2025年01月23日( 木 )

【新春トップインタビュー】福岡の経済・文化を牽引する「唯一無二の会」40周年を節目にさらなる“インパクト”を

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(一社)博多21の会
会長 山本慎一 氏

 地元・福岡で育ち、福岡に企業基盤をもつ経営者、または文化人の会として立ち上がった(一社)博多21の会。2024年に創立40周年を迎えた同会は、会員同士互いに切磋琢磨しながら、地域経済の活性化や福岡の未来像への提言など、まちづくりにも深く関わっているのが特徴。25年1月に第15代会長に就任した山本慎一氏(山本設備工業(株)・代表取締役社長)に、これからの意気込みなどを聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 児玉崇)

自主独立の精神が息づく「唯一無二の会」

(一社)博多21の会 会長 山本慎一 氏
(一社)博多21の会
会長 山本慎一 氏

    ──1月から(一社)博多21の会の第15代会長に就任されました。まずは、会の概要についてお聞かせください。

 山本慎一氏(以下、山本) 1984年11月に設立した博多21の会は、会員同士の情報交換や相互扶助および相互研鑽を通して、郷土の経済および文化の発展を期するとともに、公利に向かう高い志をもつ会員を育成することを目的に掲げた団体です。「博多21の会憲章」に則り、福岡の経営者もしくは文化人が入会して郷土発展のためにさまざまな活動を行っており、当初は任意団体として活動を続けていましたが、2019年1月に一般社団法人となり、現在に至っています。

 当会の大きな特徴の1つとしては、憲章にも掲げられていますが、個々の会員の切磋琢磨の場としてだけでなく、郷土・福岡博多の継続的な発展や活性化など、私利ではなく公利の志でのまちづくりの視点が入っていることです。また、会員も企業経営者などの経済人だけでなく、学者や音楽家、芸術家などの文化人も多く在籍しており、経済と文化の2つの視点を併せもっているのも特徴です。委員会活動も活発に行っており、会員はそれぞれ「アカデミー委員会」「文化委員会」「経営委員会」「交流委員会」「ひとづくり・教育委員会」「まちづくり委員会」などの委員会に所属して、それぞれの委員会の方針に沿ってさまざまな活動を行っています。

 そして何より重要視しているのは、会員1人ひとりの人間力です。会の性質上、どうしても人物ありきで、高い志をもちながら本当に裸の付き合いができる人じゃないと、当会にはふさわしくないと考えています。そのため入会に際しては、少なくとも1名の役員または幹事を含めた会員2名からの推薦が必要です。私自身も08年に、有澤建設(株)の有澤社長(当時)に入会を勧められ、(株)志賀設計の代表取締役社長・八島英孝氏と、福岡商工会議所会頭も務められた当時は(株)西日本シティ銀行の常務だった礒山誠二氏(現・(株)九州リースサービス・代表取締役社長)の2人からの推薦を受けるかたちで、入会いたしました。

 ──博多21の会の良さは、どういったところだと感じますか。

 山本 以前、当会では現状の福岡空港を移転させるべきだというような問題提起などを行っていました。私自身、他の会のことを詳しく知っているわけではありませんが、そうした福岡・博多のまちづくりに関する真面目な議論を、長期ビジョンでじっくりと腰を据えて行える団体というのは、なかなかないと思っています。

 個人的にとても気に入っているところは、当会には上部組織も下部組織もないというところです。というのも、たとえばライオンズクラブやロータリークラブ、青年会議所(JC)などは、たとえば、国際的な母体があったうえで、そのなかの日本があって、九州があって、福岡があって、といった感じで、さまざまな活動テーマなどが上から下に降りてくるイメージです。もちろん、それはそれで意義深いことだと思いますが、下部組織ではさまざまな制約が課され、自由な活動が行えないケースもあるかと思います。

 その点、当会は我々だけの独立した組織ですから、やりたいことなどがあれば、所属する各委員会での賛同を得て、さらに幹事会や役員会などのコンセンサスを得られれば、実現していくことが可能です。こうした粘り強く議論していけば何でもできるというのは、他の会とは違うのではないかと思いますね。そういう意味でいうと、しがらみがないというか、上部組織がないがゆえの自主独立の精神、そういう会の雰囲気を諸先輩方が連綿と築いてきてくれていますので、会のなかでは上も下もなく、何でも自由に議論して言い合えるというのが、大きな魅力です。当会が「唯一無二の会」と言われているのも、こうした自主独立の精神が受け継がれていることが大きいと思います。

経済と文化を掛け合わせ、まちに良い“インパクト”を

 ──博多21の会は、24年に40周年を迎えられました。

 山本 おかげさまで当会も設立40周年の節目を迎えることができ、24年9月18日と19日の2日間にわたって「40周年記念事業」を開催いたしました。僭越ながら私が40周年実行委員会の委員長を務めたのですが、記念事業として「-能・狂言・茶道の饗宴-」を行ったほか、基調講演として経済学者の寺島実郎氏を招いて「アジア・ダイナミズムと日本~九州の未来戦略」と題した講演を行っていただきました。また、式典には当会の会員や多くの来賓の方々のほか、当会の友好団体である台湾の「七心餐会」の方々にもご参加いただきました。記念事業や式典の開催までには、いろいろと苦労もありましたが、おかげさまで無事盛況に終えることができたと思いますし、この記念事業を通じて、これまでの会の歩みを再確認できる良い機会になったと感じています。

 ──40周年を超えて、これからの方向性や展望などは。

 山本 10年前の30周年のときには、マレーシア元首相のマハティール氏をお招きして「立ち上がれ日本」と題した特別講演を行っていただきました。そのときのお話では、日本の経済力が落ち込み、世界やアジアのなかでのポテンシャルもどんどん下がってきているけれど、日本にはすばらしい文化があるので、もう一度立ち上がってほしい、というような内容だったと記憶しています。そうしたお話を聞いて10年が経つのですが、私を含めた会員1人ひとりの心のなかでは、「これじゃいけないよね」「何とかしていかないと」みたいな思いがふつふつと湧いていたと思います。

 そうした思いを抱きながら今回迎えた40周年は、会にとっては30周年以上に大きな節目だと感じていて、これからさまざまなことに挑戦していける絶好の機会だと思っています。たとえば、日本の中心は東京であって、やはり経済力では福岡はどうしても東京にはかないません。しかし、福岡の経営者の人間力や文化力を高めていくことで、東京にも負けない本物の文化を、九州のキャピタル(首都)として福岡に根付かせていくことはできると思います。幸いにして、当会はもともと人間力と文化力を高めていこうという会ですから、会員には経済人だけでなく、学者や音楽家、陶芸家などの文化人が多く在籍しているのが特徴です。茶道などは皆さん嗜んでいますし、会員の文化的な素養がとても高いです。そうした経済と文化を掛け合わせたまちづくりを行い、福岡・博多の文化的なポテンシャルをもっと高めていければと考えています。

(一社)博多21の会 会長 山本慎一 氏    ──新会長として掲げるテーマなどは。

 山本 前会長を務められた佐藤栄治氏(佐藤(株)・代表取締役社長)は、テーマとして「再起動」を掲げておられました。これは、コロナ禍の制限で表立っての対外的な活動などが何もできなくなり、かなり内向きとなることを余儀なくされた博多21の会を、一度リセットして、改めて活動を活発化させていこうというメッセージだったと受け取っています。

 そうして再起動し、40周年という大きな節目を経たところで私が掲げる新たなテーマは、「インパクト」です。これまでの当会の活動内容は、どうしても内向きになり過ぎているきらいがあって、主に例会を開いて講演を聞いて、そして提言などをまとめていくといったような、やや机上の空論になりがちでした。もちろん会員の多くは企業経営者なので、それぞれの会員が勉強して企業経営に生かし、それぞれの業績を上げていくことで、地域経済やビジネスが活性化して、ひいては福岡のためにもなっていくと思います。ですが、それはそれとして、博多21の会として、これまでのような内向きの勉強会中心の活動から、実際に動いていく団体として、より実践的でまちに影響を与える活動への転換を図っていくことで、まちに良いインパクトを与えられるのではないかと考えています。

世代間の交流&継承を行い、会をさらに盛り上げていく

 ──会が抱える課題には、どのようなものがあると考えていますか。

 山本 当会の会員は、下は20代から上は80代まで、それこそ3世代にわたって幅広く在籍しています。ですが残念ながら、その幅広い世代間の交流をうまく促すような仕組みができていない、上の世代の古くからの会員と歴が浅い下の世代の会員との相互のコミュニケーションがうまく取れていない点が、一番の課題だと感じています。たとえば、上の世代の先輩方のなかにはとてもポテンシャルの高いメンバーが多くいらっしゃるのですが、それが次の世代につながっていない―先輩方がこれまで議論を重ねながら培ってきた知見や哲学のようなものをうまく引き継げていない、世代間の継承みたいなものがうまくできていないという点が非常にもったいないと思っています。

 こうした世代間の継承の問題などを解消していく方策の1つとして、新たに総務広報委員会を立ち上げて、まずは40周年のアーカイブを作成しようと考えています。当会がこれまで40年間にわたって行ってきた活動の記録を、きちんとアーカイブにまとめることで、その当時の会員が何を考えて、どういうことをしようとしていたのか、そうした思いをつないでいけるようなものをつくろうとしています。

 ──最後に、福岡の経済を支える次世代のリーダーたちに向けてのメッセージをお願いします。

 山本 今の若い経営者の方々を見ていると、すごく勢いがありますし、変化への対応やスピード感が違いますね。私が若かったときと比べても、何でもパパっと物事を進めていっていて、非常に頼もしく感じています。

 ただし、あまり自分のビジネスだけの内向きばかりにならず、外に向けての意識ももってほしいと思いますね。それぞれが自分のビジネスをきちんと軌道に乗せていくことはもちろん大事ですが、それプラスまちのこと―自分がいる場所を良くしていこうという思いをもって皆が少しずつ取り組んでいけば、福岡・博多のまちはもっと良くなっていくと思いますし、ひいてはそれがそれぞれのビジネスチャンスにもつながっていくかもしれません。

 私自身、この福岡・博多のまち、そして博多21の会に育てていただいたからこそ、今の自分や会社があると思っていますし、きちんと恩返しをしていきたいと思っています。これからは会長として、博多21の会を盛り上げていくとともに、会の活動を通じて福岡・博多のまちをもっと魅力や活力のあふれる場所にしていくべく、会員の方々と力を合わせながら尽力していきたいと思っております。

【文・構成:坂田憲治】


<INFORMATION>
会 長:山本慎一
所在地:福岡市中央区天神4-9-10
設 立:1984年11月
TEL:092-771-8766
FAX:092-738-6740
URL:https://www.hakata21.net


<プロフィール>
山本慎一
(やまもと・しんいち)
1963年10月生まれ。福岡市出身。90年4月、山本設備工業(株)に入社。2002年12月、取締役、06年1月、代表取締役社長に就任。25年1月から(一社)博多21の会の会長を務める。

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