2025年01月10日( 金 )

2025年「世界資本主義再構築」と日本の好位置(2)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は1月1日発刊の第371号「2025年「世界資本主義再構築」と日本の好位置」を紹介する。

AI革命は国際分業上の各国の地位を変化させる

 AI革命は、世界各地域における国際分業上の在り方を大きく変化させていくだろう。

 (1)米国は、AI・NETなどのデジタル分野および金融において独占的強みを発揮し続ける。日欧はじめ各国は米国にデジタル関連費用を支払い続けることになる。

 (2)東アジア(台湾・韓国・中国・日本)は半導体を中心とするハイエンド製造業を独占的に供給している。東アジアのエコシステムは最強であるゆえに代替は困難、東アジアへの供給依存は続くだろう。しかし東アジア域内での供給体制は、徐々に日本にシフトするだろう。米による中国排除が一段と進展すること、韓国の政治不安定化と競争力低下、TSMC製品など最先端ハイテク品の台湾集中のリスクの高まりにより、安全地域日本へのシフトが強まるだろう。

 (3)ASEAN諸国、インドなど多くの新興国においては衣料品やローエンド機械等の製造の優位性は変わらない。ただ労働力潤沢の新興国諸国相互間の競争があるうえ、中国には潜在的に巨大な生産力の余剰がある。価格支配力維持は困難で、交易条件は改善できない。また今は順調に見える中国からの資本の提供は、中国のバブル崩壊=資本の破壊、により衰弱していくだろう。

 (4)欧州は高級消費財および高額サービスにおいては強い。ものをいうブランド力は先進国とくに欧州の独壇場である。しかしグリーンエネルギー・EV産業の挫折、対中・対ロ戦略の失敗などにより、競争力のある国際商品は乏しい。国際分業上の立場は低下気味だろう。

AI革命が米国の産業構造をどう変えるか、製造業復活は限定的

 それではAI技術は米国産業構造をどのように変容させるだろうか。トランプ政権下の米国では減税による景気刺激策の下で、旺盛な需要・雇用創造が展開されるとみられる。引き続き雇用拡大の中心はサービス産業となるだろう。米国のハイテク優位は一段と強まる、また米国の信認の強さ、デジタル分野(デジタルサービスとデジタル企業の海外利益)の大幅黒字、高金利と海外からの対米投資増加によりドル高基調が継続するだろう。そうした条件の下では米国の貿易赤字は改善しない。米国の製造業復活は限られたハイエンド・軍事関連分野に限定されるだろう。メキシコとカナダとの分業は調整されるが大きくは変わらないだろう。NAFTAからUSMCAへと衣替えしたが米国の対墨、対加貿易赤字がまったく減らなかった。米国の狙いは中国の迂回輸出を遮断すること、不法移民の取り締まりなどであり、それらの譲歩を得たうえで交渉は決着するではないか。

図表1:米国セクター別雇用数推移

2025年米国が世界経済の牽引車

 米国の内需好調、中国からの輸入減少、ドル高等により、日本・韓国・台湾やASEAN、欧州からの対米輸出は増加、中国に代わり米国牽引の世界経済回復の年となるかもしれない。

戦略と立ち位置が定まっているのは米国、日本

 国際政治を概観すると日本の立ち位置は恵まれている。混迷を深める欧州、中国・韓国、ミスジャッジしかねないBRICS諸国・ラテンアメリカ・アフリカ諸国に対して日本の立ち位置は明確かつ好ましいものである。つまり、中国やロシア、北朝鮮、イランなど専制国家に対する厳しいスタンス、DEI(多様性、均等性、包括性)やPC(ポリティカル・コレクトネス)など、経済合理性を否定する心情の影響の小ささ、安倍・岸田政権から踏襲されているより透明で自由な金融を推進する「新しい資本主義」路線、など日本の政策のフレームワークは、グローバル投資家にとって納得性のあるものである。

(つづく)

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