主義を支える市民の1人としての危機感を訴えている。

 唐津市のような基礎自治体の首長を誰にするかは、自分たちが暮らす町の行政をどのようにしてほしいかということであり、市民にとって本来最も大切な問題である。しかし、全国的な投票率の低下傾向にも表れている通り、行政に対する市民のあきらめに近い「他人事感」の蔓延は深刻だ。浦田氏は、「自分たちが暮らす町の行政について、日常的に話題にできるような雰囲気をつくることがとても大切だ」と語る。

 選挙は民主主義を成立させる重要な「イベント」だが、そのイベントが民主主義において有効な機能を発揮するには、それがルーティンとして実施されるだけではなく、選挙の前段階での市民の民主的な活動、すなわち、政策議論と多くの人が参加することが必要である。

 もし浦田氏が今回立候補を表明しなければ、4年に1度の大事な選挙で、市政について議論する機会が失われていたかもしれない。浦田氏は、「自分たちが暮らす町の行政の方向性を決める重要な選挙で、選択肢がないという状況はあってはならないことだ」と、自身が立候補を表明した切実な理由を語った。

 浦田氏は、唐津市の将来を憂う市民とともに草の根の選挙活動を展開、インターネットを駆使した情報発信で、政治参加の必要を訴えている。

インターネット・SNSの建設的な利用を育てる

 先述の通り、選挙の投票率は国政・地方問わず長期的に低下傾向にある。唐津市長選挙も例外ではなく、とくに前回2回の投票率はそれぞれ6ポイントずつ低下するという状況にある。

2009年 投票率:71.94%
2013年 投票率:69.47%
2017年 投票率:63.33%
2021年 投票率:57.47%

 政治の健全性を保つには、投票率向上とともに広く市民が政治参加する雰囲気をつくることが必要だ。インターネットやSNSを利用した政治・選挙の活動については、過激な面ばかりが取りざたされるが、大切なことは、それらを利用していかに市民の政治参加を実現し、これからの時代の民主主義をどのようにして再構築していくかという建設的な思考法に他ならない。

 今回のインタビューの模様は、浦田氏のYouTubeチャンネルでも紹介される。

 これからの時代に市民主体の政治と行政を実現するには、SNSの影響で受動的に振舞う市民の姿ばかりを否定的に捉えるのではなく、市民の政治参加のためにインターネットとSNSを駆使する建設的な取り組みに対して、市民自身が温かいまなざしを向け、はぐくみ育てる姿勢が求められている。

【寺村朋輝】

法人名

関連記事