2024年11月25日( 月 )

親の老後を看る子どもは…?(前)

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大さんのシニアリポート第38回


気になる数字が出ている。国立青少年教育振興機構が昨年実施した調査で、「高齢となった親を自分で世話をしたい」と答えた日本の高校生は37.9%で、日米中韓4カ国の高校生のなかで最低だった。トップの中国が87.7%、次が韓国で57.2%、自立しているアメリカでさえ51.9%で半数を超す。ちなみに2004年度調査時での日本は、43.1%だから、10年で5.2%も減少している。これを「親の介護」に言い換えると、とんでもない結果が待ち構えていた。高齢者の期待とは裏腹の現実、それは…。


2年前、「幸福亭」(「サロン幸福亭ぐるり」の前身)時代、「元気な高齢者でいるために」と題してアンケートをとり、討論集会を開いたことがある。アンケート設問の答えのなかに、「期待と現実」の乖離が見え隠れしていた。


(1)これから先、子どもに迷惑をかけたくないと思いますか?

(思う)

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・子どもに生活力がないから/子どもにも家族がある。結婚相手に迷惑をかけると夫婦仲に悪影響をおよぼすことが心配/子どもに負担をかけるのは心苦しい。考えただけで本当に申し訳ないと思う/不況のなか、子どもたちに親を看る余裕がない。精神的にも負担をかけたくない/子どもたちの生活基盤が弱い。とても親への種々の支援は無理。


(思わない)

・子どもができることをしてくれればいい(してくれなくともいい)。/自分は親の介護をしながら子どもたちを育ててきた。自分が年をとってきたら今度は子どもたちが自分たち夫婦(親)の面倒を看るのは当然。この世は順番。子どもたちの生活状況を心配しすぎ。


(2)社会的に高齢者が大切にされていると思いますか?

(思う)

・日本自体が平穏。そのことが幸せの素/行政の安否確認も充実。高齢者のために働いてくれる機関の方が平等に親切。


(思わない)

・年寄りが生き生きとしている場面に会うことが少ない/昔の教育は年寄り、とくに家庭において曾祖父、両親を大切にするという倫理観があった。子どもが一生懸命働いて親の面倒を看るのが当然だった。今は親の金を目当てに(仕方なく)面倒を看るという風潮だ。それでも面倒を看るのはまだいい方/年寄りは社会から捨てられている気がする。必要とされて、初めて人の生きる意味があると思う。


(3)終末のために身辺整理をしておくことは大切だと思いますか?

(思う)

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・子どもたちに負担をかけたくない/当たり前のことを質問するな/自分の過去はすべて焼却したいから/残された人が困るから。恥じないように整理する/死後、たとえ業者に処分してもらっても、業者という”他人”に見られるのが嫌/ガラクタに囲まれて生活しているので、残されたら困るでしょう/身動きができなくなってから、大切なものを残すのは辛い。


(思わない)

・人はギリギリまで生きたいと思う。そうすると整理する時間がなくなる。残された人に迷惑をかけても仕方がないのでは/(亡くなった人のことを慈しみながら)喜んで片付けてくれる人もいると思う。みずから自分の思い出を消し去ることは辛い/整理するということが、自分の死を確認する作業のように思える。


(4)自分の葬式(お墓)について、考えたことがありますか?


・すべて子どもに任せる。希望はいう/墓があると守るのが大変/身内だけの家族葬がいい。遺骨は海に散骨/墓も葬式代も準備してある。心温まる葬式を期待したい/葬儀や墓守を子どもたちに任せるのは大変。直葬で納骨堂に安置してくれればいい/葬式と墓は重要。子どもたちばかりではなく、兄弟たちにも亡くなった人たちを思いだす場所だと思う。散骨や合祀は可哀想/人生最大の出来事。できる限り子どもたちに負担をかけたくないので、墓も作りました/すべて不要。葬式や墓に金をかけるくらいなら、生きている自分の幸せのために使いたい。死んで花実は咲かない。

(つづく)


<プロフィール>

大山眞人(おおやま まひと)

1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

 

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